「なのだそう。」という表現を新聞記事で検索してみた

この表現,なんだか気になるのですよね。皆さんは気になりませんか?

何かというと,次のような表現です。

「......なのだそう。」

皆さんは気になりませんか?私はどうも,以前から気になってしまってしょうがありません。以前はあまり使っていなかったのでは?とか,どこかで使う特殊な表現なのか?とか,いや自分が生まれた地方の問題なのか?とか,考えてしまいます。

どういうところによく使われる表現でしょうか。気になったので,大学の新聞記事データベースで調べようと思ってみました。

検索方法

それぞれの新聞記事データベースで,「なのだそう。」をキーワードに検索してみます。「。」なしの「なのだそう」で検索をすると,「なのだそうだ。」も結果に出てきてしまうので,「なのだそう。」だけで検索してみました。

表現の揺らぎを入れて検索してくれるデータベースもあるのですが,その機能は使わないで検索しています。でも,もしかしたらもっと適切な検索方法があるかもしれませんので,それはあしからず。とりあえずおおまかな傾向を把握するにはこれでよいのではないかと思います。

読売新聞

読売新聞のデータベースは,古い記事は全文検索ができないようでしたので,1986年以降の新聞記事です。キーワードとして「なのだそう。」を指定して,表現の揺らぎなしで検索してみました。

一番古い記事でヒットしたのは,1987年12月21日東京夕刊の記事です。「武 豊さん 父を超えろ」という記事で,該当したのはジョッキーの武豊さんについて書かれた記事の最初の部分です。

動物行動学者のモリスの「年齢の本」によれば、18歳は、ビクトリア女王が即位した年であり、ジャズ王D・エリントンがジャズを始め、才女サガンが世界中で売れた「悲しみよこんにちは」を書いた年、なのだそう。

確かに「なのだそう。」で終わっています。1980年代の記事はこれだけで,1990年代の記事も2件だけです。そして,21世紀に入ってから70件以上の記事がヒットしてきます。

どうも,「なのだそう。」が盛んに使われてきたのは,21世紀に入ってからということのようです。

朝日新聞

次に,朝日新聞のデータベースで検索してみました。本文の検索ができるのが1985年以降のデータベースです。同じように「なのだそう。」で検索してみると,一番古いもので1990年の記事がヒットしてきました。

1990年12月12日の朝刊「人情地に落ちず 頑固で粋で優しくて(下町そぞろ歩き:49) 東京 」という記事です。東京下町の風景を描いた文章の中です。

少し先の旧中根岸に頑固横丁と呼ばれる通りがある。そこのフグ屋の主人があまりの頑固ゆえの命名、とか。看板なのにぐずぐずしている客を「飲ませる酒ないよ、帰んな」と追い立てたり、いちゃついている男女2人連れに「アベックなんかに食わすフグはないよ」と剣突くを食わしたり、が朝飯前という頑固さ加減なのだそう。

全体で47件の記事がヒットしたのですが,20世紀はこの1件のみです。あとの46件は21世紀になってからで,2019年だけで8回使われています。明らかに,最近になって盛んに用いられてきた表現だということがわかります。

毎日新聞

毎日新聞のデータベースでも調べてみました。本文を対象にキーワード「なのだそう。」で検索です。

一番古い記事で出てきたのは,1994年6月3日東京夕刊の記事で,「[キャンパる]薬草とは…紙一重の「毒草」と「良い草」--東邦大学の薬草園を見学」です。スズランについて書かれている一節です。

意外だったのは、スズランが有毒だということ。それを生けたあとの水は危ないので飲まないように注意が必要だ。一般的に良い薬になる植物と、有毒な植物は「紙一重」なのだそう。薬が効きすぎるのも体には毒なのかもしれない。

全体で18件の記事がヒットしてきて,1990年代は4件,2000年代は1件,2010年代が13件です。やっぱり,最近の方がよく使われる表現になっていることがわかります。

やはり最近は多くなっている

全体的に,通常の記事の中じゃなくて何かを紹介したりエッセイ的な内容だったりする記事の中で「なのだそう。」が使われる傾向があるようです。そして,特に2010年以降に増加傾向にあるようですね。

おじさんにとって違和感が生じる表現であるのは,致し方ないようです。

ちなみに毎日新聞は次のような記事も書いています。「なのだそう。」ではなく「だそう。」だと,もっと他の記事もヒットしてきそうですね。

伝聞の「そう」止めは、違和感派と容認派が半々になりました。ネットでは辞書編集者らの容認意見が散見されます。しかし、誤読しそうなど違和感の表明も多く、一瞬でもそこで読者がつまずいてしまうとすれば、やはり避けるべきでしょう。

ということなのだそうです(どうしても感覚的に,「なのだそう。」で終えることができないのです……)。

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