2つの外向性:aバージョンとoバージョン
外向性には,2つの英単語があります。
◎extraversion
◎extroversion
「a」バージョンと「o」バージョンです。
私自身は,論文で見る機会が多い「a」バージョンで書くことが多いのです。
パソコンの辞書
辞書で調べてみましょう。パソコンの辞書に単語を入力してみます。
すると,「extraversion」つまり「a」バージョンは,「o」バージョンに飛べと指示が出てしまいました……。
そして「o」バージョンを見ると,「外向性」の訳語が出てきます。
以前も書いたことがありますが,「外交」ではなく「外向」ですのでご注意ください。
Ngramで調べる
単語は,使われてきた歴史も調べてみたいですよね。そこで以前にも取り上げたことがある,GoogleのNgram Viewerで調べてみましょう。
aかoか
まず,全英語文献での「extraversion」(青)と「extroversion」(赤)です。
「o」バージョンの方が歴史が古く,19世紀から少しだけ見られます。「a」バージョンが登場するのは20世紀に入ってからのように見えますよね。しかし,20世紀後半になると「a」バージョンの方が使われる傾向にあるようです。
私自身が「論文ではextraversionのほうをよく見る」と思っていた実感は,なんとなく実態を反映していたようです。
アメリカ英語とイギリス英語
さて,このグラフはアメリカ英語の場合です。英語全体のグラフとよく似ていますが,「extroversion」つまり「o」バージョンが1940年前後に大きなピークを描いているように見えます。
そしてその一方で,こちらはイギリス英語です。アメリカ英語とはずいぶん違う形をしています。「extroversion」に大きなピークはなくて,1970年代くらいに「extraversion」つまり「a」バージョンが大きなピークを示しています。
1960年代後半から70年代くらいでイギリスというと,偉大なパーソナリティ心理学者であるHans Eysenckの理論が思い浮かびます。外向性と神経症傾向(と精神病傾向)を,人間の根源的な特性だと考えていた心理学者ですね。たぶん,ちょうどその時代ではないかと思います。
oからaへ
単語の本当の歴史的な変遷については,正直言ってよく知らないのですよね。
でも,どうもNgram Viewerでグラフを見てみると,外向性という単語は「o」バージョンから「a」バージョンへとトレンドが移行していった様子がうかがえます。
そして,心理学の論文では「a」バージョンがよく使われることからも,その背後に心理学の影響があったり……するのでしょうか。
そのあたりについてはよくわかりませんので,そのうち調べてみたいですね。
皆さんも,Ngram Viewerで遊んでみてください。
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