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意見を述べているつもりなのに誹謗中傷になってしまう

誰かに対して誹謗中傷を行うことについて,ネットで話題になっています。何が意見で何が中傷なのか,ということについても,さまざまな見解を見ることができます。

このあたり,似た言葉がいくつかあります。

誹謗は「他人の悪口を言うこと」であり,中傷は「根拠のない悪口を言い,他人の名誉を傷つけること」とされます。非難は「相手のミスや欠点などを一方的に責めること」を指す言葉です。

また批判は「善悪や可否について検討して判断すること」という意味もありますし「よくない点をあげつらうこと」という意味もあります。そして意見は「あることに対する考え」や「好ましくない行いに対する注意や忠告」のことを指します。

しかし,それらの意味の境目は曖昧です。私たちは,いちいち言葉の意味を正確に理解した上で使うのではなく,だいたいの感覚で使います。ですので,「これは単なる意見だ」という人と「これは誹謗中傷だ」という人がいたとしても,それぞれの人が自分の有利なように意味の境界を移動させますので,互いの主張はどうしても相容れないものになっていきます。

誰かに対する書き込みや指摘が関係を悪化させるということは,ネットだけでなく現実の人間関係でもよく生じることです。そこでは,どういうことに気をつけるのがよいのでしょうか。

気をつけること

アメリカの心理学の一般向け雑誌Psychology Todayに『What's Wrong with Criticism』という記事があります。Criticismは「批判」「批評」という訳もありますが,記事の内容からするともっとよくない意味が前面に出ていますので「非難」が近いかもしれません。

相手を強く批判したり非難したりすることで,関係を壊してしまうことがあります。それは,どういう時なのでしょうか。まとめると,こうなります。

◎行動よりも性格や人格について指摘すること
◎批判に満ちた内容であること
◎向上することに焦点が当てられていないこと
◎唯一の「正しい方法」だけに焦点が当てられていること
◎人を軽んじていること

これらの要素を含むときに,批判が人間関係を悪化させるようです。

よくない要素を含む批判(つまり非難)によって,建設的な結果が生じることはあまりなさそうです。相手を強く非難しても,相手が行動を修正しなければ,その行動には意味がありませんよね。いや,本当は相手を変えようとしてはいないのではないでしょうか?

もしかしたら,そうなのかもしれません。こういった非難というのは,「相手を屈服させようとする」ことと「相手を過小評価する」という点に特徴があります。相手の将来を考えて,相手の行動を変えようとするのではなく「上に立とう」とするかのようです。

誰も,このようなコミュニケーションを求めてはいません。自分がされても嫌な気分になりますからね。そして,単に「主張したい」だけのようにも見えます。

批判してしまうとき

ところが,つい私たちは誰かを非難してしまいます。それは,どういう場合にそうなるのでしょうか。

相手を強くネガティブに非難することは,自己防衛が反映していると記事の中では指摘されています。

それは,相手の行動や態度に同意していない,ということを意味しているわけではありません。何かしら,自分が低く評価されたという感覚を伴っています。そのような自分自身の傷つきが,相手への強い非難になってしまうということのようです。

非難と意見

誰かを非難する人というのは,単に相手に対する意見を述べているだけだと思い込んでいるとも,記事の中では述べられています。

しかし,非難と意見とは,いくつか異なる点があります。では相手を非難することと,意見を述べることは,それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

◎非難は,何が間違っているのかに焦点が当てられる。
◎意見は,どうしたら向上できるのかに焦点が当てられる

◎非難は,相手の人格を貶める内容を含む
◎意見は,人格ではなく行動について述べられる

◎非難は,相手を過小評価することを含む
◎意見は,相手を励ますことを含む

◎非難は,人を責めることを含む
◎意見は,将来に焦点をあてる

◎非難は,相手を強制しようとする
◎意見は,自主性を尊重する

◎非難は,威圧的である
◎意見は,威圧的ではない

いま書かれている内容が「非難なのか,そうではないのか」という線引きをすること自体には,あまり意味はないように思います。それよりも,その内容にどのような要素が含まれているのかを考えるのがよいのではないでしょうか。

相手に意見を伝えるときには,相手が向上することを意識して,相手自身ではなく行動に焦点をあて,変化することを促し,相手を強制せず,相手が自分の望む通りのことをしなくても耐えることが大切です。

とはいえ,なかなかこういうことはうまくいかないものです。相手を非難している人も,淡々と自分の意見を伝えているだけだ,と言うこともありそうです。しかしそこで,少し自分の言動をふりかえってみることが必要かもしれません。

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