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突き詰めるか、広げるか

今回は,2つの好奇心のあり方について書いてみようと思います。

みなさんは,自分が好奇心が強いほうだと思いますか?それともあまりいろいろなことに関心を示さないほうだと思うでしょうか。

この本『子どもは40000回質問する』は,好奇心の研究をわかりやすくまとめた良書です。


建築家と探検家

『完全無欠の賭け』という本の中に,進化論で知られるダーウィンと,そのいとこの研究者ゴールトンについて,次のようなことが書かれていました。ちなみに文中に出てくるピアソンは統計学者(「ピアソンの積率相関係数」のピアソン)です。

 ダーウィンは進化論を練り上げるにあたって,この新分野を整然とまとめることに時間を費やし,骨組みや方向性を幅広く示したので,彼の足跡は今なおはっきりと見て取れる。このようにダーウィンが建築家だとすれば,ゴールトンは探検家だった。ポアンカレとよく似て,ゴールトンも新奇なアイデアを世に公表するだけで満足し,すぐ次のアイデアの探求に向かうのだった。「彼はけっして,誰が後に続いてくるのかを見届けようとはしなかった」とピアソンは語った。「彼は生物学者や人類学者,心理学者,気象学者,経済学者らに新天地を指し示したが,彼らが後に続こうが続くまいが,お構いなしだった」(p.81)

ダーウィン=建築家:ひとつの研究分野に時間を費やし,しっかりとした骨組みを作り上げる
ゴールトン=探検家:新奇なアイデアに惹かれ,新天地を目指すが見つけると満足して次の地点を目指す

この2つの研究へのスタンスの違いは,(ここまで極端ではなくても)まわりの研究者を見ていても感じるものです。

内発的動機づけ

内面の興味,関心,意欲によって行動が起こり維持されることを内発的動機づけと言います。これに対し,外からの報酬や罰によって行動が生じて維持されることを外発的動機づけと言います。

ちなみに「づけ」の部分は,「動機付け」と漢字で書くよりも「動機づけ」とひらがなで書く方が好まれるので気をつけましょう。「動機」は行動の原因,「動機づけ」は行動が起こって行動が持続される過程を表すことばです。「付ける」わけではないので「づけ」とひらがなで書くことが好まれているのかもしれません。

内発と外発

近年,外発的動機づけといっても,中身がいくつかのレベルに分かれるのではという研究が行われてきています。

◎外的動機づけ:自分の外からの強制で行動。「怒られるから」「褒められるから」
◎取り入れ的動機づけ:不安や評価によって行動。「負けたくないから」「恥をかきたくないから」
◎同一化的動機づけ:自分の価値観や信念によって行動。「将来役に立つから」「目標を達成できるから」
◎内的動機づけ:自分の興味・関心によって行動。「面白いから」「興味があるから」

外的動機づけから同一化的動機づけまでが,いわゆる外発的動機づけです。そして,上から下に向かって,次第に自律性(自分自身で行動を決定づけること)が増していきます。いちばん自律性が高いのが,内的動機づけになります。

なお,動機づけについては以前この記事も書きました。

より詳しく知りたい方はこの本もどうぞ。

好奇心

好奇心は,何かに関心を抱くことを指しますので,まさに内発的動機づけにつながる心理的機能のひとつです。

そして,好奇心には個人差があります。

物事に強く関心を抱く人と,あまり関心を抱かない人がいるのです。そして,このような個人差を測る尺度も開発されています。

教育場面での好奇心は重要だと言われています。ある研究によれば,学業成績に対して,いちばん影響するのが知能,次が勤勉性,そして3番目が好奇心だと言われています。

2つの好奇心

好奇心には2種類のものがあることは,ずいぶん以前から想定されてきたようです。

◎新しい情報や知識を求めて方向を定めず探索する:拡散的好奇心
◎矛盾や情報の不整合に対して方向を定めて探索する:特殊的好奇心

この2つの好奇心のあり方は,まるで前者がゴールトンの研究スタイル,後者がダーウィンの研究スタイルを表しているようです。

皆さんの好奇心は,広げる方向に向かいますか?突き詰める方向に向かいますか?
あるいは……そもそもあまり好奇心を抱かない方でしょうか。

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