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ひとりっ子はナルシストではないというさらなる証拠

「ひとりっ子はわがまま」説は,根強いものがあります。

ひとりっ子はきょうだいがいないので,子ども同士で譲り合ったり分け合ったりする経験が少ない。だからわがままになる。

ひとりっ子は親の愛情を一手に受けて育つので,何でも言うことを聞いてくれる親の子育ての影響から,わがままになる。

「ひとりっ子はわがまま」の背景にあるのは,こういった理屈ではないでしょうか。


いないわけはない

こういう話をしたときに注意したいのは,「自分はひとりっ子でわがまま」だとか「私の知り合いはひとりっ子でわがまま」だとか,という事例は「ひとりっ子はわがままである」という法則の証拠にはならないという点です。

なぜなら,ひとりっ子であるかそうではないかと,わがままであるかそうではないかが「無関連」な状態というのは,その組み合わせ(ひとりっ子でわがまま,ひとりっ子でわがままではない,ひとりっ子ではなくわがまま,ひとりっ子ではなくわがままではない)に,まんべんなく人が入っている状態のことを指します。その時に,たまたま自分や知り合いが「ひとりっ子でわがまま」である可能性は十分に考えられるからです。

また,「私はひとりっ子でわがままな人に会ったことはない。だからひとりっ子がわがままという説は正しくない」という否定の仕方もおかしなものです。なぜなら,それが正しいなら「ひとりっ子はわがままではない」という新たな説が成立してしまうからです。

ややこしい話でしょうか。

ひとりっ子とナルシシズム

以前,「ひとりっ子はナルシスティックではない」という論文を紹介したことがあります。ドイツの研究で,ひとりっ子かそうではないかで,ナルシシズムの得点を比較した研究です。また,一般の人々が「ひとりっ子はナルシスティック」というイメージを抱いているかどうかについても検討しています。

結果的に,多くの人はそのようなイメージを抱いているにもかかわらず,実際には関連がないという研究結果でした。一般的な印象と,実際の研究結果には大きなズレがあるという報告です。

さらなる証拠

この研究について,さらなる証拠を報告する研究がありますので,見てみましょう。この論文です(Further evidence that only children are not more narcissistic than individuals with siblings)。

先の研究はドイツでの調査結果に基づくものでした。もしかしたら,ドイツは子育てに独特な特徴があり,そのことがナルシシズムを抑制しているのかもしれません。この点を研究するには,ほかの国でも確かめてみるのがいちばんですよね。

そこでこの研究では,ナルシシズムの複数の側面も測定できる尺度を用いて,アメリカの大学生8689名に対して行った調査を分析しています。

そして結果についてです。ナルシシズムについて詳細に測定を行ったにもかかわらず,結果的には,ひとりっ子とそうではない人との間には,明確な差が見られるということはありませんでした。

やはりどうやら,「ひとりっ子はナルシスティックでわがまま」という説は,分が悪いといえそうです。

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