書字スリップとゲシュタルト崩壊

ふだん何気なくやっていることでも,あらためて考えると不思議な現象というものはあるものですよね。

最近,子どもとの会話の中でもこういった現象について話題になっていました。


書字スリップ

紙にひらがなの「お」をできるだけ速くずっと書いていくと,途中でなぜだかわからないのですが自然と「あ」とか「む」とか「す」とかになってしまうことが起きます。こういった現象を,書字スリップといいます。

この現象は仁平義明先生によって開発された急速反復書字法という方法でよく見出されることが,1980年代に報告されています。できるだけ速く同じ文字を繰り返す手法,ということですね。

ある文字ばかりをずっと書いていると,似た部分を持つ別の文字を書くスキーマ(文字を書くときのプログラム)も活性化します。もしもその別の文字の活性化が強くなると,自動的にその文字を書いてしまう,ということが起きるようです。たとえば,ある文字を事前に書いたり読んだりしてから,別似た文字を急速反復書字させると,そこで事前に触れた文字に書字スリップしやすいとか。

子どもでも簡単にすることができて,かつとても不思議な現象の一つです。

ゲシュタルト崩壊

もうひとつ不思議な現象は,ゲシュタルト崩壊と呼ばれるものです。ゲシュタルトというのは,「全体的なまとまり」のことをいいます。

これは,ある漢字をずっと見続けていると,「あれ?こんな文字だったっけ?」と感じたり,文字全体がバラバラに感じられたりする現象のことです。

日本心理学会のwebページに「漢字のゲシュタルト崩壊現象とは何でしょうか?」という記事がありました。

単に疲れたりしたときにこの現象が生じるのではないようですので,この現象が生じたからといって心配する必要はありません。そして,まだこの現象がなぜ生じるのかはわからない部分もおおいようです。

私自身,書字スリップも起こせますしゲシュタルト崩壊もよく起きてそれを自覚します。子どもにもわかりやすくて不思議な現象の研究って,なんだかいいなと思ったというお話でした。

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