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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#学問

リサーチクエスチョンの4つのタイプ

以前,リサーチクエスチョンについて記事を書いたことがあります。こちらの記事です:『良いリサーチクエスチョンを立てるためには』。実はこの記事は私のnote記事のなかでも,一番読まれているもののひとつになっています。それだけ,多くの人が必要とする話題なのでしょうね。 オススメ本最近,リサーチ・クエスチョンについて,面白い本が刊行されました。『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』です。 よいリサーチクエスチョンを立てるこ

いつ役に立つかわからないから維持することが大切

私たちは,将来の予測がとても苦手です。でも,「うまく予測ができている」と思い込むことによって,安心を得ているんじゃないかな,と思うことがあります。 後知恵バイアスその思い込みのひとつが,後知恵バイアスです。これは,何かが起きた時にあたかも最初からその結果を知っていたかのように思い込む認知的な特徴のことです。 この後知恵バイアスについては,これまでにも何度か記事にしたことがあります。たとえばこの記事は,私が東京に引っ越す直前に起きた出来事について書いたものです。 こういう

中東地域でよく研究される社会心理学のトピックは?

論文を英語で書くかそれとも日本語で書くか,という問題は心理学の領域でも近年ますます問題になってきています。だいたいこういった問題への態度は,研究者の世代が変わるにつれて次第に変化していくものです。 私が大学院生の頃,少なくとも私の周りでは論文を日本語で書くのが当たり前で,英語で論文を書く院生の姿をあまり見ることはありませんでした(指導教官は英語でも書いていたのですが)。 この問題は「研究分野」と「時代」の両方を考える必要があります。心理学の中だけを見渡したときにも,以前も

よい仮説を立てるコツ

以前,リサーチクエスチョンを立てるコツについて書いたことがあります。よいリサーチクエスチョンを設定するには,単純すぎず複雑すぎず,焦点を明確にして,回答可能で,価値判断に注意しつつ,抽象的すぎず,理由の立て方に注意し,オリジナリティを考える……そういったことに注意しいていくのがよいだろう,という話でした。 今回は,次の記事(Developing a Hypothesis)を参考にしながら,「よい仮説を立てるコツ」について考えてみたいと思います。 リサーチクエスチョンは,研

良いリサーチクエスチョンを立てるためには

研究をするときには,リサーチクエスチョン(研究上の疑問)ということを考えます。リサーチクエスチョンというのは,研究を行う際に立てられる疑問や課題や問いのことです。これは個別の仮説のことではなく,仮説よりももっと大きな段階の疑問で,論文全体のテーマと考えても良いものです。リサーチクエスチョンに従って,もっと細かい仮説や問いが立てられていきます。 そして,良い研究を行うためには,よいリサーチクエスチョンを立てることが必要となります。でも,研究をこれから始めようとする学生の皆さん

引用文献トップ100

数年前のものですが,「世界で最も引用された論文トップ100」という記事があります。どういった論文の引用が多いのでしょうか。 この記事によると,引用回数トップの論文はこれです。ただし,記事が4年ほど前のものですので,いまもこの論文がトップなのかどうかはわかりません。 山の頂の小石この記事にもありますが,よく引用されるトップ100の論文というのは,高い山にたとえれば,頂上のほんの1センチにも満たないところにある論文のようなものだということです。山の頂上に乗っている小石のような

バイオリンを知らない国でアマゾンレビューがあったら

amazonって,高価で本格的な楽器も売ってるのですよね。ネットで買うのはなかなか勇気がいるのではないかと思ってしまうのですが,どうなのでしょうか。 バイオリンのレビューネットショップで売っているバイオリンを見つけて,その昔,ネットで見かけた記憶がある書き込みを思い出しました。どこかでこういった書き込みをみたのですが,細かいところは覚えていません。それはこういう内容です。 バイオリンという楽器がとてもマイナーで,ほとんどの人が知らない国があるとします。もちろん,上手な人が

研究世界の多様性

学部生の講義では研究を取り巻くイメージをなんとかうまく伝えようと思って,たとえを使うことがあります。 あれこれといくつか考えてみたのですが,その前にどういう状況になっているのか,自分自身の認識についてざっと現状をまとめてみようかと思います。 〇〇学「〇〇学」というカテゴリがあります。 自分自身は心理学というカテゴリに入っていて,その中の下位カテゴリとしてパーソナリティや発達,その他いくつかよくわからないカテゴリに手足を突っ込んだような状況にあります。 大きなカテゴリの

最初の本を出版したときの話

高校生のとき,「いつか自分の名前が表紙に書かれた本を出版したい」と思っていました。小説なのか,詩集なのか,ノンフィクションなのか,いったいどんなジャンルの本になるのかは,高校生の自分自身にはまったく予想がつきませんでしたが。それは当時の自分にはいつかそうなったらいいな,というあこがれのようなものでした。 いくら「本を出したい」と思っても,最初から出版社に知り合いがいるわけではありません。 いまなら,ネットに書いた文章から出版へとつながる,ということもあると思いますが,そう