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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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2020年12月の記事一覧

「社会の役に立たない研究はいらない」のか

自分の研究が社会の役に立つのか?と尋ねられたときに,どう答えるのがいいのでしょうね。おそらくどんな答えを返しても,気に入らない人にとっては気に入らない答えになってしまいそうな予感もします。 社会経験「社会の役に立つ」という表現はとても曖昧です。この表現は,使う人によって好きなように使えてしまうという側面があります。 「社会人」とか「社会経験」といった言葉も,「社会の役に立つ」という表現に似ています。「学校教員は社会経験がない」「大学教員は社会経験がないからダメなんだ」とい

収束的妥当性と弁別的妥当性

心理学で性格や態度や価値観を測定する時には,質問紙形式のアンケートがよく用いられます。そこでは,質問文(疑問文になっていることもそうではないこともあります)と,いくつかの段階からなる選択肢(あてはまらないを0点,そこからいくつかの段階を経てあてはまるを5点とか)を複数用意して回答を求めます。 あくまでも質問は質問であって現実ではない,というのが基本的なスタンスです。文章で尋ねても正直に答えてもらえるとは限りませんし,ちょっとした言い回しで回答が変わってしまうということも,実

心理尺度の使用に関する問い合わせについて

一年を通じて,自分が作成した,あるいは作成にかかわった心理尺度を使いたいのですが,という問い合わせがあります。そのたびに返答をお送りしてはいるのですが,頻繁に問い合わせがあることもあり,また回答に共通する部分もあります。 そこで今回は自分が関与した心理尺度を使っていただくことついて,考えていることをまとめてみたいと思います。 作成した尺度私が作成に関与している心理尺度は,研究室のwebサイトに一覧があります。 ◎二分法的思考尺度 (DTI):白か黒か,全か無か,など物事

過去100年間で報告された相関係数の大きさは?

「パーソナリティ係数」という言葉を聞いたことがありますか?パーソナリティの研究を報告する論文の中では,質問紙によるパーソナリティの得点と,質問紙以外の方法(行動の評定とか観察とか)で得られた得点との相関係数が,せいぜい0.20から0.30程度だということを揶揄して,心理学者ウォルター・ミシェルが本の中に書いている言葉です。 実際のところ,質問紙から推測されるほとんどすべてのパーソナリティ次元を,異なる手段で——つまり,他の質問紙ではなく——抽出された反応を含むほとんどすべて