マガジンのカバー画像

研究生活セット

108
研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
¥1,499
運営しているクリエイター

2019年1月の記事一覧

レポートを書くときに注意したい表現:「多い・少ない」と「似ている」

文章の書き方というのは、なかなかしっかりと教わる機会がないものなのかもしれません。大学に入るとアカデミックライティングの授業があるところも多そうです。でも、そこで四苦八苦する学生もいるようです。 文章に関するテキストにも色々なものがありますが、まず読んで理解しておいた方が良いのではないかと思う1冊を挙げると、福澤先生の『議論のレッスン』です。 この本を読むと、何かを述べるということはあることから別のことへの飛躍であり、そのジャンプを補強するために証拠を示すことが効果的なの

グラフを動かして世界を知ろう

Gapminderというサイトを知っていますか? このサイトは,故ハンス・ロスリング先生が中心となって運営していたものです。ロスリング先生はスウェーデンの公衆衛生学者で,TEDの素晴らしいトークでも知られています。 このロスリング先生の本が,最近翻訳されました。この本もとてもおすすめです。ぜひ手に取ってもらいたいと思います。『FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』 Gapminderには世界中の統計情報が

ヨーロッパにいったときにホテルの浴室で抱く印象と『不潔の歴史』

先日,自分の靴下のニオイを嗅ぐのがクセになってしまい,おそらくそこから肺が真菌に感染して入院してしまった,という事例がニュースになっていました。 不潔の歴史こういう話を聞くと思い出すのは,私がこれまで読んだ本の中でもとても気に入っている本のひとつ,『図説 不潔の歴史』です。 どうして気に入っているかというと,この本に書かれていることが,自分があれこれともっているいろいろな断片化した知識を,互いにつなぎ合わせてくれるような知識を教えてくれたからです。 それはとても簡単な知

雑誌『児童心理』休刊ということで掲載させていただいた記事のまとめ

金子書房さんのツイートで,雑誌『児童心理』が休刊となることを知りました。 こちらがサイト上のお知らせです。2019年3月号(2019年2月12日発売,73巻3号)で休刊となるそうです。 児童心理は1947年創刊,2015年には1000号を発行した,長期間続く雑誌のひとつです。 私もいくつか児童心理に記事を書かせていただきました。それを振り返ってみたいと思います。 児童心理の記事は,仮タイトルがつけられた状態で依頼されます。おおよそこういった内容で書いてくださいという依

「小さい関連」なのに「意味がある」時とは

「相関係数が0.1しかないのだから,ほとんど意味はない」と言ってしまうのは簡単なことです。でも,「そんなに小さな関連でも意味がある」というスタンスで論文が書かれている時があります。 たとえばこの論文などは典型的なのですが,ビッグ・ファイブ・パーソナリティと身体的な活動性との間の関連は,標準化された回帰係数で0.1程度か,それを下回るくらいの関連しかありません。『The five-factor model of personality and physical inactiv

関連を検討するときの考え方のコツ

学生の研究の指導をしていてまずつまづくのが,自分が考えていることをなかなか心理学の研究に乗せることができない,という点です。 自由にあれこれと考えていることをそのまま研究に結びつけることができれば良いのですが,それを指導教員に言うとたいてい,「それは無理。研究にできない」という返事が返ってきてへこんでしまったりします。 何が足りないのかというと,基本的な,「検証可能な」仮説の立て方だと思うのです。今回はそういう話をしてみようと思います。 関連があるいちばんシンプルな仮説

タイプAとタイプBとタバコ会社の研究資金

世の中には「動いていないと死んでしまう」という言葉で表すことができるようなタイプの人がいるようです。常に何かに熱中したり,何か取り組むことを見つけようとしたり,せかせかと動き回っているような人です。 周りに思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。もしかして,あなた自身がそういう傾向の持ち主でしょうか。 特徴的な行動心理学で「タイプA」と「タイプB」というとき,それは血液型のことではなくそういう名前の特徴的なパーソナリティや行動のスタイルのことを指します。 このパーソナリ

研究世界の多様性

学部生の講義では研究を取り巻くイメージをなんとかうまく伝えようと思って,たとえを使うことがあります。 あれこれといくつか考えてみたのですが,その前にどういう状況になっているのか,自分自身の認識についてざっと現状をまとめてみようかと思います。 〇〇学「〇〇学」というカテゴリがあります。 自分自身は心理学というカテゴリに入っていて,その中の下位カテゴリとしてパーソナリティや発達,その他いくつかよくわからないカテゴリに手足を突っ込んだような状況にあります。 大きなカテゴリの

何のためにそれをするのか

今回は,さいきん時々考えていることをざっと書いてみようと思います。 原因になる変数のことを独立変数と言い,結果になる変数のことを従属変数と言います。別の言い方をすることもありますが,まあ原因になるものと結果になるものということです。 研究をするときには,何を原因として何を結果とするか,ということを考えることがよくあります。 たとえば,知能と勤勉性(自己統制やまじめさ)の性格特性を独立変数にして,学業成績を従属変数にしたりするわけです。この場合,知能と勤勉性で学業成績を説

不定期メモ 2019.1.2/モチで救急搬送のニュースから日本の死因について

この記事はマガジンを購入した人だけが読めます

同じテーマの本を3冊読んでみてはどうかという話

「同じテーマの本を3冊読むと良いですよ」ということを,よく言っています。これは,小説などを読むときの読み方ではなく,知識を定着させるための本の読み方の場合です。 小説の場合には,新しいストーリーや展開を楽しむものですから。もちろんシリーズものもありますが,それでも同じようなストーリー展開というわけではないと思います。 ですので,ここで書くことは知識探求型の読書についてです。 あるテーマについて書かれた本を1冊読むと,その中にはためになりそうなことがあれこれと出てきます。