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Go To 島根

これは公開していなかった記事だけど、2020年の秋に島根に行った時の記録。

なんとなく行きたいと思っていた足立美術館と出雲大社。Go Toキャンペーンが東京でも解禁されて少しずつ盛り上がりを見せていた頃、ふと調べた島根への往復値段。日程に平日も入れたとはいえ、ホテル2泊入れても26,100円だった。

友人を誘おうとしたが、曖昧に声をかけた私が悪い。なんとなく行きたいねと話して流れるのが好きじゃなく、面倒くさくなって一人で行くことにした。2020年にコロナウイルスが蔓延して海外旅行に行けなくなるなんて誰も予想してなかったわけで、いつでもできると思っていることが、いつでもできなくなることがある。

久しぶりに羽田空港へ向かう。一年ぶりの国内線。東京から1時間ちょっともあれば国内の大抵の空港へは行ける日本はやっぱり狭いなと感じる。地方の空港はどこも似た雰囲気だ。旅で見る風景は、過去の旅で出会った同様の風景を想起させる。今回はそういう経験が多くあった。アメリカから帰国して、日本に腰を据えて暮らし初めて8年。国内を旅行するという経験がそれなりに積み重なってきたからかもしれない。

ホテルは出雲市駅前のドーミイン。私は大きいお風呂が好きで、温泉とか大浴場があるとそっちを選びがち。夜着の便だったので、チェックインした後に駅近くの居酒屋にて一人で晩酌。島根のお酒を少し飲んで、のどぐろをいただく。一人の時間は大切だと思っているけど、一人での食事は落ち着かないし、誰かと一緒に食べてこそ美味しさは増すと思う。一人旅の一番の懸念は、私にとっては食事だ。食事は、美味しさは誰かと共有したい。

翌朝は、9時にレンタカーを借りに行く。対応してくれたお店の人に「観光ですか?」と聞かれて、「仕事ついでに」なんて嘘をついた。立派に一人旅。気にする必要なんてないのだが、見栄をはる自分がいる。

石見銀山へ。久々の運転にちょっと緊張しつつ、過去のレンタカー経験を想起する。前回は昨年の沖縄。こちらは本当に仕事ついで(というか沖縄行きたくて仕事作ったけど)で行って、観光もしてきた。だが別に仕事ついでだからなんだというのだ。どちらも一人旅には変わりない。変わりないんだけど、人目を気にする自分がいる。

1時間ほどで目的地到着。駐車場が分からなくてちょっと回った。大した事前情報を入れずに行ったので、そんなに歩かされるとは知らなくて、駐車場からおよそ3km歩いた。唯一、常に一般公開されている龍源寺間歩(間歩とは、銀鉱石を採掘するための坑道。石見銀山には大小600あまりある。中にはこんなとこ入るのって思えるような小さな場所にもマーキングされてた。)まで。紅葉が綺麗な時期でハイキング気分を味わえたから、そんなに歩いても飽きなかったけど、他の多くの観光客のように自転車を借りるのが良いと思う。

石見銀山は2007年にユネスコ登録された世界文化遺産。自然と共生した鉱山運営が評価されたらしい。ここで毎日穴を掘って、鉱石を採取していた当時の人々に思いを馳せながら、間歩を歩く。それだけを考える精一杯な暮らしにもちょっと憧れたりしてしまう。自由だからこその不自由さ、責任が時に自分を苦しめる。

帰り道は少し道を変えながら、たまに小走りになりながら。駐車場まで戻ってきて、そのまま五百羅漢の見学へ。私が何となくイメージしていた石見銀山はこの写真だった。

ここは銀山で働いて亡くなった人々の霊や祖先の霊を供養するために作られ、五百羅漢坐像が並んでいる。なお、「五百羅漢とはお釈迦様に従っていた五百人の弟子のことで、世間一般の感情や欲望等は全て超越しているが仏、菩薩の境地にはいまだ到達せず、我々人間と仏との間の存在」だそうだ(受付でもらったパンフレットより抜粋)。拝観料を払うときに銭洗弁天もぜひって言われたから、乗っかって一万円札を洗ってきた。ほんとは小銭にしようかと思ってたけど、お札も洗うって書かれていたし、せっかくならお札をと思って勇気を出した(お札が一万円札しかなかったし、やめようかと思ってたけど他に来ていた観光客が一万円札を洗っているのを見て、真似をした)。さて、この一万円札はどう使おうか。解説によれば、別にどう使ってもいいらしい。お金の巡りを良くするために使うとか、お備えするとか。要は心の持ちようなのだ。

五百羅漢はなかなかに圧巻。けど個人的には京都の三十三間堂の方が圧巻だった。

さらに歩いて、資料館の方へ。流石に少し疲れてお腹も空いたので、資料館の近くにあったお店でお蕎麦を食べることにした。有名な割子そば。観光地のお昼。待列はないけどほぼ満席で賑わっていて何より。どこへ行っても清潔な環境で、美味しいものにありつけるのは日本の素晴らしさだと本気で思う。

その後資料館を見たけれど、こちらはみんな行かないのか、全然人がいなかった。知識を補充する意味で勉強になったけどな。間歩の奥に酸素を送るための工夫とか、作業時にしていたマスクの話とか。そうそう、この資料館もそうだけど、いろんな場所でpaypayが使えて、浸透率に感動。pay事業はやはりpaypayの圧勝な気がする。営業力大事。

そしてまた駐車場まで1kmほど歩く。資料館近くにも駐車場はあったけど、街並みも見れたし、時間もあったから。石見銀山滞在時間、約3時間。帰る間際には小学生の団体が来ていた。移動教室なのか遠足なのか。地元の人がガイドしているようだった。

帰り道は行きと同じ道を。行きの道すがら気になった道の駅 キララ多伎を訪問。車ならではの特権。有名らしいイチジクソフトを食べて海を眺める。夏は全く海へは行かなかったからこんなところで少しだけ。天気も良くて最高に気持ちよかった。お土産も少し調達。

そこから出雲大社へ。こちらもほぼ下調べせずに行ったから、駐車場停めて歩いて最初に着いた神楽殿からお参りした。縁結びで有名ということで、ねがいことは「ご縁がありますように」と。最近お参りするときは、ねがいことはせず、目を閉じて心を無にして、目を開けたくなったら開けるという方法をとっていたから、何かをお願いするのは久しぶりだった。銭洗弁天もそうだけど、大切なのは心の持ちようだと思っている。何かにすがるのではなく、起きていることを受け止めてポジティブに捉えて行くことを心掛けている。

その後、本殿の方へ行って、お賽銭を入れて、もう一度お参り。出雲大社は二礼四拍手一礼らしい。本殿横で、よく分からずに縁結びの糸を買う。販売してくれた女性に「縫い付けるもので、持ち歩いて何かするものではない」と言われたけど、きっと縫い付けることはないだろう。それも心の持ちようと思うことにした。

駐車場とは違う方向だったけど、せっかくなのでそのまま鳥居の方へも行ってみた。お参り順序が完全に逆だった。そのまま参道へ。大鳥居も見えたけど遠かったからそこまでは行かず、少し周りのお店を見て歩く。ここら辺も今年は苦しかったのだろうなと想像していた。大社珈琲というところで縁結びブレンドを買って、散歩して。そのまま夕日を見に行くことにした。気ままな一人旅。

15分くらいで日御碕到着。島根に来るまで夕陽が有名だなんて知らなかったけど(というかそんなに見るものがないからここアピールしているのもあるとは思うんだけど)、日本海へ沈む夕陽はとても綺麗だった。朝の石見銀山で結構歩いていたけど、ここでも夕陽が沈むまで散策してたらこの日は27000歩とかになっていた。それでもそんなに疲れないのは、日々のトレーニングのおかげ。朝走ろうかなんて考えていたけど、走らなくて良かった。

予定なかった日御碕神社もお参りして、陽が沈んでから帰路に着く。海沿いのドライブも素敵だったな。だんだん暗くなっていく時間帯。刻々と変わっていく景色がなんともロマンチックだった。宿へついて、少し休んで晩ご飯へ。すぐ近くのちょっとした居酒屋で定食を食べた。富山より南、日本海沿いではどこでものどぐろが有名なようだ。

翌朝も走りには行かず、朝8時前出発で開館9時の足立美術館を目指す。

現APU学長の出口さんの本を読んで行きたいと思っていた場所。しかし、着いた側から大型観光バスが押し寄せて、修学旅行らしき中学生集団もいるわでなかなかの混雑。入館まで並ぶとかまでではなかったけれど、コロナで混雑耐性も弱くなっているのか気が滅入ってしまって感動が薄れた。

事前にウェブでチケット購入したけど結局並ばないといけないし、事前に買う意味まるでなかったのも残念。何のためにやってるの?って疑問しかわかない…。庭園は手入れも行き届いていて素晴らしかったけど、生の掛軸は人だらけにしか見えないし、なんかやたらと喋っている人が多くて(美術館って友人や家族と言っても静かに話す場所で、あまり喋らない場所って思ってるけどそうじゃなかった)、心が乱れてしまった。

それでも庭園のスケールには圧倒されたし、横山大観のコレクションも凄かった。何より私は実務家に惹かれるので足立全康という人物に興味を持って、その人が一代で財を成してこの美術館を作り上げたことに感動した。同じ感じで箱根の岡田美術館も凄いと思っている。好きなアートを買って飾るのは一つの夢。

もう少し時間かかるかと思っていたけど、気持ちが萎えたこともあって1時間ほどで岡田美術館を後にして、島根県立美術館へ。宍道湖が見渡せる素敵な設計の建物。何となくウィスコンシンの美術館を思い出した。人もまばらで静かでゆっくりした時間を堪能。展示品も良かったし、気持ちの良い場所だった。

時間があったら行こうと考えていた松江城にも足を伸ばせた。ここでも修学旅行の中学生と被ってしまったけど、まだ落ち着いて見られた。昔のままの状態で残されている天守閣は趣がある。立派なお城。石を落とす仕掛けや鉄砲や弓矢を放つための穴、城を支える柱など当時の雰囲気を感じられる。

お昼は松江でgoogle mapで探したお店。松江市はニューオーリンズと姉妹都市らしく、そのカフェでニューオーリンズの郷土料理であるgumboを出していたから思わず注文してしまった。ニューオーリンズはアメリカで行った都市の中でも結構鮮烈に覚えている場所で、一回しか行ったことないけれど思い入れがある。お店は人がいっぱいで、料理が出てくるまで少し時間かかってイライラしてしまったけど、やりたいことはだいたいできたし、今思い返せば行って良かったなと思う。

レンタカーを返却しに出雲市へ戻らなければならなかったので、宍道湖沿いにドライブ。行きはバイパス使って700円払ったけど、到着時間は10分ちょいしか変わらないので、帰りはバイパス使わずに帰った。特に問題なくスムーズだった。1時間とか違ったらもちろん選ぶけど、10分ちょっとなら節約するなと思った。時間の方が大切だとは思っているけど、この辺りの線引きについては考える。

無事にレンタカー返却して出雲市駅でお土産を物色してバスに乗り込み空港へ。駅のセブンイレブンで買ったクラフトビールを、バスの中で飲んで思いを馳せていた。

仕事絡めない状態では久々の一人旅だった。マラソンやハーフマラソンも絡めていない。それでも行ってみたいと思ったのは、Go Toの安さと、いつでも行けるわけじゃないって気持ちから。思い立った時に行動することの大切さ。誰かと行けたらもっと楽しかったかなと思うけど、自分の行きたいところに思うままに行けるのは魅力である。

往復航空券+2泊 26,100円 空港からバス往復 1,440円 晩ご飯代(お酒含む)8000円 コンビニ(朝ご飯とクラフトビールとお菓子) 2500円 レンタカー代金  9000円(ガス代込)駐車場費 900円 有料道路  700円 間歩、資料館、五百羅漢入館料  1500円 お昼ご飯(2回)2400円 足立美術館 2300円 島根県立美術館 300円 松江城 670円 いちじくソフト  300円 珈琲とお菓子 700円 お土産代金 2500円 

ざっくりだけど、6万円くらい使ってるね。

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