見出し画像

ウチの子

ウチの子である。
もう石を投げれば当たる車種であるが、大きさといい燃費といい文句のつけようがないので、結構長く我が家にいる。
メンテらしいメンテもしていないのに、実に甲斐甲斐しく働いてくれているので、もう本気で感情移入してしまう。

先日、アジサイを見に文京区の白山神社に行ったときトラブルが起きたという話をした。

トラブルというのは、実はウチの子に起きたのである。

ウチの子はハイブリッド車である。
プラグインとかのは知らないが、この年代のハイブリッド車には補機バッテリーと駆動バッテリーの2種類のバッテリーを積んでいる。
補機バッテリーというのは主に車内の電子機器のために使われていて、見た目も普通のバッテリーだが、駆動バッテリーは、まさに走行のためのバッテリーでありハイブリッドカーの要である。
ともない大きさもかなりデカい。
ウチの子の場合だとリアシートの下は、ほぼこのバッテリーが入っている。

補機バッテリーは一般的な12Vバッテリーなので、例えばバッテリーあがりなんかでも普通車のように対応できるが、駆動バッテリーはそうはいかない。
バッテリーである以上は寿命があって、古くなれば当然それを迎えてしまう。
今回ウチの子が、そうなってしまった。

その兆候は前からあって、ちょっと裏ワザを使って騙し騙しやってきたのだけど、もう完全にバッテリーがダメになってしまい、すれ違いもできないような住宅地の道路の真ん中で立ち往生してしまったのだ。
兆候はあったのだし、ゆえに故障自体は致し方ない。

だが、それからが大変である。
JAFにはずいぶん前から入っていないから保険会社のレスキューを使う。
しかしそれが来るまでに1時間くらいはかかるという。
大事なことなので、もう一度言うが「道路の真ん中で立ち往生」しているのだ。
そのことを保険会社のオペレーターに言うと「警察を呼んでください」とのこと。
ああ、なるほどと思いつつ110番して状況を説明し警察官を待つ。

しかし、その間も道路の真ん中にほっておくわけにもいかない。
もう少し端に寄せねばと、通りすがりの佐川のお兄ちゃんにヘルプを頼む。
快く引き受けてくれて、ちょっとだけ端に寄せられたが、それでも車は通れないままだ。
警察官がパトカーで登場するまでの数十分、何台かの車に事情を説明して迂回してもらう。
幸いというか、交通量の少ないところで、その点は助かった。
警察官は4人で来てくれて、車を停めていたスペースまで押し戻そうということになった。
停めていたところからは目と鼻の先で止まったので、なんとかなりそうではあったが、駐車スペースに入るには10cmくらいの段差があって、それを越える必要がある。
ぼくはハンドルを握るので警察官4人で押しこくって、なんとかスペースに戻す。
全員で「ぐあーっ!」と気合いを入れて押してくれる。
このときばかりは警察官が神に見えた。

事故でもなんでもないので、警察官も始終穏やかに接してくれた。
お気をつけて、の言葉を残して警察官は去っていく。

さて今度はレスキューである。
状況からして、その場での対応は難しいので、レッカーで来るとのことだったが、とにかく周辺は狭い道ばかりだ。
広い道から入ってきたものの、今度は車を牽引して戻る道は限られてしまう。
また、レッカーには車輪を持ち上げる必要があるが、スペースから車を出せる方向が一方向しかなく、駆動輪である前輪を持ち上げるにはレッカーの方向が合わせられない。

色々思案して、ひとまず広い道まではギアをニュートラルにして前輪をフリーにした状態で後輪を持ち上げ、ゆっくりと牽引する。
然るのちに広い道で持ち上げる車輪を後ろから前に変えるという方法を取ることに。

四の五の言っている場合ではなく、ぼく自身も疲れて思考が停止しているのでレスキュー隊員の言葉に従う。
広い道で再度合流して、ひとまず車は預かってもらい後日修理工場へ運んでもらう手筈にした。

こうなればバッテリーの積み替えしか手がない。手がないのだが、駆動バッテリーの交換はン十万かかる。
それくらい涼しい顔でほいほい出せるほどリッチでもないので、ここはリビルドのバッテリーで対応することに。

いやはや。

しかし、この顛末でたくさんの人に迷惑をかけたが、誰もイヤな顔ひとつせず接してくれた。
警察官やレスキュー隊員は仕事だから、といえばそれまでだが、元はといえば、ぼくがもっと早く手を打っていればこんなことにはならなかったのであるから、嫌味のひとつくらい言われても仕方ない。
佐川のお兄ちゃんなんかは仕事中であったし、迂回してもらった人たちにはとんだとばっちりだったはずである。
あらためて(人間っていいな)なんて感じ入った。

ふざけている場合じゃない。
この場を借りて各位にはお礼申し上げたい。

この後修理に入るのだけど、長くなったので、また別記事で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?