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「ぼく」

なんでも今日は「幽霊の日」なんだとか。
だからって訳でもないけど、ちょっとひんやりする話でも。

小学校も2年か3年くらいの頃だったと思うから、もう半世紀も前の話だね笑
でもあの時の事ははっきり覚えてるんだなぁ。
夢だったんじゃないかと思う事もあるけれど、母に後年こんな事がなかったか?と訊ねたら、珍しくぼくが泣き叫んだから覚えてると言っていた。
それくらいびっくりしたんだよ。

ちょうど今くらいの夏休みの頃。
ぼくが当時住んでいた実家はぼくが生まれた頃にリフォームをしてはいたけれど基本的に古い家で、玄関を入ると突き当たりが居間に続く扉があり、その左手に2階へ上がる階段があった。
その階段はリフォーム前の古いのをそのまま流用していて、ずいぶん急な木の階段。
その階段のさらに左奥がぼくの四畳半の部屋になっていた。
たぶんその時も部屋で何かしていたんだと思う。

母に呼ばれた。
「はーい」と返事をしてぼくは部屋を出た。
母は台所にいて、そこに行くには居間を通り抜けなくてはならない。
だから自分の部屋を出て階段の前を通り抜けていく。

全く一瞬の事だった。

ぼくは階段を過ぎる時に、本当に何の気もなく階段の上を見た。
階段は登り切った左が物干し台へ続く扉があって、右へは父母の寝室になっている。
物干しへの扉には窓が付いていて、そこから西日が差し込んでいた。
その差し込んでいる西日に照らされて、その階段の踊り場には「ぼく」がいた。

「ぼく」はぼくと目が合うとスッと父母の寝室へと入っていった。

あまりの出来事に、ぼくは身動きはおろか声すら出せないでいたと思う。
返事はあったもののいつまで経っても来ないぼくの様子を見に母がやって来て、ぼくは堰を切ったように泣き喚いた。

母は何かの見間違いだと言ったが、階段の上を見る何か怯えたような表情は記憶している。
もちろん父母の部屋に不審者などはおらず、それどころか物干しへの扉はちゃんと施錠されていた。

それからはそんな事も起きず大学生の頃にそこを引っ越した。
ずいぶん経ってから母にその話をして、出来事はあったんだと確認した。
その時に母が「何だったんだろうねぇ」と言った時にやはり怯えたような目をしたのを、ぼくは見逃さなかった。

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