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問いと遊びで、おはよう創造性。

ワークショップで扉を開く。

お話を聞いたのです。ファシリテーターの安斎勇樹さんに。
「問いのデザイン」の著者であり、東京大学情報学環の特任助教でもある安斎さんは現在、さまざまなクライアントの事業開発や組織改善、人材育成という課題をファシリテーションやマネジメントの実践知で支援・伴走するデザインコンサルファームMIMIGURIをCO-CEOとして率いられていますが、その原点にあるのは、世の中の人やチーム、組織の中に眠っている創造性を活かしたい、という想い。そのキャリアは学生時代、100年以上の歴史を持ち“当たり前の世界を捨て去る営み”であるワークショップにハマったことからスタートします。見たいものを主観的に見てしまい、固定観念を持つと脱却も困難で、内部環境にいると外を思考しにくい、驚くほどに狭い人間の視野。その枠から抜け出すことに興味関心を抱く安斎さんは、子ども向けのワークショップを実験する日々に出会った吃音の少年に光を見ます。思うように話せない彼がちょっとした問いを端緒として流暢にしゃべり始めたのです、大人をも唸らせるアイデアとともに。それは、彼の眠っていたポテンシャルが発露した瞬間であり、超オモロイ!と安斎さんの思索が前進した契機でもありました。


問いの精度こそ、答えの精度なり。

気付きとして得たのが、ファシリのベシャリ術なんかより、プログラムを考え抜くことこそが参加者の創造性を高めるという視座。そこで、未来のカフェを考えるというワークショップで「居心地いいカフェ」/「ちょっと危険だけど居心地いいカフェ」とテーマを出し分けて実施してみたら、圧倒的に後者グループでアイデアが創出されたのです。う~ん、面白い。投げかける問いかけが創造性のトリガーを引くきっかけとなるよう設計すること。ここから安斎さんの「問いのデザイン」が生まれるのです。そもそも解くべき課題として設定している問いが悪いと、いくら奮闘しても名答は出ないのです。さらに、その真価は問いのコンビネーションにある、と。ある時計メーカーの100周年ブランディングプロジェクトで出た知見を引いてくれたのですが、どんな時計を作る?という問いに相対して、作りたくて会社に入ったのに作りたくなくなってるデザイナー。悲しき矛盾。これ企業でものすごく見かける風景であり、日本でイノベーションが起きない理由と安斎さんは憂えます。個人と組織の問いのまなざしがバランスされないと、こういう不幸が起きる、と。そして、時間軸も添えて複数の問いを適切に組み合わせながらチームの創造性を引き出すのが、ファシリテーションの真髄とのたまいます。

図1


遊び心が最高のカタパルト。

なるほどの嵐の中、忘れてはならないもう一つの根源的な力があると教えてくれました。それは、「遊びのデザイン」。ますます楽しくなってきます。世の中の当たり前を揺さぶったり、普段のしがらみから外に出るために、遊び心が大きな力を発揮してくれるんだ、と。安斎さんがリードした資生堂グループの行動指針浸透プロジェクトがすごいのです。数万人にも及ぶグローバル社員に啓蒙するという難題を乗り越えていくために彼が立てた問いが、「経営陣が定めた8つの行動指針。1つだけ差し替えるとしたら?」。あっぱれです、座布団です。少し意地悪げにニヤニヤしている人々の顔が目に浮かびます。全社員がトップにダメ出しするプチ下克上な働きかけが遊び心のもとに組み込まれてることで楽しい自分事化がどの現場でも起きた、という秀逸さ。洋の東西を問わず物事を円滑に解決するのはユーモアであることにも通じる遊びのデザイン。楽しげに人の心を動かすしかけ。これはお笑いからも学べると安斎さんが書いた記事がもはや、IPPON!(愉快なテキストなので下記ぜひご一読を) こりゃ1本とられたとオデコを叩いて、問いと遊びのバランスに想いを馳せれば、NIPPONの未来も見えてくる、と来たもんだい。失敬、お後がよろしいようで。


武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダーシップコース クリエイティブリーダーシップ特論/第8回/安斎勇樹さんの講義を聞いて 2021/5/31

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