鉄兜被りの助

すごい小説を連載しています。

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  • アジ・ダハーカの箱

    滅び行く人類とその天敵ドラゴンとの戦い。終末世界を放浪する者はその瞳にいったい何を映すのか。 逆噴射小説大賞ノミネート作品として始まった小説です。1900の作品の中から二次選考通過!ありがとうございました。また、すべてのエピソードを無料公開中のワンス・アポン・ア・タイム・イン・シズオカの応援窓口としてもよろしくお願い致します。

  • ワンス・アポン・ア・タイム・イン・シズオカ

    実在の自治体とは関係ありません。

最近の記事

ロストスペル

□私はロボットではありません チェックを入れるための手が止まる。たった一文で心臓を直接握られたかのような感覚を覚えた。目の前のモニターに映し出されるのはどうってことのないセキュリティ認証機能。ただクリックするだけだ。何も問題ない。 ……俺が本当に人間なら。 手を動かす。ログインした。何も起こらない。このくだらない心配は杞憂に終わった。 「バカバカしい」 ふう、とため息をつき、椅子に背を預ける。すべての原因は職場での会話だ。 「あなた、手の動作が変ですね。AIですか

    • 人間を壊す毒

      「ただいま」  僕は玄関で呟いた。  返事はない。  ふう、とため息をつき、重たいリュックサックを置いた。持っていた泥だらけのシャベルを壁に立てかけ、ブーツの紐を解く。 (もう一人じゃないんだ。こういう挨拶からちゃんとしないとな)  体に付いた泥を払い、風呂場へ向かう。  みし、みし……  安っぽいアパート特有の床のきしみ。気にせず一枚扉の浴室ドアに手をかける。僕は覚悟を決めるように深呼吸をした。 「ただいま」  返事はない。 「入るよ」  静かにドアを

      • ナイト・ブレード・百物語

        ズゥゥゥゥン……! ズゥゥゥゥン……! ズゥゥゥゥゥゥゥン! 「畜生ーッ!サイアスが踏まれて死んだっぽいぞ!」 「バカ野郎!奴を見上げるな!奴のことを見上げるんじゃないッ!」 「グオォォォォーン!」 地響き、悲鳴、咆哮。 巨人が振り向いた。 見上げサイクロプスは山の如き巨体を震わせ、その奈落のような一つ目の視線をこちらに向けている。 俺たちは奴らを呼んでしまったことを……百物語に参加したことを後悔した。 そうだ、これは百の物語。 あんなのがあと九十九体も

        • 眠らぬ鉄の魔女:設定集

          魔女アウロラ: 主人公。虚無の魔女。魔女は生まれつき強い魔力を持って生まれる。それは魔女特有の臓器、魔導器と呼ばれるものの恩恵によるものだが、彼女にはそれが体のどこにも存在しなかった。空の器である自分をコンプレックスに思い、姉に隠れて密かに対聖騎士の訓練を続けていた。下級魔術を駆使して戦い、聖騎士たちの聖剣の力と身体を奪って行く。 魔女スノウホワイト: 人間の国語教師として生活していた。氷結の魔女。魔女アウロラの実姉。戦いを好まず隠れて生きることを選ぶ。 魔女サンドリヨン

        ロストスペル

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        • アジ・ダハーカの箱
          15本
        • ワンス・アポン・ア・タイム・イン・シズオカ
          6本

        記事

          眠らぬ鉄の魔女

          「ここ、テストに出るぞ」 教師が黒板を小突いた。 僕は窓の外を眺める。青い空、白い雲。台風が過ぎた後の晴天が清々しい。 「こら!授業に集中しろ!」 国語教師のユキちゃんが僕を指す。教室で笑いが起こった。仕方ない。妄想でもして過ごそう。例えば、テロリストが襲ってきて…… 僕は再び空を見た。そして目を疑った。 窓の外に甲冑を着た機械がいる。緑色に光る筋を走らせた仮面、刺々しい武者鎧……大柄なサイボーグみたいなやつが腕を組んで空中に立っていた。よく見ると半径2メートルほ

          眠らぬ鉄の魔女

          サイファイ・パンデモニウム

          「幽霊って本当にいるのでしょうか?」 カドワキが後ろでアホなことを言った。 「何言ってんだ。仕事中だぞ」 俺は振り返らずに答えた。しゃがんだまま作業を続ける。ああ、カドワキってのは俺の助手だ。 「でも、ここって目撃証言もたくさんあるんですよ。集団ヒステリーにしたって……あるいは、義眼の故障のせいだとしても、おかしくないですか?」 俺はため息をついた。 「なあ、カドワキ。今が西暦何年か知ってるか?人類は何世紀も前に身体を機械化して、火星に旅立った。貧乏人ですら義眼と

          サイファイ・パンデモニウム

          アジ・ダハーカの箱 第10話:罪なき罰

          「ま、待ってくれ!俺が悪かった!やめてくれ!やめろッ!やめ」 無視だ。俺はクソ野郎の口に鉄板入りのブーツをブチ込んだ。加減の無いサッカーボールキック!歯が何本も砕け、飛び散り、口唇がちぎれ飛んだ。 「ぐわッ!がッ!ああああッ!」 嗚咽、悲鳴。振り子のように揺れる芋虫。無様な姿だ。だが俺の心は冷えている。気を失われると面倒なので、次はそのたるんだ腹に一撃おみまいしてやった!全裸で縛られたクソ野郎は逆さまに吊られたまま嘔吐した。 「がぼッ、ごぼぼッ」 「……」 「うぐ

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          アジ・ダハーカの箱 第10話:罪なき罰

          アジ・ダハーカの箱 特別編:ボーイ・ミーツ・ガール

          俺は目の前にいる女の胸を揉んだ。 「ちょっと、やだ、うふふ、人が見てるよ」 若い女……よく知ってる女だ。俺の幼なじみ。佐田理央(さだりお)はそう言いながらも満更でもない様子だ。 「はは、誰も見てなかったら良いのか?」 俺は微笑みかける。理央は俺の手を振り払い、柔らかく笑った。 「うふふ、うふふふふふ。じゃあ、これが終わったら続きをしましょう」 「そうだな。そうしよう」 絶望的な約束を交わす。隣に座ってる山田さんは何も喋らず、うつろな顔でどこか一点を見つめているだ

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          アジ・ダハーカの箱 第9話:死都編 【結】黄昏と暁

          蜘蛛の糸……! 男がひとり、曇天から垂れ下がる蜘蛛の糸に掴まり、せっせと上っている。 そのすぐ下には、おびただしい数の亡者たち。亡者たちはいびつな組体操のように各々を足蹴にして、蟻の行列めいて男に追い縋ろうとするが…… 男は手に持ったオートマチック拳銃を連射する!火花と共に吐き出される薬莢!弾丸は亡者の頭部に命中!命中!破壊!破壊!飛び散る頭蓋のかけらと肉片が汚らしい花を咲かせる!屍たちはうめき声を上げ、雪崩が如く落下して行く! 「フン、ゾンビどもが!貴様らは

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          アジ・ダハーカの箱 第9話:死都編 【結】黄昏と暁

          夜を泳ぐものたち

          もうすぐ僕の時間だ。 この世界はクソだ。だが、美しい。僕はそれを知っている。 窓に腰掛け、夕暮れが沈むのを眺めながら物思いにふける。 僕には友達がいない。学校も行ってない。家では酔った父に殴られ、不機嫌な母にはいつも罵られている。尊敬できるところが一つもない大人たち。何の記憶もない日々。希望なんかない日々。でも、僕はこの世界が好きだ。 「きた、きた、きたぞ」 太陽が沈み、宵闇が街に迫る。星が瞬き、鮮やかな月が雲の隙間から姿を現す。徐々に、徐々に。

          夜を泳ぐものたち

          デッド・デッド・リローデッド

          「お前の番だぜ。ほらよ」 俺は古臭いリボルバーを対面で座ってる男に投げる。まるで奢った酒をテーブルに滑らせるバーテンダーのような気軽さ。ポーカーじゃあるまいし、ブラフは意味がないことは知ってるが、まあ、気分だ。 男は無言でリボルバーに手を伸ばす。手が震えていない。怖気付いた様子は無い。どうせハッタリだ。俺が勝つに決まってるんだからな。 説明不要、これはロシアンルーレットだ。 自分のこめかみに向けて交互に銃の引き金を引いて、死んだ方が負け。シンプルだ。なんでこん

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          ネイキッド・チャーチ

          おはよう! 青い空、白い雲。 朝の太陽の柔らかな光が木々を輝かせ、俺の白い服を照らしていた。今日も心地良い風が吹いている。 「おはようございます」 エドワード神父がやって来た。 「神父様、おはようございます」 俺は挨拶を返す。エドワード神父は微笑み、朝日を眺めながら深呼吸した。俺もそれを真似る。美しい山の空気を肺いっぱいに吸い込む。すべてがきらめき、輝いて見える。なんて清々しい朝なんだ。 ……あそこに吊り下げられた死体以外は。 神父の肩越しに遠

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          アジ・ダハーカの箱 第8話:死都編 【転】ライブ・リビング・デッド

          …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… …… ……顔に…… …… …… 俺の……顔、顔に、何か…… …… …… 「……リア……ナ……パーガトリーの……」 …… …… 「……を知っているな?」 …… …… ……何かが当たっている。ポタポタと、何か、滴りが。

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          アジ・ダハーカの箱 第8話:死都編 【転】ライブ・リビン…

          アジ・ダハーカの箱 第7話:死都編 【転】竜喰い

          「まいったな。これはどうにもならん」 気だるげに傭兵が呟いた。彼女は竜喰いの賞金稼ぎと呼ばれた兵士。トレードマークのトレンチコートを羽織り、両手に構えたリボルバーの銃口の先、大型の倉庫の屋根の上には……呪属性ダムドゥドラゴン! ここは国際空港より18マイルほど離れたロサンゼルス中心地、ダウンタウン。チャイナタウンやリトル・トーキョーなどの多様な地区で構成され、いくつものブティックやモダンな建築物など、都市の栄華を極めていたエリアだ。だが、現在では、一夜にしてこの大都市

          アジ・ダハーカの箱 第7話:死都編 【転】竜喰い

          アジ・ダハーカの箱 第6話:死都編 【転】ロッカバイ・ベイビー

          「はははは!これで!これでやっと死ねる!やっと!やっ、と、あばばばばばッ!」 狂気めいた歓喜の叫びが空港ターミナルにこだまする! そこでは地獄が如き光景が繰り広げられていた。まるでペットボトルの蓋を取るように、人間の首が鷲掴みで捻られ、そのまま引きちぎられる!胴体から間欠泉のように噴き出す鮮血! 「ひっ、ひいいああ」 歴戦の傭兵の口から情けない悲鳴が漏れた。地獄だ。目の前の光景は本物の地獄そのもの。人間の身体がいとも簡単に捻られ、引きちぎられ、弄ばれる。ドラゴ

          アジ・ダハーカの箱 第6話:死都編 【転】ロッカバイ・ベイビー

          アジ・ダハーカの箱 第5話:死都編 【承】

          "……それにしても、噂通りだな" "ああ、驚いた。信じられん" "本当に……犬属性のドラゴンどもが寄って来ない。一度も襲われてない。このまま目的地まで到着できるんじゃないか" "そうだな。車を走らせてけっこう経ってるが、こんなにど真ん中のルートを通ってもまったく襲ってくる気配がない。不思議なほどだ" "見ろ。向こうにいるのは犬属性ハイエナドラゴンだ。目が光ってる。……こっちを見てる。何匹もいやがるぜ。あいつらが人間の車を襲撃しないなんてよっぽどのことだ" "ひひひ、

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          アジ・ダハーカの箱 第5話:死都編 【承】