004.てんしば_

Road to "頂き"

2019年11月、大阪阿倍野。
わざわざ前日に大阪に移動してまで出場したレースがある。

”Vertical World Circit @Abeno Harukas”だ。

今まで出場してきたレースとは違い、垂直を駆け上がりタイムを競う。
世界中で約1か月毎に開催され、年間で優勝者を決定するレース。
アジアでの大会の1つがあべのハルカスなのだ。

7月頃、たまたまこの大会の存在をネットで知った。
あべのハルカス、大阪人が東京への対抗カードとして持つ切り札的存在。
出てみたい。。。
迷わずエントリーした。

前日、私は大阪にいた。
当日に東京から移動したのでは受付に間に合わないからだ。
夕方に宿にチェックイン、明日は早い。
早めに食事を済ませて、早々に寝よう。

ホテルの近くを散策し、居酒屋に入る。
これが良いのか悪いのか当たりだった。
とうふ料理のお店だったのだが、地下にあり雰囲気も良い。
何より天ぷらや湯豆腐など、本当に旨い。
そんな気はなかったのだが、ビールが進む。
気がつけば、2時間以上を過ごしていた。

001.豆腐料理

これはいかんとホテルに戻る。
こんな状態で明日は大丈夫だろうか。。。

翌朝、思ったよりも体調は良かった。
ホッと一安心。
アメニティのネスプレッソを流し込み、強制起動する。

002.ネスプレッソ

いざ出発。
ホテルから集合場所までは30分かからない。
まだ1時間以上ある。
早いくらいだ。

地下鉄に乗り、考える。
今まで、ボクシングやトライアスロン、マラソンなどいろいろチャレンジしてきた。
それに比べて、今回は階段を駆け上がるだけだ。
結構余裕なのでは!!??
むしろ結構良いタイム狙えるのでは??
胸が躍る。

会場に到着
すでに来ている人がちらほらといた
早めに準備を済ませて、体を温めておこう。
少し離れたところに、あべのハルカスが見える。
思ったより高いかも。。。

003.てんしば①

004.てんしば②

いそいそと着替えを済ませ、ハルカスを見上げながら準備体操をする。
60階、1610段
普段勤務している本社は24階、1フロア当たりの段数はそこまで変わらないだろう。

以前、私は24階まで階段で登ったことがあった。
しんどかった記憶はある。
だが、ボクシング3ラウンドよりきつかったか??
いや、そんなはずはない。
極限状態まで鍛え上げ、体脂肪率を3%まで落としても3ラウンドはきつい。(アマチュアボクシングは3ラウンド)
ところが、24階までの階段登りはトレーニングしていない通常時の話だ。

いける!!!!
本社を2.5回駆け上がるだけだ!!!!

私は自信を確かなものにした。

そうこうしている内にレース参加者はハルカスの真下まで移動することになった。
改めて参加者が集まると、すごい人数。
ただ、階段を駆け上がるだけでこんなにも集まるとは。。。

005.スタート前

スタートは3人グループが15秒毎にスタートするウェーブスタートだ。
みんな、自分の番は今か今かと待っている。

待つこと数十分ようやく自分の番が訪れた。
胸の高鳴りが頂点に達する。

いざスタート!!!


初めから快調に飛ばす。
3階、、、
4階、、、
5階、、、
意外にキツイ。。。
こんなはずでは、、、まだ12分の1。
ようやく10階、
すでにヘトヘトだ。

12階、、、
13階、、、
14階、、、

すでに私は大阪までわざわざこのレースのために来たことを後悔していた。

階段昇降がきついことは十二分に承知はしていた。
中学のころバスケ部に所属していたが、体育館が使えない”外練”で雨のときは、嫌と言うほど階段昇降(通称:階トレ)をやらされたからだ。

にしても、記憶とは程遠く、想像以上にきつかった。

そうこうしている内に18階に到達。

このレース、階段を登るレースなので、マラソンのように沿道での応援ができない。
そのため、18階、40階、ゴール直前にカメラが設置してあり、youtubeでLive配信されていた。

私はレース直前、妻にこのことを連絡していた。

18階をヘトヘトになりながら登る私をyoutubeで見て、ニヤニヤとあざ笑う妻の顔が脳裏によぎる。

”くそっっ!!”

私は自分の体力と根性のなさを呪った。
完全に私の太ももは悲鳴をあげていたが、カメラのある18階だけは何とか速く見せかけるように登った。

20階、、、
21階、、、
22階、、、

少しづつではあるが、着実に登っていく。

自分が登ることに必死で、初めは気にならなかったが
後続スタートの人がかなりの数、私を追い抜いていった。

いったいあの人達は普段どんなトレーニングをしているんだ!!
ぼんやりとそんなことを考えた。

そうこうしている内に40階に到達。

ようやくゴールに近づいてきた。
カメラの前を通過する。
あざ笑いを通りすぎ、呆れ顔の妻の顔が浮かぶ。

このころには、太ももは降参し、私はほぼ歩いているに近かった。

階段をただひたすらに登る。
このために大阪に来たのだ、わざわざ前泊までして。
一体、私は何をやっているんだ!!??笑

怪我をした時、痛すぎて笑いが出ることがあると思う。
私はこの状態に達していた。

追い抜いていく人に変人扱いされぬよう、笑いと辛さを堪え
着実に歩みを進める。
太ももに鞭を打ち、最後の力を振り絞る。

54階、、、
55階、、、
56階、、、

ゴールは目前だ。

58階、、、
59階、、、

ようやく60階に到達。
60階は、登り切った人・応援する人で溢れかえっていた。

その中を、さもずっとハイペースできましたという感じで
最後だけペースを上げ(笑)、無事ゴール!!

準備体操はしたものの一気に駆け上がったため、喉を激しく痛めてしまい
満身創痍の状態で一人寂しくゴールすることとなった。

結果、60階までは17分30秒というタイムだった。

なんとも微妙なタイムではあったが、階段をひたすら登る大会は初めてだったため、満身創痍とは言え、総じて面白い大会であった。

ちなみにだが、トップ選手は60階までを8分台で駆け上がる驚異的な結果を叩き出していた 笑

ひたすらに階段を駆け上がるこの大会は今年もあべのハルカスで開催される。
ふとももをいじめ抜きたいというドM気質の人とガチアスリートの方は是非どうぞ。