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「星の王子さま」の星を読む(2)

物語のはじまり
イントロダクションを書いてからずいぶん時間が経ってしまった...大人みたいに言い訳したくないけれど、子どものように自由な時間がないと、こんな趣味のようなことにはなかなか手がつけられなくなってしまった。そんな大人こそが読まなきゃいけない物語なんだ...

この本が書かれたのは第二次世界大戦中のニューヨーク。遠く離れた祖国にいる親友に宛てた献辞が添えられている。慰めを必要とする、かつて子どもだった大人のために。子どものための物語だけれど、理解できる(しようとする)大人のためにも書かれた物語。

物語は、飛行機乗りの「ぼく」がサハラ砂漠に不時着した時に出会った不思議な王子さまのおはなし。大人になってから読んでしまった私は、最初は単なる物語として、次いで哲学的な意味を見出そうとして、宇宙人との遭遇だとかもう一人の自分なのか、臨死体験みたいな出来事だったのか、と類推に忙しい。そしてまた、星を通じて読もうとしてみるのはきっと慰めを必要としているからで、論文を書こうとか結論を出そうとかそういうことではないのだ。ただ読んでいくことに意味がある。

とっかかりは、そうだな、「ぼく」が太陽だとしたら、王子さまは月。月は子どもの頃の自分であり、向かい合う他者であり、忘れかけている感情や抑え込んだ無意識を投影する存在だ。
いかだで標流している時よりも孤独な生きるか死ぬかの状況で、不意に聞こえてきた声。

「ねぇ、ヒツジの絵を描いて」

ここで、ホロスコープの”はじまり”のサイン牡羊座が出てきます。
はじまりというのは不可思議なもので、どこからがはじまりでどこで終わりかなんて、ほんとうは誰にもわからない。魂は宇宙からやってきて人が死んでもまた宇宙へ還っていくというし、ホロスコープは円を描いていて、一人の人生を知りたくても点や部分でしか知ることはできないのだから。
それでも、王子さまとの出会いは”はじまり”、物語は終わりに向かって進んでいく。

“月”の王子さま
星読みで年齢期という考え方があって、月の年齢期は0〜7歳だという。物語に出てくる王子さまはもう少し年齢が上のようにも思えるけれど、総じて幼少期や時にインナーチャイルドなども現すので、物語の語り手であり主人公の「ぼく」=太陽の目の前に現れた王子さまは月であると考えると、とてもスムーズだしおもしろい読み方ができそうだ。

サンテクスのホロスコープに戻って月を見てみると獅子座にある。場合によっては蟹座かもしれないけれど確率的には獅子座が濃厚だ。物語を読みながら紙に書き出していた王子さまの性質は、なんだかぴったりな気がした。
獅子座は牡羊座・射手座と同じ火のサイン。なんたって王子様(獅子座)、好奇心旺盛(牡羊座)で単身ほかの星を目指す冒険者(射手座)。
王子さまの性格ってどんなだろう、と読んでいくと、砂漠でヒツジの絵を描いてと脈絡のないことを言って自分の意見を押し通すようなところもあれば、世話した花のワガママに心を痛める幼さの一方、相手に対する接し方に王子としてのプライドも見え隠れする。

月の性質がネガティヴに出るときの特徴と、過剰に出過ぎてるときの状態、というものにも照らし合わせてみるとぴったりでおもしろい。

火の星座の月
私は重要ではない、と感じる時に過度に自分を押し出そうとする。
獅子座の月
中心的な人物になること、人を喜ばせる存在であることを良しとする。

王子さまの星の上ではたった一人の人間(?)、愛するたった一輪のバラを喜ばせようとかいがいしく世話を焼く。
王子さまは「ぼく」の、象を飲み込んだボアの絵をちゃんとわかってくれたけれど、ヒツジの絵にも妥協しない。

大人が子どもを扱う時にないがしろにしてしまってはいけない、なぜなら彼らは小さな頃にそうされてしまった自分かもしれないから。
大人は誰でもこどもだったけれど、そのことを忘れてしまった大人たちが大勢いる。こどもだったことを思い出して、こどもがほんとうはどこからやってきたかをもう一度思い出すには、深い探究心と奇跡のような出来事が必要なのかもしれない。

(つづく)

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