『冴えない彼女の育てかた Fine』のいまさら感想。

 初公開日から数えてちょうど五週目となる、冴えカノ劇場版。つい先日に『Memorial2』(厳密にいえば今週の水曜日)が発売されたからか、観賞後にかつてないほどの精神的ダメージを負っていた自分に気づく。

 胸の内にあるこの思いはうまく言葉にできないけれど、それでもなお、この思いは何か言葉にしなくては。

 そう思い、いてもたってもいられなかったわたしは、この場をお借りして……なんて、やたらかしこまった前置きはさておき。

 本当になんなんでしょうね、あの作品。

 何も知らない初見だと仕方ないんですよ、泣くのは。でも、二週目以降は普通いろいろわかってるじゃないですか、展開も結末とかもすべて。

 なのにやっぱり泣いてしまうんですよね、あの作品。

 それは作者が丸戸だからと一言で片付けるのは楽なんですけど、それで片付けてしまいたくない。それくらいに濃いんです、あの120分間は。


 という感じで、すべてを把握しているわけでもないし書ききれるわけでもないので、個人的にかつ大まかにですが、思ったことや気づいた点などをだらだらつらつらと。

 ここからは多少のネタバレを含みますので、ネタバレNGな方は、原作アニメ映画を履修してからどうぞよろしく。

 ……まぁ、わざわざここに飛んでくれた方は、当然ながらすべて履修済みだと思いますけれども、改めて、どうぞよろしく。


 …………。

 ………………。

 ……………………。


 では、ここから抜粋の順繰りに。

 物語のスタートは『icy tail』のライブから入るわけですが……のっけからマシマシの乗せ乗せで飛ばしてくるなーって感じですよね。

 具体的なものを挙げていきますと。

 戸惑いの残る表情から、ハコを楽しむアーティストの顔になった美智留。

 やっぱり気づく詩羽と、やっぱり気づかない英梨々。

 詩羽の言う気づいていないフリを裏付けるように、安芸家に入る前にコンパクトミラーでさっと前髪を整えたり、倫也の食べ残しを刹那の逡巡の末に何食わぬ顔で食べちゃったり、言葉と表情が矛盾していたりする恵。

 冒頭のあたりはこのへんがとにかく印象に残ってます。


 話は飛びまして。

 何度かあるスカ○プ通話シーン、そこで恵の脇や胸や足をガン見してたやつは正直に名乗り出なさい、怒らないから。


 ……いやそうじゃなくて。そこはさしたることではなくて。

 というわけでいい加減本題に入らせていただきますと、本読みのところで恵が優しく言うじゃないですか。

「ここは思う存分、主人公を泣かせてあげようよ」って。

 あれ、二週目か三週目でやっと気づいたんですけど、アニメ二期のシーンと繋がってますよね。最初は抱きしめてあげようとするけれど、はたと止めて、何も言わず語らず子供を見守る母親のように、ただただ、彼を思う存分泣かせている。

 ……ずるくない? ねぇそういう回収の仕方ずるくない? たとえ後づけでもそんな綺麗なやり方されたら普通に泣けちゃうんですけど? お?


 取り乱しました。失礼しました。

 で、またまた場面がぴょーんと飛びまして、デートすっぽかしてごめんと恵に電話をしているときの倫也……ではなく、それを影で見守る詩羽。

 彼女、人知れず、大きくて震えたため息を吐くじゃないですか。

 少し先で彼女は「覚悟」を語り諭すけれど、あのとき吐いたため息がその瞬間だとしたなら、とてもとてもとてもやるせなくて。

 直前のやりとりからもわかるように、詩羽の相棒はまだまだ幼くて全然空気が読めない。だから、嫌でも自分が大人にならざるを得なくて。

 なら、一体どれだけの覚悟がそのため息に込められているのだろう。

 正誤不明の勝手な推測だけれど。人によって解釈がいろいろと分かれるシーンでしょうけれど。

 そして、膨大なシーンのうちの、たった一コマだけれど……。

 なんて考えてしまうから、あのシーンは特に印象が強く、好きで嫌いで仕方ないシーンの一つです。

 で、そこから繋がる、二人の「覚悟」というのが……ね。

 再び詩羽に焦点を当てることになりますが、わたしとしては、ガラスに映り込んだ彼女の表情(と変化)に注目していただきたく。

 あの「しまった」って顔が、リアルでえぐいです。語るに落ちるというのはまさしくあんな感じでしょうか。

 言うなれば、物書きが自作品を褒められたとき、聞かれてもいないのにドヤ顔のしたり顔で自作品のことをべらべら長々と語り出すあいたたた~なときのような……

 と、こちらは自虐によるお茶濁しをしたところで、本筋は視点変更と場面転換を挟みつつ、ずっと(厳密には7割くらい)恵のターンになります。

 一回目(あなたのメインヒロインにはなれないよ)のときは頑なに見せなかった泣き顔が、ここでようやくお披露目に。いやまぁアニメ二期を完走してたらいまさらかって話ではありますが。

 ……ずっと上にある『言葉と矛盾している表情』とやらもぜひ見せていただきたかったですけれど、そんな個人の感想は横に置いておくとして。

 美智留(正確には詩羽ですが)の言う「ドラマがない」ってのはまさしくそのとおりなんですよね。

 彼女だけが唯一、普通。それは名前すらも。

 けれど、だから。だからこそ。

 ……それ以上は、ここで深くは語りません。なので原作と劇場版をどうぞよろしく。


 とまぁ、ここらで、挿入歌である『ULTIMATE♭』が流れ始めたあたりをみなさまには想像していただきたく。

 既出ではありますが、倫理くんの告白は、本当に最低も最低でときめきようがないものでしたよね。

 けれど、恵にとっても、英梨々にとっても、詩羽にとっても、それは揺るぎない事実を集めた、適切でしかない言葉のかたまりなんですよね。

 あくまでこれはわたしなりにの解釈ではありますが、英梨々と詩羽は理想の象徴。それに対して恵は現実の象徴。だから、二次元とか三次元とか、敷居が低いとかなんとかなるとか、そういった言葉たちが混じった告白はこれ以上ないくらいキモくて酷くて仕方ないけれど、彼女にとってはこれ以上ないくらい合格で。

 その後、わたしの場合は、『これ以上ないくらいの笑顔』でトドメさされるのがお決まりコースだったりします。

 わたしの記憶違いだったら申し訳なのですが、くすりやふふっとした微笑みは作中でいくつもあったけれど、あそこまでの嬉しさと幸せに満ち溢れた笑顔はあの一回きりだったはず。

 だからこそ、映像や信者補正に既出や既知といった色々なバイアスがかかっていてもなお、あのシーンは毎回泣けてしまうのかなと。

 ……ていうか、サビに入るタイミングで重なるのはいかんでしょ。タイミングが完璧すぎて、観ては思い出してふと頭をよぎってと何回心を殺されたことか。こっちが「なんだかなぁ」だよ。

 とまぁ、ここまで読んでくださった方々には、そんな所感はもうどうでもいいでしょうから、残りを軽くしたためた後に結びとしますね。

 次いで触れるのは、『冬コミまであと二日』とカレンダーに描かれているあたりを思い出していただきたく。

 ここまで耐えても、ここからは耐えられなかった方、非常に多いんじゃないでしょうか。原作既読だと余計に無理じゃないですかね。

 英梨々と倫也による例のアレ。恵と英梨々のお風呂。そして……追い打ちをかけるような英梨々と詩羽(挿入歌つき)のアレ。

 特に最後、あんなのかまされたら無理ですよね。あんなの泣くにきまってる。これを書いている時点では五週目ですが、未だ耐えられません。

 ……で、後は『glory days』と共にエンドロール一直線なわけですが、本当にあの曲も卑怯ですね。ピンときた方ばかりでしょうけど、歌詞に『シグナル』『カラフル』『ダイアリー』と詰まってるあたり、いい意味でムカつくくらいにくいですよね本当。

 しかもそれだけじゃなくて、すっと差し込まれる12巻の表紙絵(正確には微妙に変化があるけれど)との相乗効果がうんぬんかんぬん。おかげで初回はあまりの風速にちょっと耐えられませんでしたね。いや今でも耐えれているといえるかは微妙なところですが……。


 ……という具合にここまで長々だらだらと書かせていただきましたが。

 このままエンドロール(とそれ以降)についてまで書いた場合、SSレベルの文字数になってしまいそうなので、一旦ここらでお暇させていただくとします(ちなみにここまでで約3500文字)。

 残りのぶんは本当の本当に完結、つまり7週目が終わった段階で、気力と体力があれば、またしたためさせていただこうかなと思っています。

 ではでは、また。

 


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