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仲山拓人のサイレント・ラヂヲ:第4回

 こんばんは。画家の仲山拓人(なかやまたくと)です。
 4月25日木曜日、時刻は午後10時を回りました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 この番組は、滋賀県彦根市にある、私のアトリエからお届けする無声ラジオ。お気に入りの音楽や書籍、作品制作のお話などを中心に、のんびりとお送りいたします。お休み前のひととき、どうぞお付き合いください。


 まずは一曲お聴きください。Benjamin Sebald のトランペット、Walter Thurn のパイプオルガンで「Trumpet Tune」。


 トランペットのピンクゴールドに輝く音色が燕のように飛び回り、パイプオルガンの風が優しく背中を押してくれるようですね。

 あらためましてこんばんは。お久しぶりです。前回の放送から間が空いてしまいましたが、皆様お元気だったでしょうか。私は3月の間、少し調子の悪い日が続いたりもしましたが、4月に入ってからは桜に彩られた彦根城を、人力車を牽いて元気に駆け回っておりました。
 3月が思いのほか冷え込んだためか、今年の桜はずいぶんと遅めに咲きましたね。でも、そのおかげで、今年が入学式の時期がとても華やかでした。彦根城内には中学校と高校が、お城を出てすぐのところには大学があるのですが、ちょうどお城の桜がほぼ満開になっているときに入学式がありました。最近は、桜といえば卒業式の印象でしたが、今年は久しぶりに桜の入学式となりました。
 4月に入ってから咲いた彦根城の桜ですが、例年であれば見ごろは一週間ぐらいだったのに、今年はほぼ二週間にわたって我々の目を楽しませてくれました。幸いなことに、その間ほとんどの日が穏やかに晴れ渡り、絶好のお花見日和が続きました。
 おかげさまで、人力車のほうも大盛況でした。毎日普段の倍ぐらい走りましたし、今まで週末だけ出勤していたところを、初めてある程度まとまった日数連続で出してもらってので、体力的に耐えられるのかかなり不安だったのですが、何とか無事に、そして楽しく駆け抜けることができました。
 人力車のお仕事については話題が尽きないのですが、今週はそれとは別にとても素敵なことがあったので、そちらのお話をしようと思います。


 その前に一曲お聴きください。ヨルマ・パヌーラ指揮、トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で、エルッキ・メラルティン作曲、「眠れる森の美女」作品22より「祝典行進曲」。


 4月21日の日曜日、私は電車を乗り継いで軽井沢に行って参りました。友人が軽井沢にある、石の教会内村鑑三記念堂で結婚式を挙げるということで、新婦友人として列席させていただくという、素晴らしい機会をいただいたのです。
 石の教会を設計したのはアメリカの建築家ケンドリック・ケロッグで、その自然に溶け込んだような独特な作品の数々はオーガニック建築と呼ばれます。石の教会も例外ではなく、地中に半ば潜り込むように石とガラスで作られたその場所は、すべてが唯一無二の曲線で構成されていて、モダンな人工物でありながら、自然の洞窟のような無垢な佇まいが共存した不思議な空間でした。
 石の教会は以前から見に行ってみたいと思っていた建築だったのですが、まさかこのような形で訪れることができるとは、夢にも思いませんでした。
 新婦Mさんと知り合ったのはイラスト系SNSのpixivでのことで、確認してみたらもう12年前のことでした。Mさんも絵を描く人で、もとはといえば私はただのファンだったのですが、ツイッターでやり取りしたりするようになり、展覧会に来てくれたり、一緒に参加したりして気が付けば中の良い友人になっていて、今回は結婚式にまで呼んでもらえたのでなんだかちょっと不思議な気分です。
 新郎のYくんには一昨年の展覧会に来てくれた時に初めて会ったのですが、すごく楽しい人で、なんだかその日が初対面だとは思えないぐらいでした。今回の結婚式で会ったのがまだ3回目だったのですが、なんだかずっと前から友達だったような気がしてしまうような感じがしました。
 この二人が一緒にいるところを見ていると、こっちが楽しくなってくるようなとてもお似合いの二人で、結婚式でもなんだかこの二人らしさが見れて、感激するやら楽しいやら、とにかく列席したほうも幸せでした。どれだけ言葉を尽くしても言い表せませんから、ひとまずこの辺にして一曲お聞きいただきましょう。


 SeanNorthで「ティル・ナ・ノイール」。


 挙式の後の披露宴もとても素敵でした。別荘貸切型の会場で、食堂で披露宴が開かれて、そのあとはそのままその別荘に宿泊させてもらいました。
 挙式、披露宴とも、新郎新婦のご親族と、それぞれの友人が4人ずつという小さな集まりだったので、皆さんとの距離が近く、終始とても和やかな雰囲気でした。
 披露宴が御開きになっていったん解散した後、新郎新婦と友人たちで結局夜1時ぐらいまでのんびりとおしゃべりをしていたのですが、この時間がまたとても居心地がよくてとても素敵な思い出になりました。
 面白いのが、私を含めた新婦側の友人たちで、実は4人ともお互いほぼ初対面だったことでしょうか。一人を除いてツイッターなどインターネット上でのつながりがもともとメインだったので、ちょっとオフ会みたいな感じでもありました。ご親族の方からは、今どきはこういうつながりもあるのね、と感心されました。いわれてみれば結構不思議な集まりで、私など、たった四人の友人席に呼んでもらえるほど親しくなっていますが、よく考えたら実際にMさんに会ったのはもしかすると10回ぐらいかもしれません。
 新婦側の友人は4人ともがいわば”ソロ参加”状態だったので、ホストのほうでもちょっと心配していたそうです。集まってみれば全員がどちらかというと人見知りで、披露宴中はなかなか会話が弾まなかったりもしたのですが、なぜかお互いが人見知りだと見て取って、無理をしなくて大丈夫という暗黙の了解が交わされたようで、案外安心していられたのが今思うと面白いですね。そんな友人一同でしたが、食後に集まっていたときはずいぶん打ち解けて、その日初めて集まったとは思えなかったです。本当に素敵な人たちの出会えることが出来ました。こういう時間が取れたのも、二人が別荘貸切にしてくれたおかげですね。そして何より二人の人柄がこの居心地の良さをくれるんだなとしみじみ思いました。
 この日はあまりに幸せで、居心地がよくて、まだ余韻に浸っているぐらいです。こうして二人の門出に立ち会えたことを心から嬉しく思います。


 それでは、今夜はこのへんで。
 最後にもう一曲お聴きください。SeanNorthで「ファンファーレ」。


 今週末からはゴールデンウイーク。今度は新緑の中を人力車で駆け回りますので、ぜひ彦根に遊びに来てください。
 それでは、おやすみなさい。


本日ご紹介した音楽

  • 「Trumpet Tune」
    (トランペット)Benjamin Sebald
    (パイプオルガン)Walter Thurn
    ―『tugenden - Heldenmusik』<B0054RZO3W>

  • 「眠れる森の美女」作品22より「祝典行進曲」
    (作曲)エルッキ・メラルティン
    (指揮)ヨルマ・パヌーラ
    (管弦楽)トゥルク・フィルハーモニー管弦楽団
    ―『FINISH ORCHESTRAL FAVOURITES』<NAXOS 8.555773>

  • 「ティル・ナ・ノイール」
    「ファンファーレ」
    SeanNorth
    ―『LIFE O.S.T. (2nd Full Album)』

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