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車体が大きく揺れて

 車体がガクンと大きく揺れて、半ば夢見心地だった意識が現実に引き戻された。ローカル線を乗り継いで、最後は随分と古い型のバスに揺られて、山奥の終点に到着した。目的地はこの寂れた集落で合っているはずだが、人の気配がなく、どうにも現実感がない。
 事の始まりは、先週彼女から届いた一通の手紙だった。

空想綺譚抄 2021.2.19

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