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アフォーダンス | ATQの「知っておこう」vol.4

ATQデザイナーのクリモトです。

私たちは様々なモノに触れて生きているわけですが、それらほとんどが私たち使用者にとって快適なのは、そのモノの「アフォーダンス」や「シグニファイア」とよばれることに関わる設計が優れているからといえます。

デザイナーである我々は、常に心に留め置きたい考え方である「アフォーダンス」や「シグニファイア」。
今回はこの2つの単語について、簡単におさらいしていきます。

ATQの「知っておこう」マガジンでは、「自分の作るデザインに確信がもてるようなる基礎知識」や「なんとなくで放置しがちなニッチな知識」についておさらいできるような投稿をしていきたいと考えていますので、是非お付き合いいただけると嬉しいです!





アフォーダンス

アフォーダンス(英:affordance)はアメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによって提唱された「環境が動物に対して提供する意味」のことを指す心理学の概念で、「与える/提供する」という意味の"afford"から派生した造語です。

例えば「受話器」は「本体から持ち上げること」や「耳にあてること」を我々に想像させます。これらの行為を導く情報を受話器(モノ)の側が持っているとしたのがアフォーダンスの考え方です。行為は我々の「主観」や「主体」、「知識」「心」に関わらず受話器自体がが我々に「持ち上げること」や「耳に当てること」をアフォードしているというわけです。

つまり、我々デザイナーがモノを作る時、そのモノが「行為者に求める行動を達成させることができるか?」を念頭に置いておくことが重要なのです。



本来のアフォーダンスと誤用のアフォーダンス -シグニファイア-

これまで述べてきたことが本来のアフォーダンスなのですが、今日では2つ意味が混同して使用されています。
通常、アフォーダンスはそのモノのインターフェース(形状)や行為者の主観や知識に関わらず、そのもの自体がアフォードする様々な可能性全てを指します。
先述の受話器のケースでは紹介した2つの可能性以外にも「投げる」や「折る」といったこともアフォーダンスに該当するといえます。

しかし、ドナルド・ノーマンが誤用したことで広まった「アフォーダンス」は「行為者に狙った行為を誘導するためのヒント(形状/色)」といった狭義のアフォーダンスを指します。
この場合、行為者の最低限の知識や主観が必須となり、それをサポートする色や形のことまでが意味に含まれることになります。

これは後にドナルド・ノーマンによってシグニファイアと訂正されることになりますが、現在も両方の言葉で用いられているようです。


シグニファイアのよくある例としてドアの形状があります。

画像の4つのドアノブと対峙した場合、あなたはどのように行動されられるでしょうか。

恐らくほぼ全ての方が、❶は「ひねる」、➋は「押す」、❸は「引く」、❹は「スライドする」かと思います。

この例でわかるようにシグニファイアを意識したデザインは視覚的に我々の行為を導くのです。



(おまけ)排他的デザイン

写真:Jordan Halsall (Instagram @defensivecity)より引用

アフォーダンス理論はややネガティブな事象にも用いられています。

現代の都市開発では景観の配慮や治安の維持の観点で画像のようなデザインが施されることがあります。

これらは「ホームレスを寝かさない」や「鳩をとまらせない」など、本来様々な行為をアフォードするスペースに対して、行為を阻止する設計をしているという事例です。

こうした、本来の問題を無視し、自分本位でその場限りの設計が行われることは近年問題視されています。


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