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美しい線を描いてください。/おとなの基礎デッサン①「直線」

おとなクラスでは、入会から約一年間、すべての方に同様に行って頂くカリキュラムがあります。「鉛筆基礎デッサン」です。この連載ではそれがどのようなものか、紹介していきます。

メニューは全部で約10程度のモチーフで組まれ、技法獲得の流れに沿ってステップアップしていく仕組みになっています。単発ではなく一連のカリキュラムとして行うことによって、より理解を深めるねらいがあります。

一番最初に描くものは「直線」。

スケッチブックを四分割し、それぞれの枠に垂直線、水平線を描いていくというものです。
たかが線、と侮るなかれ。定規を使わずに直線を描くのは大人でも難しいことです。

線の強弱が分かりやすい様に4Bの鉛筆を使い、まずは自分なりに描いてみます。講師からのコメントは一言「美しい線を描いて下さい」というもののみ。その意味を考えながら、ひたすら垂直線を描いていきます。
ひと枠描き切ったところで講師からアドバイス。それを受け、隣の枠に再チャレンジします。続けて水平線も同様に行い、スケッチブックを埋めたら、この課題は終了です。

ここで大切なことは、まず「美しさとは何か」を考えながら行うことです。一本の線を描くという非常に単純なことですら、それを意識するとしないとでは鉛筆の持ち方、描くスピードや強弱、画面に向かう姿勢、そして心の在り方まで、「描く」に関わるあらゆることが異なってきます。線の集合でできている鉛筆デッサンにおいて、一本の線に心を込めることができるということをまず学ぶのです。

また「美しさ」という言葉は、多様な意味を想起させ、内なる感覚を引き起こす効果があります。ゴールがひとつではないことを無意識にも理解し、「自分にとっての美しさとは何か」を求める姿勢が自ずと形成されるのです。似ていますが「きれい」では、ちょっと単一的で「自分にとって」という意味が薄いように思います。私はそのような解釈で使い分けています。

この「自分にとっての美しさとは何か」を常に考えながら進めていくことは、絵を描くことに限らず何かを表現するうえでとても重要です。そしてそれは、基礎練習である鉛筆デッサンにおいても同様です。鉛筆デッサンにおいて、ずっと大切になるであろうことを、はじまりでまず学ぶ。これが「線の練習」のねらいです。✍️

Text = 本田雄揮(アトリエ5)
Edit = Tatsuhiko Watanabe(遊と暇)

Website http://atelier-5.com/class/adult

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