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船に乗る。南に1000km揺られる。(小笠原旅行記 その1 おがさわら丸編)

 前回はこちら。

小笠原行き予約争奪戦

油断大敵

 さて、令和の鎖国解除前に小笠原に行こうと決心したATB氏。前のnoteで書いた通り、小笠原に行くには「おがさわら丸(以下、おが丸)」という船に24時間揺られていくしかありません。そして、およそ6日に1回、1往復という頻度のため、このおが丸の予約は時期によっては争奪戦になるとされています。
 おが丸の予約開始は、出発の2ヶ月前。ちなみに、船単体ではなく、おがまるパックという、宿もセットになった旅行パックを使った方が安くなりますが、こちらの予約開始も同じタイミングになります。ただし、おが丸単体ならネット予約も可能ですが、おがまるパックについては平日の電話予約のみです。まぁ安いし、簡単な方がいいよね、ということでおがまるパックを予約することに。
 予約開始時刻は普通に仕事中ですし、まぁそもそも夏の繁忙期ならともかく、10月ならそんなに争奪戦になることもなさそう。ちょうど翌営業日が、デジタル声優アイドルグループ「22/7(ナナブンノニジュウニ)」の夏ツアー名古屋公演の後泊で、仕事もお休みだったので、その時でいいやーと考え迎えた予約日――

 完売でした。
   終
 制作・著作
 ━━━━━
  ⒶⓉⒷ

地獄に仏。その名はナショナルランドさん。

 いやいやいやいやいやいやいやいや、流石にそりゃーないでしょシルバーウイークも終わった10月でっせ、と思って、ネットのおが丸空席情報を見れば、なるほど、確かに満席です。
 えーどうすんのよ(どうもならない)とか考えつつ、ネットを彷徨っていると、どうもおが丸パックと似た商品、なしょなるパックというものを取り扱っているナショナルランドさんという会社を見つけました。

 まぁ、そもそも船自体が満席になってりゃどうにもならんのですが、小笠原専門旅行会社と銘打っていることもあり、独自の予約枠なんかもありそうな気配をTwitterの口コミから感じたのと、キャンセル待ちも可能だったため、予約フォームにて申し込み。

 すると、その日のうちに返信があり、希望していた宿泊施設は満室だけど、同クラスの別の宿泊施設で良ければ、船と含めて予約は可能だとお返事が。船は希望等級です。
 これはもう決めるしかない!ということで、即決。後日の旅行記で後述しますが、今回代案として提案いただいたホテルも素敵なホテルでした。

 旅行価格的にも、細かい違いはありますが(選べるホテルリストや、代金に最初から含まれている船代の等級など)、小笠原海運のおが丸パックと、ほとんど価格の差はないと思います。
 むしろ当日、竹芝でチケットを引き換える際、小笠原海運の方は長蛇の列でしたが、なしょなるランドさんは別に特設カウンターがあり、ほとんど時間がかからず引き換えできたので、こっちの方がいいかも。

出発準備

ビザの取得

 へ?ビザ?なんのこと?と思ったあなたは正しい。日本のパスポートは世界最強でノービザでどこでも行けて、いやいやそもそも小笠原は日本国内だろうって?
 その通りですがしかし、小笠原に行くには、アライバルビザならぬディパーチャービザ(?)が必要です。

これがないと実質、渡航できません

【PCR情報まとめ】おがさわら丸乗船前のPCR検査にご協力ください

 早い話、出発前に事前にPCRを受けることがほぼ必須なのです。船自体は乗れるのかもしれませんが、島での飲食店やホテル、アクティビティなどを利用する際には、ワクチン接種の有無に関わらず、陰性証明や陰性であることを事前に証明した際にもらえる、上の写真のようなリストバンドの提示が必要となります。
 陰性証明を自分で準備するか、小笠原海運から無料で送ってもらえるPCR検査キットを前日までに竹芝に直接提出しにいくか、手数料や送料を5000~6000円ほど払って前述のキットを郵送でやり取りするかの3つの選択肢があります。
 流石に、新潟からわざわざ前日までに出しにいくのは実質無理ですし、かといって雨後の筍のごとくPCR検査屋さんが乱立する都会とも違います。となると、残すは郵送。
 このオミクロン株全盛期の日本で、郵送での検査にどのくらい価値があるのかは全く分かりませんが、まぁシングルビザで5000円ぐらい払う国なんか多分いくらでもあります。パスポートに貼ってもらえないのは残念ですが、割り切りましょう(?

 郵送の場合、こんなキットが送られてきます。

送られてきたキットの中身

 唾液を採取して、小笠原海運に送り返します。竹芝出航日前日の午後1時より逆算して、96時間以内に採取せよとの指令。まぁ化学の実験みたいで面白かったですがwww

 万が一陽キャ認定されてしまった場合は小笠原海運から連絡が来ます。ぼっち・ざ・陰キャの場合は特に連絡なし。そして、郵送の場合、送り返した時のゆうパックの発送控えを出航当日竹芝へ持参すると、先ほどのビザならぬリストバンドが貰える仕組みです。

酔い止めのタイミング

 さて、出発準備でもう一つ忘れてはならないのが、酔い止め。

 このおが丸、事前に検索すると船酔いの話がいくらでもでてきます。外洋ということで、当然揺れやすいのと同時に、誰しもがこの船に乗るため、普段、船に乗りなれてない人が乗ることが多いというのも要因でしょう。
 それなりにお船にのった経験はあるものの、太平洋側の航海では、以前名古屋→仙台の航海でダウンした苦い経験があるため、しっかり酔い止めを事前に購入。ネットの集合知の薦めに素直に従い、アネロン先生を購入しました。

最強の酔い止めとして名高いアネロン

 1回飲めば24時間効果があるということで、おが丸に乗り込む直前に飲めば無駄がなさそうですが、飲んですぐは効果がでにくいらしいという話もあります。そこで念のため、事前に飲んでおき、乗船してから効果が切れてきそうなタイミングを見計らって、もう一度飲むことにしました。
 これが功を奏したのか、全く酔いを感じることはなく、おが丸後方のラウンジで本を読む余裕さえありました。効いたよね、早めのアネロン(?

出港

竹芝客船ターミナル

 チケットの引き換え、"ビザ"の取得も済み、ターミナルで乗船を待ちます。…とその前にせっかくなので、外からおが丸の写真を撮っておきましょう。

出港を待つおが丸
おが丸を彩る看板たち

 「東京ー父島」「おがさわら丸」「小笠原海運」。こうした看板を眺めていると、いよいよ本当にあの小笠原諸島へ行くのだなぁ…と実感がわいてきます。

出発前の賑わう客船ターミナル

 出港時間も近づき、乗船が始まりました。等級ごとの乗船となり、まずは上等船室の方から案内されていきます。

行きは2等船室

 そして、2等寝台の順番となり、いざ乗船です!いつも乗るフェリーのボーディングブリッジとは違い、地面から直接乗るのはこれもまた新鮮。

乗船!

行き:二等寝台の様子

 指定された寝台へと向かいます。

2等寝台の様子

 二段寝台ですが、階段式で上段にもアクセスしやすい形になっています。まぁ、今回割当られたのは下段ですがww

ハンガーと小物置き
コンセント付き照明と、空調調節口

 寝台には服をかけられるハンガーや、ちょっとした小物置き、コンセント付きの照明や、空調調節口が備えられています。

ちなみにおがさわら丸には、船室が6等級あります。この2等寝台は下から2つめ。
 上から、特等(スイート)、特1等(デラックス)、1等(スタンダード)、特2等寝台(プレミアムベッド)、2等寝台(エコノミーベッド)、2等和室(エコノミー)の順番です。

 1等までが個室で、特2等寝台からが大部屋。今回の2等寝台の上の特2等寝台だとテレビがつくようですが、まぁ正直基本寝てるか、外に出てるかだろうということで、必要ないかな、と。まぁ、後は寝具が結構違うみたいですが、普通に2等寝台でも、自分はゆっくり寝られてしまいました。まぁ確かになんかうっすい布団だった記憶はありますが…(笑)
 ただ、特2等寝台は、新日本海フェリーのツーリストAのような二段ベッドが互い違いに向かい合うような構造で、2人旅の場合は区画ごとにカーテンを閉めることができるらしい。ということで、2人旅であれば、もっと快適かもですね。

AM11:00 東京竹芝出港

 部屋を確かめた後は、外に出て出港を待ちます。出港が近づくと、銅鑼が鳴り、期待が高まります…!

 竹芝ばいばい👋。もう泣いても笑っても、6日間、本土に帰ってくることはできません。
 本来だと、色々マスコットや小笠原関係の方が近くでお見送りしてくれるらしいのですが、こんかいはあいにくの雨。そのため、屋根の下からささやかにお見送りしてくれました。
 しかし、こんな都会の真ん中のターミナルから、1000kmも離れた南の島へ船が出ているというのも、なんだか感慨深いですね…。

 雨ですが、竹芝出港直後はやはり見どころも多いため、なかなか船の中には戻れませんww
 まずはレインボーブリッジをくぐり…

 東京港の荷役、そして東京国際空港"羽田"を眺めつつ、船は東京湾を南に向け進んでいきます。

 ここまで来ると、だんたん船内に戻る方も多く、その流れに乗りつつ軽く船内探索をしてみます。

遠く離れた小笠原諸島までひたすら南へ

船内にて

探索開始

 まずは船内マップです。

船内図

 実に2デッキから7デッキまで、6つも階数があります…。でかい…のと格差社会を感じる…。普段乗る、新日本海フェリーなんかだとせいぜい3階層くらいですもんね。
 実際、2デッキなんかは岸壁の下くらいの位置になります。

丸い窓が並んでいるのが4デッキです

 そして今いるこの4デッキがエントランスエリアとなっており、案内所などもここにあります。

案内所
通過予定時刻
波浪予想図

 案内所横には、航路上の通過予定時刻や波浪予想図、天候などの掲示があります。携帯の電波についても、通過予定時刻横に掲示がありますが、まぁ体感的には東京湾出ちゃうとだんたん厳しいかな…という感じでした。

レストラン、ショップ等の営業時間等の一覧図
3デッキへと続く階段

 さて、クジラの尻尾のオブジェがある、下へ続く階段を降りると、2デッキ、3デッキ方向になります。こちらにあるのは、最低等級の2等船室のみ。

 コロナ対策で、収容人数を減らしているため空きスペースも目立ちます。満杯の雑魚寝は厳しそうですが、減らしている状況なら、まぁグループとかなら楽しいかもですね。

 ちなみに、この2デッキと3デッキに関しては、エレベーターはありません。エレベーターが使えるのは4デッキ以上になります。うーむここでも格差社会…ww

エレベーターは4-7デッキのみ

 船内にはシャワー室もあります。浴室はありません。ただ、その代わり何箇所も分散配置されていて、利用時間も24時間使えるのは良いところ。ボディーソープとシャンプーは備え付けられています。ただし、タイミング的にはどうしても揺れることもあるので、ご利用の際は十分注意を。

保冷ロッカーなんてのもあります。

 しかしまぁこうやって船内探索をしていると、そこかしこに見えるのが、この青い袋。いわゆるWaterproof disposal bagです。まぁ、今回は比較的穏やかな航海で、これを手に取っている人は見かけることはありませんでした。

島民や小学生からのメッセージボード

 船内には、コロナ禍で奮闘する乗組員さんたちに宛てられたメッセージが掲げられていました。

島民より
小学生より
こちらは社会見学的なもののお礼でしょうか

 地域社会に密着した、文字通りの生活航路なのだな、ということが改めて実感できます。

船内での食事

 さて、24時間乗り続けるおが丸では、食事もまた重要です。まずは、王道の船内レストランChichi-Jima。4デッキにあります。

昼夕食のメニュー
朝食メニュー

 昼食と夕食をここでいただきました。

昼食(島塩ラーメン)
夕食(タラのチーズカツレツ、若鶏の照焼)

 値段的には、陸よりも多少高いかもですが、どちらも美味しかったです。特に、タラのチーズカツレツはオススメ。

 レストラン入り口に掲げられていて、レジで注文するメニューの他にも、カフェテリア方式で、直接お盆に取るような品もあります。
 また、船内のレストランや売店等では、現金だけでなくSuicaも使えます!

カフェテリア方式
Suicaも使えます

 さて、3食ともレストランでも良いのですが、朝はそんなに食欲ないしなぁ…ということで、もう1つの選択肢となり得るのがこちら。

 展望ラウンジHaha-jima。7デッキ後方にあります。こちらは、フリースペースのラウンジに併設されているような形で、軽食を提供しています。

展望ラウンジ
メニュー①
メニュー②
メニュー③
イルカのオブジェ

 父島入港日の朝食はこちらでパスタとスープをいただきました。

 その他、船内には売店や、3デッキ後方にミニサロン南島なる知る人ぞ知る(?)スペースもあります。

売店営業時間案内
ミニサロン南島
売店閉店時間でも使える、日用品の自動販売機もあります

その他の過ごし方

 また、父島行きの船内では、小笠原諸島について解説してくれるレクチャーがあります。どうせ、時間はたっぷりあるので、聞いてみるのも良いのでは。

おがさわら丸船内レクチャー

 その他はまぁ食事と睡眠以外には特にやることはありません。まぁ、ひたすらのんびり過ごすのが船旅の醍醐味です。

 売店でアイスを買って、海を眺めながら頬張ってみたり…

 お気に入りの曲を聴きながら、夜の海風にあたってみたり…

 早起きして朝日を思う存分浴びてみたり…

 東京とは違う海の色に、心躍らせたりしていると…

 父島に到着です!24時間の船旅、お疲れ様でした。まぁ、寝てるか食ってるか散歩してるかだけなので、全然疲れていないのですがww これが船旅の良いところ(ただし海況の良い時に限る)。

 ということで、続きは次回です。かなり更新が間延びしてしまっているので、なんとか早く書きあげたい…。


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