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Food Safety Culture(食品安全文化) / Food Safety-Ⅱ を考える ④食品防御と食品安全文化(前編)

こんにちは! あたたけ です。

引き続き、『食品と科学』2021年11月号および12月号に寄稿した内容です。

前回は『③食品安全は文化となるの?』と題し、『食品安全』と『文化』の相性?のようなものを、あたたけなりにまとめました。
今回からは2回に分けて、『食品安全文化』というものを踏まえての『食品防御』を考えてみます。

ということで、第4幕前半、はじまりはじまり~
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4)食品防御と食品安全文化
前項で食品防御について触れましたが、食品安全文化の醸成に伴う「従業員の会社への愛着」や「従業員の自主性の向上」あるいは「倫理観の向上」こそが、唯一の食品防御の手段だと筆者は考えています。

食品防御の定義は「消費者の健康被害や社会の混乱に繋がる、意図的な異物混入から、食品(製品)を守る取り組み」というようなものが一般的でしょうか。
そのための手法として「TACCP(Threat Assessment Critical Control Point):脅威の評価と重要管理点の管理」というものが提唱されました。TACCPによる食品防御の進め方を簡潔にまとめると、「潜在的な脅威を特定する⇒評価する⇒軽減方法を決める⇒実施する」となります。これはHACCPと同じ流れと言えます。

スライド1

TACCPはHACCPと同じ流れで食品防御の対策を考えていく手法ですので、品質管理・食品安全担当者には馴染みやすいかもしれません。しかし、この手法で真に意図的な異物混入(犯罪と言ってよいでしょう)から製品を守ることができるのか、筆者には疑問があります。それは、「犯罪(意図的な悪意をもった行動)の方法を事前に想定できるのか」というものです。

食品への意図的な異物混入に限らず、犯罪をする人というのは、「犯罪の結果」はバレてもいいと考えても(あるいは、積極的にバラすことがあっても)、「犯罪の実行場面」はバレないように計画を行うはずです。実行時点でバレたら捕まって終わり、全く意味がなくなるからです。
ということは、犯行を計画する人は、計画時点で防犯体制をかいくぐろうと下調べをする可能性が非常に高いです。結果、本気で意図的な異物混入を計画しようという相手には、多かれ少なかれ食品防御の取り組みはバレてしまうと考えるのが妥当ではないでしょうか。

食品防御の取り組みの中で、「意図的な異物混入」を防ぐため「いかに異物を持ち込ませないか」という点に重きを置いたものがあります。
例えば、「作業服をポケットのないものにする」「持ち込み禁止物(もしくは持ち込み可能品)を周知する」「作業エリアに入る際に身体チェックを行う」「作業エリアから出る際、持ち込んだものを全て持ち出したかチェックする」「(作業エリア内の危険物を悪用させないため)薬剤は鍵付きの保管庫に入れ、使用量を記録する」などです。皆様にも心当たりがあるのではないでしょうか。
このような対策を立てたところで、本気で何かしらを持ち込もうと思えば、いくらでも抜け道は考えられます。ポケットがなくても服の下に入れれば、禁止物を持ち込むことは可能です。身体チェックもハラスメントの観点から限界があります。もっと言えば、チェック担当者、鍵の管理者等、いわゆる管理責任者が犯行を計画すれば防ぎようがありません。

世の中には確かに似たような犯罪というものは良くあります。それらを元に、組織にとっての脅威へ対応したり、組織の明らかな脆弱性をなくしたりすることも大切かもしれません。しかし、それだけでは犯罪を防ぐことは不可能、つまり、食品防御は不充分なのです。本気で組織の食品防御を破ろうとする人は「どんな対策を取っていたところで、その対策が無意味になるような手段で、意図的な汚染を起こす」のです。

このような話をすれば「さらにそれらを防ぐための対策を考える」と言われるかもしれませんが、現状の対策が無意味になるような犯罪方法、つまり「現状では想定外の犯罪方法を、延々と想定し続ける」というものは苦痛でしかありませんし、無意味にも思えてきます。

スライド2

さて、このような管理の限界を多くの方が感じているであろう状況で、一手に解決するための手段はないのでしょうか?
あるとすれば「監視」というものだと、筆者は考えています。

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ビミョーに意味深なところで切ってしまいましたが。。。。
今回はこの辺りで!


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