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快適さを求め椅子キー”MooseChair”を作った話

本記事は自作キーボードアドベントカレンダー#1の25日目の記事です。

昨日、24日の記事はc7sさん (@foostan) / TwitterHelixでENDGAMEする - log.fstn (hateblo.jp)でした。
レンダリングが綺麗すぎて、すでに完成したのかと見間違えますね。
焦点ボケの感じもリアルさを一層引き立てています。

★本記事のポイントだよ!
椅子キー”MooseChair”の主なポイントをおおよそ開発時系列で並べました。過去ツイートを引用して補足しながら書いています。長くなったので、それぞれ気になった項目だけでも眺めていただければ幸いです。

モチベーション「在宅でも快適に作業したい!」

コロナもあって在宅勤務がメインとなり、出社は月に数回あるか否かという生活を送っています。働き方の変化にともないハマった自作キーボードも、歴としては1年弱ぐらいでしょうか。ErgoDash、自設計キーボードのMooseDashと分割キーボードを愛用していました。とても快適です。
しかし、人間の欲は尽きることなく、、、

椅子にふんぞり返ってキーボードカタカタしてえなぁー!

リクライニングを倒すとキーボードまで遠いんですよね…。どうせ在宅用で持ち運びしないし「椅子キーを作ろう!」と思い立ちました。

コンセプトと要求要件定義 

要求「~したい!」に対し、要件「~で実現」を書きだします。

・椅子に左右分割キーボードをのっけたい!
   →アームレストにキーボードを取り付け実現。

・配線の取り回しを楽にしたい!
   →無線化で実現。

・マウス操作もキーボード内で完結させたい!
  →トラックボール付きで実現。

・最上段や最下段へのアクセスも改善したい
  →3Dプリント筐体でエルゴノミクス形状で実現。

簡単なイラストを描いたことでイメージも膨らみました。

土台部分と上物を分けることで、有線接続の今あるキーボードも載せることができるよう考えました。それぞれの要素について、一つずつ独立して取り組むことができます。最終完成形をイメージして、いまあるキーボードを改良しながら進めていけば創作意欲も常に満たされつつ長いこと開発を楽しめますね!

椅子キー⇒アームレストに取り付け

椅子にマジックテープで取り付けるアームレストを利用します。
これに電動ドリルで穴をあけ、M5サイズネジで固定を考えます。
使用したアームレスト↓

まずは当時使っていた有線キーボードで試してみました。

良い感じです。この時点で「いける!いけるぞ!」と確信しています。
やはり左右を繋ぐTRRSケーブルが前をふさぎ、立ち上がるたびにキーボードをどけなくてはならいため無線化欲が高まりました。

リクライニングを倒すと自然と机との距離が離れるのは先ほども述べた通り。マウスも同様にアクセスもしづらいので、トラックボールを一体化して使いたい欲も高まりました。

34mmトラックボール⇒ダイソーの300円マウスを魔改造!

もともと1Uサイズトラックボールを使っていました。過去にも記事にしてましたね。

1Uサイズのトラックボールもとっても良いのですが、やはり細かいところの操作性の面でもうすこし大きなトラックボールを使ってみたい。持ち運ばない椅子キーならば筐体部分が大きくともよいので、トラックボールを大きくできます。試行錯誤の過程はアドベントカレンダー#3の6日に記事として公開しました!

過去記事のタイトルにもあるように、100均の300円マウスからセンサ部分を抜き取り流用することで比較的簡単に?実現しました。

良い感じです。あとは3Dモデル設計時に筐体を作れば完璧です。

左右独立の無線化⇒椅子キーは無線がいいぞ!

有線をアームレストに置いてみてやはり無線化が必要だと再認識しました。
無線化についてはせきごんさんの無線化キットを購入し使用させてもらっています(BLE Mico Pro、単四電池セット、BMPのファームウェアなど)。

今回、キーレイアウトはErgoDash、MooseDashと同様の左右35キーずつです。椅子キーも同じレイアウトにする予定のため、まずはMooseDashの基板で操作確認します。トラックボール部分に関しても1Uトラックボールが付いているのでこれも確認できますね。

トラックボールを動かすにはpaw3204.cを動かす必要がある=ファームウェアを修正が必要と過去の有線キーボード改良時にわかっていました。

BMPのファームウェア構築で詰まり、はじめてDiscodeに参加しました。
いろいろと教えていただきファームウェアの更新も無事完了。

無線でトラックボールを動かすために、変換基板にもう一本単四電池を用意してつなげました。GNDもちゃんとつなげます。
これで無線化&トラックボールの動作確認ができました。

ここで、”とりあえずの筐体”を用意して操作感を確かめます。

チープでもいいのです、開発用ですから。

過去記事ではここもチラ見せしていましたね。

3Dプリンタ筐体⇒3Dモデル設計し印刷依頼

いよいよ筐体設計です!3Dモデルを作成、3Dプリンタで出力しキーボードを作られている方も多くいます。おかゆさんの記事を参考にさせていただきました。ソフトのインストールから初期設定、キースイッチの基本的なサイズ感などとてもわかりやすく、この記事を読めば誰でも3Dモデル設計自作キーボードができます。

人生初の3Dモデル作成ですが、ソフトの操作は1週間ほどでおおかた慣れます。初めはとても無骨なモデルですね。

自設計基板キーボードも上に乗せられるようにネジ穴や形状は合うようにしました。アクリルボトムプレートの印刷依頼時に作った.svgファイルをインポートすれば、寸法どおりになるよう一から作る工程を省けます。

いいぞ!そうだ!その心意気だ!

トラックボール部分は完全に勘ですね…。球が34mmなので確か内径36mm、
厚さを3mmに設定。だいたいこれくらい空いてればボールが入るかな。支持球は3つでこれぐらいかなぁという感覚で進めます。内径が34mm以上ならば理論上入りはするので、困ったら削ればいいかーぐらいに考えました。

まだ操作もよくわからず、ちと面倒だった部分です。あらかじめ決めたチルト角、ロール角で回転させたときにアスペクト比が狂わないよう入力画像側のサイズを調整してインポートしてます。きっともっとうまいやり方があるはず…まぁどの手段でもとりあえずできればOKです。

キースイッチの穴が空くと一気にそれっぽくなりますね。

おお、良い感じですね。それっぽいです。これです、私が欲しいのキーボードは。でも、やっぱりキースイッチの取り付け向きに傾きを付けたいなぁと欲が出て傾きありVerも設計しました。もともと上物は交換できるようなコンセプトなので、ストレートタイプとカーブタイプとして両方とも印刷依頼することにします。

最下段は外側3キーは薬指、小指で打つ想定なので奥側に向いています。
一方で内側4キーは親指で打つ想定なので手前側を向いています。最下段の工夫はかなり生きていて、日々使っていてもたびたび気づくほどです。
全体はお椀タイプ…でも良かったのですが、ロール方向には傾きが付いていないです。チューブの一部を切り取ったイメージになっています。

ひとまず筐体設計が完成です。土台、ストレートタイプ、カーブタイプの3つが左右あり合計6パーツです。

どこに印刷を頼むかですが、Twitter上でWENEXTを教えていただきました。
国内はサポート日本語だが値段がお高め、海外の方がお安いとのことです。
英語読む力は(翻訳サイトが)ありますので海外発注に決めました。
本当に教えていただき感謝の念しかないです。

素材や製造方式についてもそれなりに調べます。

素材、製造方式を決め発注しましたが、作成した3Dモデルに印刷できないゴミ設計(薄すぎる面や溝)が多くリテイクを何回も繰り返してしまいました。。。Skypeで都度やりとりさせていただき何とかクリア、担当者さん迷惑かけてごめん、ありがとう。このとき有休とっておいて良かった。。。

あたふたした部分もありましたが、これで無事印刷依頼完了です。

筐体を待っている間にパーツを取り揃えます。

キースイッチ:Gazzew Boba U4 サイレントタクタイル

タクタイルの打ち心地が好きです。リモート会議時に打鍵音が気になるため、在宅環境ですが静音スイッチを選びました。それまで使っていたKailhのBox Brownよりも打ち心地はかなりしっかりしています。”コシのある打鍵感”という表現が一番しっくりきます。讃岐うどんです。色的にも。

キーキャップ:Tai-Hao Avatar Out of Our Mind Cubic

めっっっっっっっちゃ好き!最高!マーブル色良いですよね。汎用キーというかイラストが描かれたようなキーはないです。その代わり無刻印のキーが多いのでレイヤーキーなどに使っています。

トラックボール:ぺリックス PERIPRO-303 GN 34 mm

支持球:uxcell 2.5mmZrO2酸化ジルコニウムボール

ここは王道なのでしょうか。調べるとこれらがメインで出てきたので購入しました。キーキャップに合わせてトラックボールも緑!

筐体到着!いよいよ組み立てです!

表面処理とパーツ取り付け

感覚で設計した部分、微妙に入れづらくトラックボールが傷つきそうだったので金属のやすりでけずり広げました。

支持球部分もせり出しすぎなので穴を拡張しました。支持球は木工用ボンドで軽くくっつけます。いざとなればピンセットでぐりっと外せますが、普段使いではぽろんと取れることもなく良いです。

つるっつるな表面までは求めていないです。表面の凹凸は指先で感じますが引っ掛かりは少ない程度に3Dプリント用でやすり掛け。手汗を吸いやすいと聞いたので蜜蝋でコーティングしました。

溝があるのでぱちぱちとはめていきます。最上段は少し横から力がかかると外れるのでもう少しキツメでも良かったかな。でも狭すぎて入らず、やすりでサイズ調整するほうが厳しいのでこれで良かったかなと考えてます。ここまでは真っ白って感じでかわいいです。

この組み合わせでは静音リングは意味なさそうです。手元に余りがあるのでつけておきました。

本体とキーキャップの色味合わなかったら、本体の色を着色するかなぁと思いましたが、良い感じなのでこれでいきます。かっこいい!!!

めっちゃ空中配線

回路図を見ながらダイオードの足を使い配線していきます。スイッチ用PCBソケットに配線しているので、スイッチは一応交換可能です。ただ固定されているわけではないので取るときにはそっとです。

縦ラインはポリウレタン銅線の方が楽でした。短いバラ線を何本も使うより、長いポリウレタン銅線で導通させたい場所だけ被覆を向いた方が楽。

ここはだいぶ強引ですね。導通すればええんやろの気持ち大切です。

その他パーツの本体取り付け

100均で買ったホットボンドが大活躍です。3Dプリントの素材を温度に比較的強い素材を選んだかいがありました。溶けたり歪んだりはゼロです。

見るも無残な姿になっていますが、センサ部分です。大丈夫、しっかりと活躍してくれています。

アームレストに固定して完成!!!

位置をうまく合わせてアームレストに電動ドリルで穴をあけます。めちゃデカボトムプレートといった感じです。これでようやく完成です!
ここはしっかり画像を載せておきます。

椅子キー”MooseChair”
コックピットのような感じ!

良い感じです。思い描いていた”椅子にふんぞり返ってキーボードカタカタしてえなぁー!”が実現できました!

ショートムービも作っちゃいました。

蛇足:後日の改良など(こまかーいところ)

ひとまず完成しましたが、後に改善した箇所も多々あります。
※かなり細かいポイントが続きます。

フラットケーブルでスパゲッティ配線の解消

バラ線を使っていたのでスパゲッティ状態です。フラットケーブルを使ってスパゲッティを解消し、脱着もできるようにしました。

1mmピッチのフラットケーブルコネクタのはんだ付けは地獄でした。。。絶対外れるなよ!と念を込めてホットボンドでごりごりに固めておきます。

トラックボールのカタツキ解消のため支持球を増設

トラックボール操作感が向上しました。この改良以降は不快感を感じたことないです。かなーり寸法がシビアです。

トラックボールの操作感をとぅるんとぅるんに

トラックボール界隈ではボナンザが王道のようです。数滴たらして柔らかい布でまんべんなく塗布。30分放置して硬化させたのち、同じく柔らかい布でこすってあげます。この時点でとぅるとぅるで手から零れ落ちそうになります。支持球側もゴミやほこりがないよう掃除もしてあげればとぅるんとぅるんなトラックボールになります。

中身ぽろり防止のためのインナープレート

もろもろ調整のためアートレストから外したときにも中身が零れ落ちません。100均のクリアファイルを切って使ってます。

同じ感じでセンサ部分の目隠しも。お化粧です。

トラックボール操作のソフトウェア設定

こまかな数値やら気になったときに調整は入れていますが、おおよそこんな感じです。モニターは3画面横に並べているので、親指の可動域が大きい方向を左右にしています。トラックボールでのスクロール操作も心地よいです。

やっちまってる設計ミス

パーツ取り付けのスペースを考えられていない箇所です。はんだごての先はいるわけないです。ほかにもねじ止めしようにもドライバ入れる隙間がない箇所だったり、取り付けスペースではいろいろやらかしてます。

PCB基板キーボードを乗せるコンセプト

こちらもしっかり実現できます。ボトムプレートが土台筐体といった感じです。PCB基板キーボードでも34mmトラックボールを使えるように、コネクタ使って脱着を~配線を~とも考えましたが、基本的にこの使い方はしなさそうなのでそれはやめました。

トラックボール操作とキーボード操作の手の位置の違い

ほとんど手は動きません。メインで使うキーがそれぞれ違う領域にあるので中心がずれるイメージでしょうか。トラックボール一体型キーボードにおいて、トラックボールをどこに配置するかは難しい問題です。左奥派、左手前派、中央手前派に大きく分かれるでしょうか。これは左手前派,under the キーボード流です。

最後に

コンセプトを思いついたところから完成までをまとめました。制作期間は21年8月~11月。約3か月間ありましたが、どの時期をとってもワクワクしながら作ってこれました。アドベントカレンダーの各記事を見ると皆さんそれぞれが持つ熱量や想いが伝わってきます。本記事でも自分のワクワク感が伝われば嬉しい限りです。

メリークリスマス!
そして皆様、良いお年を!来年も良き自作キーボードライフを!!!

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この記事は自設計キーボードのMooseChairで書きました。

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