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ミスチル「miss you」は優しい響きに騙されて、桜井和寿に何度も殴られた後、最後に世界1優しい「おはよう」を聴くためのDVアルバム


最近、ミスチルへの愛が平熱になっていて、アルバムが出たけど、サブスクで配信されるまでは待てるという状態でした。
それまで評判はなんとなく聞いていて、賛否両論って感じで、期待値もそこまで高くありませんでした。


今回のアルバムは4人だけで集まりスタジオで作られた。New Album『miss you』はMr.Children史上、最も「優しい驚き」に満ちている。

最も「優しい響き」に満ちているという謳い文句の通り、reflectionのような派手さはなく、ヒカリノアトリエ的な曲の詰まったアルバムなのかなと思っていました。街の外れにある白髪・白髭のおじいさんがやってる喫茶店くらい温かく、どこか包み込んでくれるアルバムを想像していました。
結論からいうと、全く逆でした。むしろ、優しい響きに釣られて会場に行ったら、桜井さんに何度も殴られるようなアルバムでした。

1.miss you


まず一曲目にあるmiss youを聞いた瞬間、そんな生ぬるいアルバムではないなと思い知らされました。
サウンド自体は優しい雰囲気を纏いつつ、歌詞は

誰に聴いてほしくって
こんな歌 歌ってる?
それが僕らしくて嫌いです

「miss you」Mr.Children

!?
世間的には、国民的ロックバンド(ポップバンド?)のミスチル桜井和寿が、悲壮感漂う歌に、僕らしくて嫌いですと、自己嫌悪丸出しの歌詞を載せて、しかもアルバムの一曲目にそれを持ってきている。
これは、騙されたと思いました。生優しいアルバムなんかじゃなく、下手したら、何度も右頬を殴られるアルバムだぞと、そう思わされました。
しかも、miss youというタイトルから失恋ソングかと思っていたら、その内容は、おそらく桜井さんの心情、しかも自己嫌悪剥き出しのものをそのまま歌詞にしているっぽい?
これは心に来る。

2.fifty's map〜大人の地図


2曲目の「fifty's map〜大人の地図」は、もともとYouTube で聴いていたので、わかっていましたが、これはなんともミスチルらしいサウンドですね。しかし、歌詞はやはり50代になったからこそ、抱える悩みなどが吐露されている感じ?20代の私には掴みきれないものはありますが、
「誰にだって一人になれたらと願う」から始まり、

求められるクオリティ
今日も必死で答えるだけ
(中略)
どこにも逃げれない
そう過去にも未来にも

「fifty's map〜大人の地図」Mr.Children

とくる。どこか閉塞感があるような、常にトップで競争してきたかつ、以前よりも良いものを求められるアーティストの苦しみみたいなものが垣間見れる。

3.青いリンゴ


「青いリンゴ」では、

失ってたものを悔やんでばかりいたって意味がないぜと歌ってた僕は今もいる

「青いリンゴ」Mr.Children

と、後ろ向きながらも前向きな歌詞で背中を押してくれる。
このアルバムでは珍しい応援歌的な存在。このアルバムでは飴と鞭なら、飴の役割。

4.Are you sleeping without me


「Are you sleeping without me」では、久々の失恋ソングが歌われている(最近のアルバムでも、本当はあったらごめんなさい。)
失恋ソングだから、当然かもしれないけど、曲全体に暗い雰囲気が漂っている。

5.Lost


そして、本当に心臓を掴まれた気がした曲は「Lost」である!本当は、miss youとこの曲とおはようについての感想を書きたくて、これを書いているぐらいである。

今までのミスチルは、しんどいことがあってもその中にも良いことがある、暗闇の中から光を見つける系の曲が多い。そして、私はそこが好きなのだが、この曲は真逆なのだ!

放った光さえ歪んで闇に消えていった
真っ直ぐな思いだって捻じ曲がって伝わっていった
やり直せもしないで
また今日も立ち尽くしている

「Lost」Mr.Children

終わりなき旅では、「嫌なことばかりではないさ」と歌い、
足音では「時には灯りのない孤独な夜がきたって、この足音を聞いてる誰かがきっといる」と歌っていたミスチルが、この歌詞を歌うからこそ、心臓を掴まれたような気がしました。
今まで言っていたのはなんだったの・・・?

6.アート=神の見えざる手


続いての「アート=神の見えざる手」は、好きな人には申し訳ないですが、私はあまり好きではないです。申し訳ないです。ただ、この歌で、あえて鋭い言葉を歌詞に載せているのは、

望まれたことに応えたいだけ
刺激が足りないって みんな言うから

「アート=神の見えざる手」

ってことだと思いました。はい。

雨の日のパレードは、文字通り飴でした。これがあるから、やっぱり次の曲を聴いちゃうんだよな。

7.Party is over


「Party is over」は普通に失恋ソングだと思ってたんですけど、これ燃え尽き症候群的な歌なのかもしれないと思いました。
今回のアルバムは全体を通して、そんな雰囲気を感じました。miss youも失恋ソングってわけではなさそうだし。この感じが多分、皆さんがおっしゃられている、国民的バンド、みんなが求めるミスチルを辞めたと言われる理由の一つでもあるのかなと思います。

8.We have no time


「We have no time」はタイトルからもそんな雰囲気がぷんぷんしますね。これは前作から桜井さんがよく口にする、「これで最後のアルバム」と言う言葉と関係あるのかもしれません。miss youでは、「20歳前後 想像してたよりも20年も長生きしちまった」と謳い、50代の地図を模索するのは、私たちにはもう時間がないという気持ちがあるからかもしれないですね。

9.ケモノミチ


「ケモノミチ」はyoutubeに公開されてからずっと聴いている、個人的に好きな曲です。

「いつまでも待つよ」と 言ってたっけ あの人
今何してるかな? そんなことボンヤリ

誰にSOSを送ろう 匿名で書いた鈍い痛みを
眠れず独り目論む 「仕返し」だけが希望

ケモノミチ

かなり直接的で、攻撃的な表現でグサグサっときます。
これまた、桜井さんから心臓を握られているような曲です。
自分の気持ちにも同じような気持ちがあり共感できる一方、自分に対して行っているのではないかと、どこか銃口を向けられているような気持ちになるそんな曲です。

10.黄昏と積み木


「黄昏と積み木」ここから3曲は繋がっているような気もしますし、ここからは飴の曲が続いていきますね。
私は音楽理論などには特に詳しくないのでわからないのですが、この曲はどこか「Q」のアルバムの雰囲気を感じました。「Q」のアルバムに入っていてもおかしくはないのかなと言う感じ?伝わりますかね

11.deja-vu


deja-vuはこれまでの雰囲気とは違い、切なさと明るさが同居した、ミスチルらしさがあるような、ないような不思議な曲に思えました。

誰の中にブレーキと そしてアクセルがあるから
僕ら前へ踏み込んでいかなくちゃな

deja-vu

はとても桜井さんらしい歌詞だなと思った一方、

ああ 僕なんかを見つけてくれてありがとう

deja-vu

のところは、やっぱりこのアルバムは全体的に自己否定の強いアルバムだなと思ったりしました。


12.おはよう


そして、最後の「おはよう」!
これを聞けば、今までの闇ミスチルがすべて優しさで包み込まれる。今まで殴られていたのも許してしまう。そんな曲でした。
もう最初の桜井さんの「おはよう おはよう おはよう おはよう」を聴いてしまうと、こんなん好きになってしまうじゃん、今までのこと全部許して好きになっちゃうじゃんと言わんばかりの、色気が出ています。

そして

駅前には自転車を置ける場所があまりないから
歩いて駅まで向かおう その方が長く話せる

「おはよう」

この歌詞、こういうことをできる人と一緒になりたいと常々思っていて、今回それを桜井さんが歌っていて、桜井さんって、俺なのか?と思わされました。


「miss you」は、全体的にミスチルらしさを感じない曲が多い反面、桜井さんの内面が強くでていて、それもかなり直接的な表現で書かれている感じがするアルバムでした。

まとめ

「miss you」の評判でよくみたのは、ミスチルは「シーンの最前線から降りた」みたいなことをよくみました。確かに、このアルバムを最初に通して聴いた時は、reflectionのような派手さはなく、むしろ桜井さんのソロアルバムのような雰囲気まで感じて、私もそのような意見に同意しましたが、何度か聴くうちにそんな気はしなくなりました。

このアルバムは「深海」や「Q」と言ったアルバムと同じように、かなりチャレンジングなアルバムなのではないのでしょうか(賛否両論なのもそのせい?)。みんなに届けると言うよりはむしろ、自分たちの内側を今えぐって、さてどうする?という感じなのではないしょうか。だからこそ、ホールツアーを、しかもアルバム発売前に、行ったのではないでしょうか。

それだけでなく、「We have no time」の中でもそう言う気持ちがあるように思えたし、「おはよう」を最後に持ってきたのもそのような意図があるような(気がします)。この後に、しれっとreflectionみたいなド派手なアルバムを出したりしそう?

まあ、今後の予想はおいておいて、今回のアルバムは個人的にはかなり刺さりました。reflection以降のアルバムで一番好きかもしれない。

アルバム全体を通して何度も殴られているのに、なぜか「おはよう」を聴くと許せてしまうそんなDVアルバムだと思いました。

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