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シチリアの旅⑧最終日 ~ マルサラ マルコ・デ・バルトリ編 ~


シチリア各地を色々と旅しているのですが、僕の場合は行きたい街があって、その街のスポットを周るのではなく、まず初めに行きたい場所・会いたい人があって、ついでに街を観光することが多いです。

今回はマルサラとはいうものの、中心地とはだいぶ離れた場所にあるので街の観光はできません。

ピンポイントで目的地に向かうので、パレルモからバスで3時間かけて行き、3時間かけて戻ってきます。
そしてすぐに空港に向かう弾丸旅行です。
パレルモでもう1日ゆっくりしてもよかったのですが、どうしても行きたかった場所があります。

マルサラ到着。バス停の前の石碑
長い一本道を歩く
赤土の畑
乾いた枝と乾いたカタツムリ
空き家と瓦礫
メログラーノ(ザクロ)

目的地に向かう途中に感じたのはものすごい「アフリカ感」。
アフリカに行ったことがないので、勝手なイメージですが、土の色や石の色、派手な植物たち、砂を含んだ強い風がそう感じさせるのでしょう。
実際マルサラは、シチリアで一番アフリカ大陸に近い街なので影響があるのは間違いないと思います。

自生する野生のフェンネルの花
ワイン畑が見えてきました。

この日どうしても行きたかった場所。
それがカンティーナ「マルコ・デ・バルトリ」です。

到着
猫がお出迎え。人懐っこく施設の中まで付いてくる。
ヴェッキオ・サンペーリの樽

このカンティーナの初代のマルコさんはもう亡くなってしまったのですが、今は息子さんたちが後を引き継いでいます。
しかしながらこのマルコさんが作りだした、「ヴェッキオ・サンペーリ」というのがすごいワインで、ものすごく簡単に言うと「酒精強化していないマルサラワイン」なのであります。
どういうことかと言うと、
いわゆる酒精強化というのは、酒精強化ワイン独特の風味を出す為に、「製造過程でアルコールを添加する」必要があり、マルサラワインというものは規定上、酒精強化しているものしかそう呼びません。
なので、実際に「ヴェッキオ・サンペーリ」はマルサラワインではないのですが、この土地に昔から伝わる方法を使い、有機農法と長期の酸化熟成によって、マルサラワインにも勝る深い味わいのワインを作り上げたのです。
なので今では世界に認められ、真のマルサラワインはヴェッキオ・サンペーリと言われるほどになっております。

ワインのタイプによって、保管場所、温度、湿度、樽の形が変わります。

ブドウ畑の断層


試飲は五種類のワイン。
マルサラではなくパンテレッリア島で作られたブドウのワインも含みます。
手前の岩は左がパンテレッリアの石質。右がマルサラの石質。
僕も長年扱ってきたワイン達ですが、改めてこの地で飲み比べてみると、ブドウ品種の違いや熟成感、土質の違いがはっきり分かってくる。

独特なお庭


これでシチリアの旅はおしまいです。
notoに書ききれない思い出も沢山ありますが、本当にシチリアが大好きになりました。
今回の旅の目的は、「どのような土地から、どのような食材が生まれ、どのような文化が、どのような商品をつくりだしたのか」という部分を体感することでした。
正直このシチリア島に一生のうちで、もう一度来ることがあるのかないのか分かりません。人生の時間も、お金もすべては限られています。
しかしながらこのシチリアの旅は自分の人生の一つの宝になったことは間違いありません。
僕の中で今後シチリア料理というものを見る目が変わります。
一つのレシピを与えられたその時に、そのレシピには書いていない情景が頭に浮かびます。それが旅の報酬であり、一番の隠し味となります。
と、言葉で言ったものの、それを表現として形にすることも難しいのは確かです。
まだまだ料理人としての仕事の旅も、人生の旅も長そうです。


次の記事のタイトルは決まっています。
「イタリアに来て1年」です。
出来るようになったこと
出来なかったこと
次の1年
について書こうと思います。

ではまた。


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