日大アメフト廃部。ラクロス界も他人事ではないよねって話
前回のnoteで、長くなったので後でまたと言ってからはや一年が経ちました。毎年年末にかけて執筆欲が出てきて、パッと書いて、パッと散る。桜みたいな男ですね私は。好きな花はウメ 花言葉は「高潔」「忠実」「忍耐」。すみません。怠け者なだけです。ちゃんとします、以下真面目になります。
日大アメフト部の廃部が決定しました。私は現在も学生スポーツに携わっている身でもあり、曲がりなりにもスポーツで飯を食っているので思う所は色々あります。
特にラクロス界の人間として、本件は対岸の火事ではないし、むしろラクロス界の方が危ないよねって話です。
話題が話題なのと、学生スポーツは統一の制度が整っていないのに始まり、個々人の思想・信念がバラバラなので話が取り散らかりがちです。ので、今回は以下3本だてでまとめたいと思います。
・大学部活動は誰が責任を負うのか−日大反則タックル問題ですら結局誰も責任を負えなかった
・学生への処罰−処罰の大小は、大人の力関係と名誉による 立教大学 野球部とラクロス部から見る
・日本ラクロス−実際学生ラクロスの方が危うさはあるよね
大学部活動は誰も責任を負えない−日大反則タックル問題は結局誰も責任を負えなかった
誰が処罰し、誰が責任を負うのか
今回の日大アメフト部廃部に関して、個人的には残してあげて欲しいですし、誤りを認め再スタートできる事もスポーツの良さだと思います。ただどこまで行っても私学の大学の運営判断なので難しい問題だとも思います。
今の争点は詰まる所責任の所在とその取り方ですが、大学部活動は構造上責任の所在がはっきりしません。そもそもほとんどの大学部活動が課外活動であって、あくまで大学の直轄団体でなく任意団体です。構造的には大学が責任を負う必要はないと言えばないです。さらに言えば監督・コーチの人事権は大概大学側にないですし、選手、OB会、部活関係者によって運営・自治されているのが実情です。
参考までに我が母校、中央大学ではちゃんと規約がありまして、部活動の停止、廃部などは100名からなる会員の投票によって決まります。学長も投票権はありますが、100票の内の1票にすぎません。大学側が部活動のコントロールを実質的にできないのが現状です。どの大学もそうですが、基本的には学生が主体性を持って自治・運営をしていくのが主たる建て付けです。
なので、大学部活動で問題が起きると、どこの誰がどのくらい処罰をうけるのかあやふやになり場当たり的な対応になってしまうというのが私の認識です。
過去事故等を受け他の大学でも部活動の廃部はありますが、基本的には自主的に解散届を出すパターンがほとんどだと思います。
それで言うと日大は一歩進んでいた
基本的構造として大学のガバナンスが効きづらい部活動ですが、日大は他に先駆けて、日本大学競技部の改革を行いました。詳しい規約は見れないのですが より学長のガバナンスが聞く“競技スポーツ部” を設立しました。今回の廃部を決定したのも“競技スポーツ運営委員会”です。
みなさんも記憶に新しいと思いますが、日大反則タックル問題を受け、改革、設立されました。おそらく日本の大学スポーツの中では一番新しく作られた組織です。本来最もカバナンスの効いた組織であると思いますが、そうでもなかった様で今回の廃部騒動につながっていますよね。
さて、組織的にはちゃんと作られているのにあれば、処罰も適格であるはずなのですがそうでもなさそうです。これは持論ですが、現行の大学組織で体系だった処罰は下せない思っています。その証拠が、日大反則タックル事件の“後”です。
日大反則タックル問題でだれも責任を負えなかった。
今回の廃部に関して、発端と言えば日大タックル問題が挙げられる事が多いです。詳細は端折りますが、2018年に始まったこの事故の顛末を知っている人はどのくらいいるでしょうか?
問題の処罰として、当時日大アメフト部の 内田監督と井上コーチは傷害罪で刑事告訴され、関東学生アメリカンフットボール連盟(以下学生アメフト連盟)は2人を除名(永久追放)、日大は2人を懲戒解雇しています。日大も、学生アメフト連盟も独自に第三者委員会を立ち上げ、その報告を元に処罰を決定しています。
が、2021年に2人とも大学側と和解して監督は懲戒解雇ではなく退職、コーチの方は日大職員として復帰しています。どゆこと!?懲戒解雇したのに、取りやめてまた雇い直したの??
もしかしたら学生も読んでいるかもなので説明すると、懲戒解雇とは組織で働いている人間への処罰としては最も重いもので、退職金も出ないですし、場合によっては失業保険も出ません。監督に至っては、もらっていた役員報酬(給料)を返納する様求められていました。
職業人として最大限の処罰与える決定をした後、監督、コーチ2人から裁判を起こされて処罰は取り消されました。形としては和解ですが、日大からすれば判断を間違えましたすみません状態です。
さてあれだけ世間は騒ぎ悪の権化の象徴だった、お二方へ大学からの処罰はなくなりました。なぜか?警察が立件できなかったからです。詳しくは下記の記事を読んでもらいたいのですが、警視庁が200人近い関係者に裏どり調査を取り、1ヶ月以上捜査を行った結果、タックル事件において2人から直接的な指示はなかったと結論づけました。
刑事事件として立件されず、大学も罰を取りやめた、問題への処罰はほぼ履行されませんでした。唯一いまだに解かれていないのが関東学生アメリカンフットボール連盟の除名処分です。
正しく裁ける団体は存在するのか?
先に断ると、私はアメフトに関しては門外漢ですし業界の事情は全く知りません。なにか他の理由があって判断されているのかもしれませんが、外にでている情報で判断し外の人間からの1意見として認識してもらえればと思います。
学生アメフト連盟はいまだに井上コーチの除名処分を解いていません。これはミステイクだと思います。背景として学生アメフト連盟は、第三者委員会を設置し除名処分を決定しましたが、該当者への聞き取り時間が2時間と短く警察捜査よりも有力な情報を得ていたとも思えません。警察とマンパワーも違うしね。
検察は不起訴処分として処理し、司法の判断を受けて大学側は考えを変えましたが、学生連盟も再考するべきではないかなと思います。
(井上コーチ側から、除名取り消しの裁判がありましたが“法律上の争訟に当たらないから、不適法なものとして却下を免れない” と却下されています。司法で判断できないだけで除名処分が正しかったかどうかはまた別だと認識しています。)
今回の違法薬物事件もそうですが、警察を超える権限を持って捜査できる団体はないですし、調査が体系化されていない大学、スポーツ団体が刑事事件の判断を下すのってそもそも無理筋じゃないかと思います。
ほとんどの場合、裁く側と裁かれる側に関係者が存在し、利害関係もあるため正当に裁けないですし。実際に現場では、処罰の大小による差別は出ているし、不公平な状態です。これは立教大学を例に次項で詳しく書きます。
誰が処罰できるのか?
話をまとめます。今の大学部活動の不祥事において、的確に情報を集め、捜査し、判断できる機関は警察以外存在しないです。これは言い切っていいと思います。
だから警察の出してきた情報によって大学の対応も二転三転するし、学長からすれば、自らのガバナンスの効かない組織団体に対してどこまで責任を負うのかは答えがありません。それこそ今の様なトカゲの尻尾きりになるだけです。今後も全国のどこかで学生による、事件・事故は必ず起きますし枠組みが変わらないのであれば、同じ事が繰り返されるのだと思います。
大学部活動への処罰―処罰の大小は、大人の力関係と名誉による。 立教野球部と立教ラクロスから見る
大前提として、問題をおこしたから処罰を受ける。この事自体を否定するつもりはないです。ただ前述の通り、判断構造が出来上がっていないので場当たり的に問題が処理されます。結果何が起きているかというと、処罰のばらつきと私権化です。
学生の起こした事ですし話を掘り返すなよという話ですが、今年立教大学男子ラクロス部は、学内問題で大学側から4ヶ月以上の部活動停止を受けリーグ戦への参加を実質禁止されました。(練習すら許されませんでした。)彼らは彼らの道理に従ってそれを受け入れ、私からは反省していた様に見えました。それが理由かは定かではないですが、今年彼らは2部降格が決定しました。
※私はビジネス上も個人的にも立教大学男子ラクロス部と繋がりがあります。バイアスは当然ありますが、彼らにはまた立ち上がって欲しいと思います。君たちの先輩たちはそこから這い上がりました。
敗者には、敗北を胸に再度チャレンジできるという特権があります。また来年、フィールドの上で正々堂々闘えるのであれば嬉しいです。大変だったと思いますが、お疲れ様と言葉を掛けたいです。
時を同じくして立教野球部でも不祥事と未成年の喫煙問題が出ました。こちらは実際に被害者もでてるし、平たく言えば傷害事件ですよね。
喫煙問題は目くじら立てなくてもと思いますが、処罰の対象が部の広範囲だったのは事実です。大学側も会見してるしね。
さて立教野球部への処罰は、“監督と部長が当面の間、公式戦への参加を自粛” 4年生が東京六大学野球のリーグ戦の参加自粛(数試合後に解除)
これを見た時はマジかよ!?て思いましたね。正直。
どちらの部活も処罰は致し方ないかなと思いますが、最終的な被害・被害者が出てない部活が当面活動停止で、かたや傷害事件を起こした部活は事が公になるまで試合出場OKてどんな判断軸やねんて話です。
というか判断軸は元々ありません。この手の処罰の不公平感はいつの時代もあって、結局は大学内の大人の力関係とその部活の名誉があるかないかで決まっちゃいます。
大学のスポーツの花形である六大学野球に参加する部活とラクロス部じゃ部関係者の立場も違います。残念ながら。
僕が立教大学のラクロス部員なら、長嶋茂雄がどないなもんじゃい!ちゃんと説明せぇい!て学生課にカチコンでます。
まぁ実際のところ、『学費もちゃんと納めてる学生と、大学の顔である野球部との処罰に差は出るのは当然なのでしょうか?すなわちそれは入学した時から学生ごとに色をつけていると言う事なのでしょうか?』
くらいは聞いてもいいと思います。 答えれる大学職員はいないとおもいますけどね。それはそれとして。
大学からの処罰は妥当性に欠ける
私も10年くらい大学スポーツに携わる中でまぁまぁな頻度で部活動生の不祥事は耳にします。その都度大学の優先度合いによって処罰の大小はバラバラですし大概、身内には甘いなと感じるところです。ちなみに見聞きする処罰のほとんどが連帯責任ではなく。当該部員だけへの処罰です。
大学で教授のパワハラ・セクハラは結構聞きますが、学部長が辞任する事も学長が辞任する事もほぼ無いですよね。私立大学の意思決定なんてご都合主義と体制の方が大事に見えます。端的に言えば日本の大学組織なんて事なかれ主義の最たるものだと思いますし、ほとんどの職員にとって個々の部活動なんて関係ないですしね。正直まともな判断が下せるとは、思っていません。
注:個人的に関わりのある職員の皆様は本当に素晴らしい方が多く、頭が上がりません。ご容赦ください。
大学には大学のルールがあるし、根回しは大事
なにが言いたいかと言えば、ちゃんと大学内でロビー活動できなければ部活動への処罰は一気に活動停止無いしは廃部に向かうし、学生側としては反撃する術をほとんど持っていないという事です。
日本ラクロスー実際学生ラクロスの方が危うさはあるよね
やっとラクロス界に話を持っていきます。いままでの話を受けて今回の件をラクロス部に置き換えてみると、もっと簡単に廃部の判断は下されていると思います。
学生主体の素晴らしさと、自己防衛できるかは別
日本にラクロスがきて30年ちょっと、すべての大学で歴史がもっとも浅い部活動のひとつです。部活動でなく、同好会・サークルである団体も多いと思います。そもそも団体の歴史、実績関係なく大学の対応は変わらない事が当たり前であって欲しいですが、現実はそうでは無いです。学生ラクロスの本文である、学生主体での運営は本当に素晴らしい事で大事な精神性だと思いますが、こと大学のしきたりの中ではめっぽう弱いのも事実です。
君たちに大人はついていますか?
今一度自分たちのチームに大人っていますか?問題が起きた時に外部と、大学と適切に対話ができる人間はいるでしょうか?もしいないのであれば、状況は日大アメフト部より危うさ・脆さを孕んでいると思います。
立場の弱さはこれからも変わらない
業界の人間としてラクロスの価値・地位向上は自分の職務、人生の課題だと思っています。が本当に受け入れ難いですし、憤りすら覚えますが今後も学内でのラクロスの立場の弱さはかわらないと思います。他の団体に長くいる大人が絡んでる以上、卒業していってしまう大学生だけではやっぱり難しいです。
学生だからこそ主義主張をしてもいいんだよ
さて、つらつらと大学スポーツの問題性とラクロスの立場的弱さを説いてきましたが学生には、間違っていると思うので大きな声をあげて立ち上がってもらいたいと思います。
世間から見れば、大学という組織内の判断は往々にして おかしい事はありますし、自分たちが積み上げてきたものに価値があると信じるのであればそれだけで戦う価値はあります。今回の日大アメフトの件も、アメリカだったらプロボノ案件だと思いますしね。
大人には大人の流儀で立ち向かう
実際のところ難しいとは思いますが、学生はもっとフランクに起訴すればいいと思います。大人は起訴くらいされないと判断は変えれないものです。大人も大人で自分たちの道義に伴って生きています。
若者が声をあげその主張が正しければ意外と多くの大人は協力してくれます。
”学生の君たちには未来があって、活躍してくれる事は社会にとって大きな活力です。それを大人が一方的に奪うのであれば反撃も必要です。君たちも十分大人ですしね。”
日本大学アメフト部の学生のみなさんに良き未来が訪れる事を心より祈っています。
#ラクロス #アメフト #日大アメフト #日大 #大学スポーツ
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