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消滅可能性都市・熱海は本当に消滅してしまうのか ~熱海の崖に家を建てる

みなさん、こんにちは。かとうゆりです。
GWいかがお過ごしでしょうか?
私は猫の闘病のお世話をしながら自宅で静かに過ごしつつ、時々熱海で森の整備に勤しんでいます。

さて。
先日、人口戦略会議から2014年に続き、2回目の「消滅可能性都市」が発表されました(令和2年(2020年)の国勢調査結果を活用)。
なんと、熱海市は再び「消滅可能性都市」に特定、しかも全国で23しかない「特に構造的に深刻な自治体」と位置付けられました。

熱海市の斎藤市長は「これまでもこの10年間 この自然減対策、社会減対策もやってきたと考えています。今後も引き続き、この人口については大きな課題として対策を引き続きとっていきたい」とコメントされています。

わが町になる熱海にとって、これは深刻な事態!
今日はこの問題に切り込んでいきたいと思います。

熱海の崖に家を建てようと思います。
名付けて、熱海Case Study House。
自腹でケーススタディしながらか
今そこにある技術・アイデアを実装した
現代のCase Study Houseを目指します。

熱海Case Study House

熱海は本当に消滅してしまうのか?

消滅可能性都市の定義はシンプルで「若年女性人口(20歳~39歳)が 2020 年か ら 2050 年までの 30 年間で 50%以上減少する自治体」というもの。
子供を産む若い女性世代が減ってしまえば、そもそも生まれる子供数が少なく、いずれ熱海生まれの子供はいなくなってしまうだろう、ということです。

2020年の熱海市の人口は3万人強。このうち若年女性人口は2,210人、これが2050年には928人となり、68%減少すると予測されています。国が出す人口の予測は、他の予測に比べて比較的確からしいものなので、これは由々しき事態です。

一方で、街のおかれた状況は様々なのに、一律の物差しで「消滅可能性都市」と言い切ることには少なからず違和感を覚えます。

例えば、熱海市の昼夜間人口比は109。3万人程度の人口規模ではありますが、周辺から人が働きにきている街でもあります。産業のない街とある街で、一律の物差しでよいのだろうか?と思うわけです。

2020年の国勢調査によると、熱海市に500人以上通ってきている自治体は、伊東市、湯河原町、三島市、函南町、小田原市。特に湯河原町伊東市は、当該自治体の通勤通学者のうち5%以上が熱海市に来ているので、つながりが深いですね。
ちなみに、湯河原からは女性が、伊東からは男性が多く熱海に働きにきているようです。湯河原の方は温泉宿やサービス業、伊東の方は土木建築業に携われる方が多いように思うのは、私だけでしょうか。

熱海への通勤通学圏の自治体

入湯税からみた観光交流人口は、コロナで移動が止まった令和2年でも3,489,900人。人口3万人強の都市からすると、100倍以上の人が外から遊びにきます。コロナが明けた今は、令和元年並みの700万人超え(200倍以上)に近づいているのではないでしょうか。

たしかに子供を産む女性の数が減少すると、熱海生まれの人はいなくなってしまいます。でも、これだけ働く場、交流する場がある街が、簡単に消滅してしまうとも思えません。

観光地は消滅可能性都市になりやすいのか

熱海は住民向けというより観光客向けのビジネスが中心。結果として、住民からすると生活に必要なサービスが不十分な上、地価が高くなる傾向があります。住居も確保しずらい。そう考えると、観光を中心とする街は消滅可能性都市になりやすいという仮説が成り立ちます。

これ、本当にそうでしょうか?少し調べてみます。

熱海と軽井沢の比較

例えば、同じく住民・別荘族、観光客を地域に抱え、新幹線停車駅を持つ街、軽井沢町と熱海市を比較してみましょう。

令和5年1月1日の人口は熱海市34,433人、軽井沢町21,510人。軽井沢の人口は熱海の3分の2です。東京からの距離45分の東京ー熱海に対し、76分と微妙に遠い。冬は寒いし、ちょっと考えると熱海より暮らしは大変そうです。

交流人口はコロナ前は800万人超、2020年は40%減。熱海より少し多い。住民の数百倍観光客がいるという構造は類似しています。

ところが、その将来は大きく違うのです。
熱海が2050年に人口を2020年の60%までに減少させる一方、軽井沢は94%とほとんど減少しない

熱海と軽井沢の将来人口(2020年=100、国勢調査より)

理由は、若年女性人口の推移に違いがありました。軽井沢の若年女性人口は2030年に下げ止まる予測です

熱海と軽井沢の将来若年女性人口(2020年=100、国勢調査より)

背景に、近年の社会移動増があります。
ここ10年の社会移動数をみると、軽井沢は安定して社会増が増えています。特にコロナ禍以降は激増ですね。これに比して、熱海は1.5倍の人口規模であるのに軽井沢ほど伸びていないし、2022年は伊豆山事故もあり、減少しています。


熱海と軽井沢の社会増減数(住民基本台帳)

ではなぜ、寒くて東京からも遠い、軽井沢に人が引き寄せられているのでしょうか。

コミュニティ、産業構造、学校、そして住む場所

最近の軽井沢移住ブームについての記事を読むと、「趣味、地域、ボランティア、別荘、学び、大学など様々なコミュニティがある」「軽井沢は小さなまちなので、短時間で地元住民、別荘所有者、二拠点居住者、などともすぐに出会え、コミュニティが広がっていく」といった記述をみかけます。

たしかにそうなのでしょう。でもね、熱海にもこうしたコミュニティはあります。熱海に住居を移そうと、毎週のように出入りする私でも、様々なコミュニティとの接点を持たせてもらっています。加えて、「熱海おんぱく」のような、より積極的な動きもみられます。「コミュニティ」という要素は、熱海も軽井沢に負けていないように思います。

一方で、違いもありそうです。

例えば、産業構造

昼夜間人口比はいずれも100を超えており、熱海が109、軽井沢は122。軽井沢の方がより働く人を引き付ける街になっています。

熱海、軽井沢ともに、最も多い産業は「宿泊業、飲食サービス業」、ついで「卸売業、小売業」観光地のイメージに合う産業が主力です。

熱海の方が比率が高い業種は、観光業を補完する業種(運輸業、サービス業)、高齢者支援業種(医療・福祉)(青いハッチ)。
軽井沢の方が比率が高い業種は、エリア外から外貨を獲得できる業種(農業・林業、製造業、情報通信業)、生活を支える業種(不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門技術サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業)(オレンジのハッチ)。
観光に特化しすぎていないことが、軽井沢がより人を集めるポイントなのかもしれません。

熱海と軽井沢の産業構造(青が熱海が多いもの、オレンジが軽井沢が多いもの)

若い世代を支える、という観点では、軽井沢には特筆すべき学校教育がみられます。世界各国から選抜された高校生を受け入れる全寮制のインターナショナルスクール「ユナイテッド・ワールド・カレッジ ISAK ジャパン」や幼稚園〜中学校まで3歳から15歳までが同じ校舎で遊び学ぶ一貫校「軽井沢風越学園」。いずれも、ここを目的に移住するような、教育環境ですね。
熱海にはなくて、軽井沢にはあるもの。これは大きな違いであるように思います。

ちなみに、ハワイも人口増加しています。

軽井沢だけが人口増加している観光地ではありません。
観光地といえばハワイですが、ここは島であるにも関わらず、ホノルルのあるオアフ島以外の島でも人口が増加しています。
1990年の時点で最も人口が少なかったカウアイ島(51,177人)も、30年後の2020年には43%増の70,000人強に。私の知っているカウアイ島は、まさに観光の島でしたが、一体どんな秘密があるのでしょう。
そういえば、オアフ島の一部ではエビの養殖やっていたなとか、ハワイ島には海洋深層水の研究所や牧場があったなとか、思えば産業につながりそうなアイテムも目にしてきました。
熱海にできない理由はありません。

ハワイの人口推移

熱海でできることは何か

働く場を増やす

主力産業である観光はもちろん大事ですが、軽井沢との違いを考えると、外貨を獲得したり若い世代を支えるサービスが増えると、より多くの人を引き付ける街に進化できるように思います。
場所に縛られない仕事、という意味ではやはりAIやIT産業でしょうか。熱海は新幹線で東京から45分、必要があればいつでも東京に出られる距離でもあります。ちょっと不便なのはエアラインアクセスかな。川勝知事も退任されたことですし、リニア新幹線の建設許可のバーターで静岡空港に新幹線を停車させてもらい、エアラインアクセスを改善する、というのも一つのシナリオかもしれません。
今は海岸通りにホテルばかり建設されていますが、IT企業が入居する環境配慮型のオフィスビルが建設され、直接海外と取引するようなベンチャー企業が熱海から生まれないでしょうか。

学ぶ場を増やす

学校の誘致にどのくらい軽井沢町がかかわったのかわかりませんが、教育は重要なポイントです。熱海で実施するならば、アカオさんのPROJECT ATAMIと連動した学校や、ミネルバ大学の誘致などを検討してみたいです。

アートを観光にだけ使う、というのはもったいないと思うのです。世界中からくるアーティストとコラボできる学校って、魅力的だと思いませんか。

日本財団のプレスリリースによるとミネルバ大学は、「全国複数カ所を巡りながら日本の学生・地域・企業等と、日本が抱える諸課題解決に取り組む」とあります。熱海のような社会課題満載の街にミネルバ大学って、相性よいと思うのです。

軽井沢のようにインターナショナルスクールを誘致して、海(ヨット)と山(富士山登山と自転車)をキーワードとした課外授業を充実させるとか。ヨーロッパの名門校とか、相性よいかもしれません。

いずれにしても、誘致する学校だけでなく、既存の小中学校のためにスクールバスを充実させ、学生さん利用時間以外は、観光客や市民にも開放、アクセシビリティの向上につなげられるとよいなと。ハワイもスクールバスが充実していますよね。

住む場所を増やす

熱海の問題点の1つに50%を超える空家率の高さがあります。空き家があるのに、住める住居がないのです。
詳しくは下記の記事の通りなのですが、マチモリ不動産が取り組んでいる空家になってしまった築60年の鉄筋コンクリートマンションをリノベーションし、住み手と貸し手・売り手をつなげる事業は、究極の若い世代を支えるサービスになりそうです。

加えて、熱海市さんにもがんばってほしい
少なくとも軽井沢町は、町民や別荘所有者のために様々な補助金制度を提供しています。

例えば、
自然環境に配慮した補助金
・電気自動車等普及促進事業補助金
・住宅用太陽光発電システム等導入促進事業補助金
出産・子育ての補助金
・出産祝金
・出産育児一時金
・不妊治療補助金
その他の住まいや暮らし、住民の生活を豊かにする補助金
・国際交流補助
・住宅建設資金融資利子補給

熱海市の年間予算は約200億円、軽井沢町は約170億円。
人口比でいうと熱海は1.5倍なので、熱海市は50億円ほど予算が足りないかもしれません。
不足する予算はふるさと納税頑張る。正直、今の熱海市のふるさと納税の返礼品はしょぼすぎる!市内にはもっと魅力があります。熱海市さん、がんばってほしい。

まとめ

軽井沢やハワイにできて、熱海にできないことはありません。
主力産業である観光業を生かしながら、それ以外の人も集う街へと進化させ、わが街熱海が消滅しませんように。
まだ住民でもありませんが、GWの一日、熱海市の未来に思いを馳せてみました。

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