見出し画像

ギネス世界記録更新なるか!?世界初、VTuberを宇宙に飛ばして生配信! – その①

本記事は2020年6月9日に投稿されたものです

こんにちは。プロデューサーのグンジです。

今回は、モンゴルで達成した“偉業”のお話をしたいと思います。
それは、「2019年6月24日(U.F.O.の日)に、日清焼そばU.F.O.のCMキャラクターであるVTuver輝夜月さんを宇宙に飛ばして、それを見ながらみんなでU.F.O.を食べよう」という日清食品さんの無邪気なアイデアからスタートしました。

どうやって宇宙へ?

宇宙へ、と行ってもNASAの協力を得てロケットを飛ばす、というわけにはいかないので、「スペースバルーン」という大きな風船を使って成層圏を目指すことになりました。
宇宙の輝夜月さんと地上のみんながリアルタイムに繋がって、U.F.O.を食べる。その映像を生配信しようという企画です。

しかし、 映像を“生配信”するとなると国内では法規制のハードルがあるのです。そのため、海外で打ち上げるという方針に。
また、アタリにはスペースバルーンのノウハウがないので、その専門分野で活躍している企業さんに協力をお願いすることになりました。

パートナー企業さんは見つかったのですが、ここでも問題が。本来この規模のプロジェクトを推進する場合、できれば1年、少なくとも半年は必要とのこと。おっしゃる通りです。
実施が決定した時点で、打ち上げ予定日までわずか3ヵ月。
ここから、かなり無謀な挑戦が始まります…

試行錯誤して決めた打ち上げ方法

スペースバルーンに搭載する機能は、大きく分けて以下3つで構成されます。

成層圏から地上へ位置情報を送信
成層圏の輝夜さんに地上からのデータを送信
成層圏から地上へ輝夜さん×宇宙の映像を送信

これらを実現するために、GPSモジュール・小型のPCとモニター・スマホ・送受信用のアンテナとユニット・バッテリーを搭載した機体を組み上げます。
さらに、輝夜さんが搭乗するU.F.O.も3Dモデリングし、3Dプリンタで出力します。
外装をなくし、機材は向き出しの状態にすることで、軽量化と熱暴走の懸念両方を解決するかたちの設計となりました。

ドキドキの現地テスト

ギリギリまで機体の制作、モジュールの開発を行っていたため、また、国内で行えるテストは限定的なため、準備万端とは言えない状態で現地テストに臨みます。
これは5月の下旬、本番1か月前です。

宿泊先は、ウランバートルから車で2時間ほどの場所に位置するテレルジという地域です。
テレルジのホテルに到着したのは23時。
翌日のテストまでに時間がないため、深夜にセッティングを行う事となりました。こちらに思いのほか時間がかかり、床に就いた頃には朝4時を回っていました。

短い仮眠を取り、3時間後にロビーに集合。
放球班、中継班、回収班それぞれの行動スケジュールを確認し、出発します。
従来のスペースバルーンの打ち上げは、打ち上げ→回収→録画映像の確認、という一つの流れで進めるのですが、今回は上空の映像をリアルタイムで配信する必要があるので、中継用の基地局を設けています。
そのため、打ち上げを行う“放球班”、基地局で映像を受信し日本へ送る“中継班”、落下する機体を追跡して回収する“回収班”の3班に分担して臨みました。

画像1

放球班だった私は、放球地点へと向かうことに。
今回の放球地点までの道のりは、車で1時間半ほど。放球地点は、風向きなどからバルーンの軌道を計算し、中継地点の真上が最高到達点となるように決定するので毎回変わります。
道と呼べないような道を走っていくので、実際の距離から想定されるより遥かに長い移動時間を要しましたが、草原を眺めていると、これを放牧と呼ぶのか?というくらい野に放たれた羊や馬を多く見かけたりするので飽きる事なく、あっと言う間に時間は過ぎます。

画像2

予定時刻に合わせて放球しないと計算がズレてしまうので、放球地点に到着したら急いで準備をし、放球。ヘリウムガスで膨れたバルーンが上がっていくのを見送りました。
打ち上げは成功!!!

画像3

放球地点に電波が入らないので、この時点で受信できているかの確認はできません。
そのため、放球が完了し次第すぐさま中継地点へと向かいます。

中継地点に到着し、ドキドキしながら映像を確認しに行くと、全く受信はできていませんでした。
どうやら通信が上手くいっていなかったようです!!!
その後落下した機体を回収し、原因を模索。結果、送受信ユニットに問題がある可能性が出てきました。
製品が公表しているスペックを全く発揮していない状態だったので、それを改善する必要があるのですが、現地では必要なパーツを揃えることができないため、現場で行える最大限の処置を行います。

また、記録していたログを確認してみると、搭載したスマホの電源が放球後すぐに落ちてしまっていることが分かりました。
放球後に端末の温度がぐんぐん下がっていき、それに伴いバッテリーが一気に減って電源が落ちたようです。
急遽、低温対策が必要となりました。
今回のテストで高度の目標はクリアできたので、翌日の打ち上げでは通信周りとスマホの耐久面のテストをメインで行うことに。熱がこもり過ぎないように気泡緩衝材(いわゆるプチプチ)を巻いたり、断熱シートを巻いたりと、様々な低音対策を施し、翌日に備えます。

テスト打ち上げ2回目。
この日の放球地点への道のりは前日よりも複雑で、到着まで長い時間を要しました。
2回目ともなると、広大な草原や道を塞いでくる動物たちにも飽きてきます。

この日も打ち上げ自体は成功。ただし、今回も通信ができず!!!
この時は日本でも配信チームがスタンバっていたのですが、待てど暮らせど映像が来ない、という無意味な時間を過ごさせてしまう結果に…

早速機体を回収すると、気泡緩衝材を用いたスマホは落下直後まで機能していました。ログでは放球直後に温度低下が見られますが、前回ほどの勢いはありません。
しかし、ある一定の高度を超えると、逆に温度が上昇!!!
どうやら、空気が薄くなって外気の影響を受けにくくなり、結果として温度が上昇してしまったようです。

課題が山積み!国内テスト

帰国後、今回のテストで見えた沢山の課題の対策を練ります。
とは言え、本番まで1か月を切っているので、できることは限られるのですが…

まず、機体について。従来では、敢えて外装のない状態で機器を設置していたのですが、そこから考え直しました。
カーボンでフレームを作り、面を張ってボックス化することで、解決を目指しました。

上記のプロトタイプを早急に制作し、まず初めに行ったのはドローンテストです。
パワーのある大きめのドローンに搭載し、上昇させてしばらくしたら降ろし動画チェック、を繰り返し行い、スマホ側の設定を調整しました。

次に行ったのは恒温槽試験です。
恒温槽とは、長時間一定温度に保つことができる装置で、科学実験などで用いられます。
今回は、低温/高温時のスマホやスティックPCの状態を調べ、新しい機体が上空の環境に耐え得るかをテストします。
ちなみに、機体の再設計によって、スマホへの低温対策は不用になりました。

また、通信が上手くいかなかった原因について送受信ユニットのメーカーに問い合わせていたのですが、こちらの原因も判明しました。
どうやら、メーカーが用意したアンテナのペアが間違っていたようです。
これで通信側の問題は解決できた可能性が高いです。

そして最後に、国内放球テストです。
本番とは異なる機体や条件ですが、高高度でのスマホの稼働テストとして、福島で放球テストを行いました。

これで、帰国後に組んだアップデートと検証の予定はすべてこなしました。
完璧と呼べる状態ではありませんが、出来るだけのことはやれたと思います。
そんなこんなで、本番に臨みます。

と言いたいところですが、今回はここまで!
現地テストがことごとく失敗でグンジ大ピンチ!!!!!
果たして成功なるか!?

次回をお楽しみに!!!