見出し画像

【後編】生成AI時代のアイデア選定術: 無限の事業アイデアからダイヤモンドを見極める3つの検証ポイント

 前回の記事 では、生成AIを活用したアイデア創造・選定のプロセスをご説明しました。

とりわけ、大量のアイデアの中から確度の高いアイデアを見出すための3つのポイントのうち、「n1顧客の実在性」「十分な市場性」の2つの検証ステップを具体的に解説しました。

 今回は、残る1つの検証ポイント「コンセプトの真新しさと優位性」の具体的な検討・検証手法をご説明します。このステップでは単にアイデアを確かめるのではなく、競合と比較しながら競争優位を取れるポジションを発散・収束サイクルの中で見つけ出す必要があります。

ここでも、時間制限を設け、精緻な検討をするのではなく、競争優位が取れる可能性があるのかを確認していきます。


検証ポイント3 「コンセプトの真新しさと優位性」

 前回の記事でご紹介したn1顧客、市場規模を確認できているコンセプトについて、勝ち続ける見込みがあるか検証しておきます。いくらアイデアが顧客に受け入れられる見込みがあったとしても、市場変化のスピードがあまりにも早い現代では、すでに競合も同じアイデアを思いついている可能性が高いでしょう。

そうであるならば、可能な限り、競合が手を付けていない、もしくは気づいていなさそうなポジションを取れる可能性があることを、初期に確認しておく必要があります。

 もちろん、ポジショニングという外的要因との比較の中だけで競争優位に立とうとするだけでなく、そのポジションが自社内部の組織能力・経営資源によって持続・強化される事業であることが好ましいことはいうまでもありません。

具体的な手順は次の通りです。

アイデアを尖らせるための3つの手順

ポジショニングの取り方は、比較軸を複数個用意しておき、空白地帯にプロットできる2軸を採用するというオーソドックスな進め方です。

なお、生成AIを活用した事業機会探索では、ポジショニングを明確にしておくことで、生成AIが生み出した曖昧で抽象的なアイデアに具体性やエッジを持たせることができます。これにより、ビジネスコンセプトに対する評価の精度と確度を上げることができます。

今回は1アイデア90分で進めるために、コンパクトに進め方をまとめました。最初は時間がかかるかもしれませんが、3回目あたりから「全く優位性がない」「何かしら新しいポジションが取れそう」というどちらかの答えが出せるようになるはずです。

1.競合する行動の洗い出し

 対象の商品・サービスを選ぶ代わりに、顧客がいつも選ぶ行動やモノから、代表的な2~3個を選びます。できるだけ異なる選択肢が好ましいです。

2.比較軸探し(またの名を、バイアス探し)

 それらが顧客に選ばれる理由(主要購買要因)を3~5個洗い出します。もしくは揃いもそろって競合が全くリーチできていない課題でもいいでしょう。

一方、そのアイデアに関わりそうな、自社のシーズやアセットに関する強みを1〜3個洗い出します。ここでも、比較軸を合計5~8個(最大でも10個以下)に抑えておくことが重要です。

軸探しは、濱口秀司氏がいう、競合や自社のアイデアの前提にある「バイアス」を見つけられるとよいです。詳細は氏の著書をご参照ください。

いわゆる戦略キャンバスで簡易的に軸出し

3.空白へのポジショニング

 軸を洗い出しながら競合をプロットします。その中から、空白が存在している、かつできるだけ無関係な軸を2つ選び、4象限のポジショニングマップを作成します。

ポジショニングマップ(軸の組み合わせ)は、軸の数だけ大量に作成できるので、書いては捨て、魅力的なポジションが導き出せるまで作成します。もし見つからなければ競合を変えてやり直します。

制限時間内に見つからなければ、ユーザーには受け入れられるが、競合には勝てない(実際にはユーザーに選ばれない)アイデアと見なし、切り捨てます。

例)「新規事業を考えるビジネスパーソンをアシストするチャットボットサービス」

ここまでのステップをなぞると、次のような例となります。「新規事業を考えるビジネスパーソンをアシストするためのチャットボットサービス」を考えてみましょう。

単純に考えると「新規事業のアイデアを生み出してくれる」とか「新規事業のフレームワークをステップバイステップで埋めてくれる」などが思いつきそうです。

これをバイアスを破りながら再構築します。ヒト→QAベースチャットボット→シナリオベースチャットボット→生成AIチャットボットの順で、質問に対する答えの速さ・的確さ・正確さが上がるとします。しかし、ボットは問いにしか答えません。

一方ヒトは、役に立つも立たぬも関係なく、相手からも話しかけてきます。もし、対話の量とビジネスアイデアの量や、意思決定の質が比例しているのならば、この観点は活かせそうです。

 そこで、「問答型のバーチャルアシスタント」がありうるかもしれません。新規事業のアイデアに関する質問には直接答えず、むしろボット側が「なぜそのアイデアを選んだのか、理由が語られていない」「背景にどんな前提が隠れているのか」など問いで返してくることで思考の補助をしてくれたり、意思決定のチェックポイントを再確認させてくれるというものです。

例:問いを返すボット

 もしSun*が開発するのであれば、これまでの大量の新規事業の支援(メンタリングや社内新規事業制度支援も含む)の経験を活かして、よく躓くポイント、見逃してしまう重要成功要因、投げかけるとアイデアの質が上がる質問をこのボットに実装し、優位性を確保するでしょう。逆にボットが蓄積したデータを活用し、人力の支援を強化することも考えてしまいます。

この例は15分程度で発想してみましたが(もちろん執筆にはもう少し時間を掛けています)、このように「ビジネスパーソン用のチャットボット」程度のアイデアを、新たなポジショニングを取れるエッジの効いたアイデアに仕上げます。もし、「アイデアを大量に生み出すボット」しかでなければ、ここで掘り下げをやめておきます。

今回のアプローチが有効なケース

 今回のような検証アプローチが有効なケースと、そうではないケースが存在しています。どのような状況であれば今回のアプローチが有効といえるでしょうか?

次回の記事では、他のアイデア検討・検証アプローチと比較しながら、このアプローチが有効に機能するケースを解説するとともに、3ステップを実行するためのチーム体制や必要スキルを補足的にご説明いたします。

本シリーズの記事はこちら▼


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?