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【補足編】生成AI時代のアイデア選定術: 無限の事業アイデアからダイヤモンドを見極める3つの検証ポイント

生成AI時代のアイデア選定術の前編後編の記事では、大量の新規事業アイデアの中から確度の高いビジネスアイデアを選定するための3つのポイントを、具体的な手法とともに解説しました。

 今回の記事では、他のアイデア検討・検証アプローチと比較しながら、本アプローチが有効に機能するケースを解説するとともに、3ステップを実行するためのチーム体制や必要スキルを補足的にご説明いたします。



相反する2つの世界を核融合させるチーム

 このアプローチの前提にはビジネススキルとクリエイティブスキル、構造的な思考と探索的な思考、という相反する2つの世界観を1時間単位で行き来できるメンバーが必要です。しかし通常は、それを1人で担えることは少ないため、できるだけ異能でチームを組むことが望ましいでしょう。

例えば、ロジカルに市場規模をフェルミ推定したり、効率的なデスクトップリサーチができるビジネス人材と、クリエイティブにアイデア発散したり、コンセプトシート作成やユーザーインタビューができるデザイン人材の2~3名で1チームを組めると、専門性を活かしながら化学反応を起こすことができます。

 また、意思決定が遅くなることを避けるために、チームは2〜3人(最大5人)の小規模で構築します。5人以上の場合は2つのチームに分けることが重要です。5人以上になると、いつものやり方に引き戻され、スピード感は失われます。

この辺りのチーム編成については、Sun* 井上一鷹の著書『異能の掛け算』をご参考ください。

ハンマーを持つとすべてが釘に見える

今回のアプローチの前提は、生成AIによって広範な事業機会をリスト化した状態を想定しています。そもそも事業機会の発掘方法によってはこのアプローチが適さない場合もあります。特に、マジョリティに受け入れられないような革新的なサービス(ごく少ないアーリーアダプターを探しに行く必要があるサービス)ほどこの傾向は強まるかもしれません。

事業領域が絞られている場合は、デザインリサーチを先行させ、コアユーザーやエクストリームユーザー、模擬体験やアナロジーなど、具体的な人物・事象からインサイトや機会領域、問いを見つけだすことで、魅力的なアイデアが生まれ易くなります。

この場合、n1顧客は実在しているわけで、IDEOが実践しているように、サクリフィシャル・コンセプト(捨てる前提のたたき台)から反応を得たり、10枚のアイデアスケッチを並び替えてもらうことで優先度を確かめるなど、より質の高いユーザーフィードバックを得るべきでしょう。

また、企業のビジョンやパーパス、個人の想いから解きたい課題を見つけ出したり、スペキュラティブに遠い未来から逆算して問題提起したりする場合は、まだ世の中にないコンセプトになりがちです。この場合。いくらn1顧客を探してもコンセプト受容性は確認できないことが多いでしょう。

プロトタイプまで進んで理解を促したり、未来の世界を可視化して問題を理解してもらう(即ち、アートという手段を用いる)か、そもそも理解を得られることを諦め、自身の確信のみで突き進む必要があるかもしれません。

このように、自身が生み出そうとしている新規事業の前提に応じて、生成AIの活用方法(裏を返せば人間の活かし方)と、アイデアの検証方法を組み立てる必要があります。

次々と湧き出るアイデアを、いとわず次々試せるか

これまで3回に亘って、大量のアイデアの中から本当に売れるものをクイックに見つけるための、3つのゴールデンポイントに焦点を当てた迅速な検証手法をご説明しました。

大量にアイデアが生み出されるケースでは、このアプローチを採用することで、確信と確証を持って、時間をかけすぎる前に、成功するアイデアを選び出すことが可能です。新しいアイデアが次々と湧き出る競争の激しい環境で、効果的なアイデアの目利きが成功の鍵となります。

社内外から小さなチームを編成し、クイックに検討・検証できるケイパビリティを持つことが、これの数年間でますます必要性が増してくるといえるでしょう。

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