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腰部の解剖

こんにちは。

みるめATです。

前回までは膝関節について投稿しましたが、今回からは腰部の解剖と腰部疾患、腰部の手術、それに合わせて術後の運動処方のリスク管理やポイントなどを投稿できればと思います。

腰痛に関しては国民病と言われるほど現代人とは関わりの深いものだと思います。

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◯腰痛と現代人

厚生労働省の国民生活基礎調査の概要でも長年、腰痛は男女ともに上位を占めています。令和1年度(最新版)の病気や怪我で自覚症状のある人の割合(以下、有訴者率)をまとめたデータによると以下のようになります。

男性
第1位”腰痛”
第2位”肩こり”
第3位”鼻炎”
第4位”咳や痰”
第5位”手足の関節痛”
女性
第1位”肩こり”
第2位”腰痛”
第3位”手足の関節痛”
第4位”倦怠感”
第5位”頭痛”

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厚生労働省 2019年度 国民生活基礎調査の概要より抜粋

男性では第1位で女性でも第2位ですね。在宅ワークも増えつつある現在では切っても切り離せない問題ですね。

私が勤めている整形外科でも一般の方が腰痛で来院される事が増えている印象です。

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スポーツ選手でもスポーツ障害として慢性腰痛に悩む選手は多く、

ATとしても腰痛の病態理解は大切です。

今回も疾患別にまとめていく前に腰部の解剖に関してアスレティックトレーナーの立場からまとめていきたいと思います。

◯脊柱の解剖

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脊柱は頸椎7椎胸椎12椎腰椎5椎仙椎5椎尾椎3〜6椎の約30個の椎骨から形成される。仙椎と尾椎は癒合しており、仙骨と尾骨と呼ばれる。

成人では頸椎が前弯胸椎が後弯腰椎が前弯している。

これを整理的弯曲(S字状のカーブ)という。

脊柱の機能→支持・運動・保護で、支持と運動に関しては主に椎間板と椎間関節で行われている。

脊柱の前方の円柱状の部分を椎体という。後方には上関節突起と下関節突起からなる椎間関節が存在する。また、脊髄や馬尾神経が走行する椎孔がある。椎孔を構成する椎弓という部分があり、椎弓部側方に横突起、追求後方に棘突起が存在する

下記の画像は腰椎になります。

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椎孔が異なる事で脊柱管となり、その中を通る脊髄や馬尾神経を保護している。

◯靭帯

靭帯は椎骨と椎骨を繋いで脊柱の安定化に寄与しています。

椎体前面には、強靭な前縦靭帯が頭蓋底から仙骨まで付着しています。

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椎体後面には後縦靭帯が、頭蓋底から仙骨まで走行している。

後縦靭帯には椎間板が後方へ突出して脊髄を圧迫しないように抑える働きもある

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脊柱管内椎弓後面には黄色(おうしょく)靭帯

脊柱後面には棘上靭帯と棘間靭帯が存在する。

Anterior longitudinal ligament(前縦靭帯)

Posterior  longitudinal ligament(後縦靭帯)

Ligament flava(黄色靭帯)

Inter-spinal ligament(棘間靭帯)

Supra-spinal ligament(棘上靭帯)

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◯椎間板の解剖

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水分80%、コラーゲン12〜15%、プロテオグリカン2%からなる椎体と椎体の間にある繊維軟骨組織である。上下面の終板(End Plate)と線維輪、中央部にある髄核の3部から構成される。

髄核は、線維輪で層状に覆われている。

また、人体最大の無血管組織である。

・髄核の動きは脊柱伸展時に前方へ、屈曲時に後方へ移動する。

基礎的なことですが、こちらも運動指導時のリスク管理する上でとても大切なことだと感じます。

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◯腰椎の解剖

腰椎は5つの椎体から構成されています。

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頸椎や胸椎と比べ椎体が大きいのが腰椎の特徴です。脊柱の最下位にあるため負担が大きいため、椎体は大きく幅広い構造です。



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・棘突起は平板で矢状面に向いている。

・椎孔は比較的小さい

・第5腰椎は後方へいくにつれて厚さが減少している。

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・第1腰椎、第2腰椎にまれに腰肋が見られる(ヒトの約8%)胸椎にしか存在しないはずの肋骨が稀に存在するそうです。第1腰椎の腰肋はかなりの大きさになることもある。頸椎にも頸肋が稀にある事があります。

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・第5腰椎が仙骨と融合していることがある。(仙骨化)

◯腰部の筋肉(インナーユニット)

目的

・腹腔内圧を上昇させ、腰椎・骨盤帯の安定性に寄与

・腹腔内圧の上昇は脊柱の頭尻方向への伸展力を生み出し、体幹を伸展位に保持し恒常的な体感姿勢の維持に働く。

筋肉

・多裂筋、腹横筋、横隔膜、骨盤底筋群

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・多裂筋

起始:最長筋の浅在性の腱板、仙骨の後面、腰椎の乳頭突起、胸椎の横突起、及びC4〜C7の関節突起

停止:2〜4個上の椎骨

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慢性腰痛患者の約80%の方に多裂筋の筋萎縮がある。

多裂筋の機能不全と腰痛には有意な相関がある。

Kader DF, Wardlaw D, Smith FW. Correlation between the MRI changes in the lumbar multifidus muscles and leg pain. Clin Radiol. 2000 Feb;55(2):145-9. doi: 10.1053/crad.1999.0340. PMID: 10657162.

腰部疾患に介入する上でとても大切な筋肉ですね。

多裂筋の中でも腰部の多裂筋が発達している

その中でも特に下位腰椎の筋腹が発達している

他の脊柱起立筋と比べて筋長が短く、発揮できる伸展モーメントも小さい。

腰椎の固定性や分節的安定性に重要な役割をしている。

◯腹横筋

起始:第7〜12肋軟骨の内表面、胸腰筋膜の深葉、腸骨稜の内唇、ASIS、鼠蹊靭帯

停止:恥骨稜と腸恥骨線、腹直筋の腱膜〜白線


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健常者にドローインさせたときは腹横筋の筋厚変化率が大きい。

しかし、慢性腰痛群ではドローインをさせたときに内腹斜筋の筋厚変化率が大きかった。

腹横筋の活動量が低下しているため、内腹斜筋が代償的に強く働いているようです。

やはり慢性腰痛者にはよく言われますが腹横筋が大切なようです。


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◯骨盤底筋

骨盤底は後下方に向かって体幹を閉鎖している。骨盤底は骨盤隔膜尿生殖隔膜から構成される。骨盤底筋群を構成する筋肉を下記にまとめます。

◯骨盤底筋群を構成する筋群→肛門挙筋、恥骨直腸筋、恥骨会陰筋、恥骨尾骨筋、腸骨尾骨筋、外肛門括約筋、尾骨筋、深会陰横筋、浅会陰横筋など

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骨盤隔膜と腹壁は呼吸のフェーズ全てにおいて活動的であるため腹壁だけではなく、骨盤隔膜も呼吸において収縮をしている。

内服斜筋と腹横筋の収縮は骨盤隔膜の活動と密接にカップリングしている。こちらも骨盤隔膜は内腹斜筋と腹横筋と一緒に活動している事が多く、腹壁を閉めるだけではなく骨盤隔膜も同時に収縮させられる事が大切。

◯横隔膜

胸腔と腹腔を隔てている。横隔膜は腱中心とさらに小部分に分けられる筋性部からなる。胸骨部つ肋骨部と腰椎部に分けられる。

胸椎部は剣状突起の内面から起始し、腱中心へ入り込む。

肋骨部は第7〜12肋骨の内面から数個の筋尖は腹横筋の起始筋尖と交互に起こる。

腰椎部には内側脚と外側脚がある。右内側脚は第1〜4腰椎の椎体から、左内側脚は第1腰椎〜第3腰椎の椎体から起こる。

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横隔膜は呼吸筋だけではなく、姿勢筋としても働き、食道括約筋としても捉える視点もある。

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今回はここまで腰部に対しての解剖をまとめてみました。

基本的な部分からエビデンスベースな部分までまとめましたが、

どの部位も一緒ですが、やはり解剖を理解することは大切なので少しでもお力になれればと思います。

今後はここから腰部の疾患別にまとめていきたいと思います。


本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。


みるめAT


埼玉県在住/整形外科クリニックにて運動指導を実施。

県内の部活動や強化選手などへのサポートを実施。

Dr.やPTと共同して運動指導する中でATが運動指導する際に把握するべき内容を投稿しています。医療でのリハビリを把握した上で運動指導できるATを増やしたい。ATの地位向上のために私ができることを。スポーツ現場だけではなくATの活動の幅を広げるために日々活動中。











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