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幼い頃の味の記憶と新しい味の旅をして nokos àl’étage

at:10 vol.001「パラダイス、内包する記憶」に参加していただいた作家が、作品とどのように向き合ってきたかを聞き、作品の持つ価値を探っていこうと思います。

坂井規予(nokos àl’étage)
1997年よりホテルのケーキ部門や個人販売にて活動開始。2015年 愛知県名古屋市にケーキ店"nokos àl'étage"開店。

彼女の作る、可愛くて、新しくて、でもどこか懐かしいお菓子たち。その源泉はどこにあるのかを聞いてみました。

はじまりは、家族の風景。

ー お菓子作りをしていこうと思ったきっかけは何ですか?

「母も父も料理をするのがとても好きで、家族で作ることが日常の自然な風景でした。
特に母は、子供の頃に色々なお菓子をよく作ってくれました。
そんな風景が、作ることをしている今につながっているんだと思います」

ー どこか学校に通っていたんですか?

「まったくお菓子作りとは関係がない、普通の学校に行っていました。
卒業するタイミングで、周りはOLになっていくのを見ていたけれど、自分にはまったく想像ができなくて。
何かを作る仕事がしたいという気持ちだけがあって、就職をせずに、ホテルのパティスリーとベーカリーをしているキッチンで働き始めました。
最初は何もできなかったのだけど、そのキッチンではいろいろなことを学びました」

イメージが楽しい!お菓子づくりへの想い

ー nokosのお菓子はどれも造形も可愛くて、食べると新しい、でもどこか懐かしさを感じます。お菓子作りはまず、何からイメージされるんですか?

「まず、味を想像します。母が今まで作ってくれていたお菓子や、これまで食べてきた味の記憶をたどりながら味をイメージしていきます。
このお菓子とこの食材を組み合わせたら美味しそう!と思いながら作っていきます」

ー 食材選びにこだわりはありますか?

「んー …。なんか美味しいそうに見えるもの!
市場に行って食材を見ていると、パッとしていたり、弾けているものがあるんです。そういうものに出会うとイメージが湧いてきます。あと、旬な食材を使うことにしています」

ー とても感覚的にお菓子を作られている印象ですが、お菓子作りは材料の分量や焼き加減など、計算的な要素が多いように感じます。作る時に大切にしていることはありますか?

「もちろん同じものを作らなければいけないので、材料を計ったりすることはとても大切です。それよりも美味しそうなタイミングで調理できているのかが大切かな」

記憶のクッキーに内包される、記憶のかたち。

ー 今回、at:10の、vol.001「パラダイス、内包する記憶」の展覧会のためにお菓子を作ることになりましたが、このテーマを、どのように受けとめたんですか?

「まず、すごくワクワクしました!
今回はいろいろな味のクッキーを入れてあるクッキー瓶を作りました。それぞれのクッキーに私の記憶があり、それをかたちにした感じです。

星形のクッキーは“サブレシトロン”というレモンクッキーで『小学生の時に庭に植えた檸檬の木の思い出の味』。

搾ったクッキーの“サブレヴィエノワ”は『幼い頃の母や友達とのお菓子作りの味』。

丸型のくるみのクッキーは『母が作ってくれた懐かしい味』。

三角と四角の煎茶クッキーは『昔習っていたピアノ教室でレッスン後に食べた味』。ピアノの先生が怖かった記憶もセットです(笑)

くるみのクッキーは幼い頃、母がよく作ってくれていて、瓶にいっぱい詰まって置いてあったんです。実は瓶詰めのパッケージも子供の頃の思い出です」

記憶の断片をぎゅっと詰め、かたちにした、記憶のクッキー。

記憶の投影と、想像力が混ざる。

彼女の作るお菓子は、どれもとても見た目が可愛くてシンプル。それだけに、食べるととても驚きのある美味しさに出会うことができます。
彼女の今まで体験してきた味の記憶と、食材から感じとれるインスピレーションが「味の記憶の粒」として、お菓子にそのまま投影され、口に含んだ瞬間に懐かしさとnokosの想像力を感じ取ることができます。

re collection −パラダイス、内包する記憶−

2022年7月8日(金)正午〜7月19日(火)正午
期間限定オンライン展覧会

大森準平 陶芸家
小田切 真由美 mamerucu
坂井規予 nokos à l’étage

https://at10.online/exhibition/001/