マガジンのカバー画像

御三家マンション

11
運営しているクリエイター

2020年2月の記事一覧

灯りは光りて炎は揺らぐ

 しまった、とマサギが思った時には遅かった。
 ドォン!
 朝の空気を震わす大音量。バサバサと街路樹から小鳥ポケモン達が一斉に飛び立つ。
 今マサギ達が立っているバトルフィールドからマンションの方を見ると、いくつかの部屋の窓が開いた。窓から見える不思議そうな顔や慌てた顔、驚いた顔にマサギは九〇度の礼をする。
「十文字さん! どうしたんですかっ」
 マンションのエントランスから、転がるようにイオが出

もっとみる

紅茶はないがほうじ茶はある

 ダイマックスという、いまだ聞き慣れていない言葉を耳にして、マサギの反応がやや遅れた。
 「……ええ」
 マサギが短く答えた相手はマンションの新しい入居者である青年、スコープである。先ほど挨拶して別れたばかりだが、8階の自分の部屋から1階のマサギの部屋まで追いかけてきたらしい。
 スコープはマサギの返答を聞いて口を開いた。
 「よかったら、今からでも少しは話せるんだけど。どうかな」
 「いいんすか

もっとみる