見出し画像

胸鎖関節(鎖骨)の動態

こんにちは!理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)

前回の少し復習になりますが,肩関節には狭義の肩関節と広義の肩関節があります.広義の肩関節には胸鎖関節,肩鎖関節,肩甲上腕関節,肩甲胸郭関節,第2肩関節が含まれます.
前回は肩鎖関節(肩甲骨)の動態をまとめましたので,今回は胸鎖関節(鎖骨)の動態についてまとめていきたいと思います!

・肩甲帯の機能解剖

画像4

鎖骨は胸骨と連結する胸鎖関節、肩甲骨の肩峰と連結する肩鎖関節を構成します.鎖骨の遠位端は平坦な関節面のため,適合性は悪いとされます.
そのため関節円板靭帯によって補強されています¹⁾.

肩鎖関節の靭帯は肩鎖靭帯,烏口鎖骨靭帯(円錐靭帯,菱形靭帯)が安定性を補強しています.
肩鎖靭帯前後方向の安定性に関与し,烏口鎖骨靭帯上下方向の安定性に関与します.

胸鎖関節の靭帯は胸鎖靭帯鎖骨間靭帯肋鎖靭帯の3つが重要とされます.
胸鎖靭帯は関節の前後方向を補強し,鎖骨間靭帯は鎖骨が下降した際に緊張し,肋鎖靭帯は鎖骨の挙上や回旋時の制動に寄与します¹⁾.


・胸鎖関節の基本動態

画像2

胸鎖関節鎖骨動態の支点となります²⁾.
胸鎖関節を支点に鎖骨は挙上・下制後退・前進前方回旋・後方回旋と動きます.

鎖骨の可動域は挙上45°下制5°後退15°前進15°回旋は50°とされています³⁾.


・鎖骨動態

画像3

鎖骨は挙上角度が増加するに従い挙上・後退角度が増加し,150°屈曲位では挙上が41°とされます³⁾⁴⁾.また後方回旋は屈曲90°以降に増大するとされ,外転では0~120°で徐々に増加します⁴⁾.

下垂位外旋(1st外旋)では鎖骨は5°後退し,90°外転位外旋(2nd外旋)では11°後方回旋と下制がそれぞれおこります.また屈曲90°外旋では5°下制します⁵⁾.


・鎖骨肩甲上腕リズム

画像4

肩甲上腕リズムというワードはよく耳にすることがあると思います.
今回は鎖骨上腕リズムというものについてまとめました.
鎖骨上腕リズムとは鎖骨を含めた肩甲骨・上腕骨の協調運動のことです.

肩関節は屈曲と外転では肩甲骨の動態が異なります.
屈曲0~90°では肩甲骨は肩鎖関節を中心に上方回旋し,90°以降は鎖骨の挙上と後退を伴いながら肩甲骨は内転・上方回旋しています⁴⁾.

外転では角度上昇に伴い,鎖骨は胸鎖関節を支点として遠位を挙上・後退しながら肩甲骨は上方回旋します⁴⁾.

屈曲早期では外転に比べ前鋸筋の活動が増加し,肩甲骨の外転と上方回旋を誘導しているとされます.また外転早期では僧帽筋中部線維によって肩甲骨は内転し,前鋸筋の作用によって上方回旋が起こるとされます.
このことを考えると副神経麻痺では僧帽筋の関与が強いため屈曲よりも外転制限が出やすい可能性があります.


【まとめ】

・胸鎖関節の安定性には胸鎖靭帯,鎖骨間靭帯,肋鎖靭帯の3つが重要
・鎖骨は挙上・下制,後退・前進,前方回旋・後方回旋の動きがある
・鎖骨は屈曲90°以降に回旋角度が強くなる
・鎖骨上腕リズムは鎖骨を含めた肩甲骨と上腕骨の協調運動のこと
・肩甲骨は肩関節屈曲時と外転時では支点がことなる


今回は以上になります.まで読んでいただきありがとうございました!
鎖骨もやはり肩関節をみていくうえで大切にするべき関節の一つだなと感じます.どの関節がどのくらい動くのかはやはり重要だと感じます.
この記事が読んでくださった方の臨床に少しでも参考になれば幸いです.

次回は腱板断裂についてまとめていきたいと思います!
今後ともよろしくお願いいたします.
それではまた…('ω')

【参考文献】

1)佐野亘.鎖骨・肩甲骨のバイオメカニクス.JpnJ Rehabil Med2016;53:750-753
2)竹井仁,他.MRI(磁気共鳴画像)を用いた水平面における肩関節の肢位の変化による肩鎖関節と胸鎖関節の関節運動学的解析.The Journal of Japan Academy of health Scienes:51-58
3)宇田宙照,他.上肢挙上時における鎖骨の運動解析.肩関節,1989,13巻,1 号,p. 11-15
4)森原徹,他.肩関節屈曲・外転における肩甲骨周囲の筋活動パターン~鎖骨肩甲上腕リズムに着目して~.肩関節.2011;35第3号:715-718
5)遠藤正樹,他.肩関節内・外旋運動における肩甲骨・鎖骨・胸椎の運動動態.第46回日本理学療法学術大会抄録集Vol.38 Suppl.No.2

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?