【 詞 と 詩 】 コバルトの降る街で
コバルトの降る街で
コバルトが降り積もる街で
君の後ろ髪を引くことができたなら
マルシェを蹴散らす嵐じゃなくて
鈍色の大地に花咲かす小春風を
未来はバラ色だと大人たちが放り投げた夢の残骸へ
「墜落しろ」
「不時着できる」
たった二人だけでさえ揃えられない言葉
冷笑してばかりの君と日和見がちな僕
あなたの罪を数えましょう
君の意地悪がまた始まる
画面越しの争いに食い入っては
冷めたコーヒーを捨てる
このかかとに縫い付けられた邪なコボルトの影
教室を知らない子供たちが暗がりで悪い咳をしている
せめて彼らを忘れないでいよう
そんなエゴと闘えるだろうか?
生きてたっていいことないよ
死ぬのなんて怖くないから
後生大事にしておくほどの感傷か?
ニヒリズムをコケにしていた君が
醒めた台詞を吐いている
無関係の善行で無視してきた罪を
傷つけてきた過去を洗い流すことができたなら
「ほら、そうやってまたズルをする」
「後生大事にしておくほどの感傷じゃない」
それでもこのエゴを一生大事にするよ
この街が冷たくても
君が闘う理由を見つけた世界を見てみたい
コバルトが降り積もる街で
君の後ろ髪を
君の朝焼けをその傍らに
マルシェを蹴散らす嵐じゃなく
鈍色の大地に花を咲かす小春風を起こせ
豊かさの代償を払いそびれたまま
偉そうなことばかり言ってられない
それで始めたつもりか?
感傷程度で終わらせるなよ
吠えているのは僕にしかないエルゴ
ただ一つ
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明日の叙景、ボーカルの布です。
今回は先日リリースしたばかりのシングル「コバルトの降る街で」の歌詞を掲載しました。
この曲の歌詞を書く前に「人生のステージが一つ変わった」と思ったといいますか、ライフステージの移行とは異なる、自分の中で大きな価値観の変化が生じたことを覚えております。
おそらく、初期の作品から描いてきた自己の掘り下げやファンタジーへの憧れというテーマに関しては2nd Album「アイランド」で納得がいく形で表現できたのだと思います。
「長い青春が終わった」「これで大人になれる」みたいな感じでしょうか。(もしかしてアダルトチルドレンであったことを白状している?)
そういった思いもあり、今作では他者との関係ないし社会というものにフォーカスの当たった歌詞になるように心掛けました。
社会問題をモチーフにすることはデリケートなことですし、これまで意図的に避けてきた部分ではあります。
少なくとも、今の自分では安全圏から好き勝手利用しているだけになってしまう、という思いはありました。
ただ、他者や社会と向き合う上では避けて通ることのできない一つの要素であると考え、作詞する際に意識しました。
結果としては単に社会を批判するのではなく、社会問題について考えることで自分の弱さや情けなさを省みることができたと思います。
他者に焦点を当てるつもりが、結局は巡り巡って自分に戻ってきてしまいましたが、これも自分らしさでしょうか?
「コバルトの降る街で」に関する話はこれくらいにしておきましょう。具体的なネタバレや解説は書きません。
聴いてくれた人、読んでくれた人にそれぞれの解釈があるなか、作り手が正解を提示してしまうと思考の広がりを妨げてしまうかもしれませんからね。
ただ、ファンの人が歌詞の考察をネットに書いたり、ときには直接話してくれることがあるのですが、それに関してはとても嬉しく思います。
自分の書いた歌詞を精一杯受け止めようとしている人がいると思うと、本当に励みになります。
皆さんが何かしら、今作の歌詞に触れたことで他者を想う気持ちに変化が生じたら嬉しいです。
最後に記事のタイトルである【 詞 と 詩 】について。
「詞」は歌に乗せられ、聴かれることを前提とした文芸の形態。
「詩」は文字として読まれることを前提とした文芸の形態。
一つ、そのように解釈されるそうです。
たまにサブスクで歌詞を公開しないアーティストを見かけます。特にラッパーが歌詞を公開していないと印象深いですね。
おそらくは目ではなく、耳だけでリリックを受け取ってほしいという思いがあるのではないでしょうか?
そうであるならば、その人はリリックを「詩」ではなく「詞」として強く捉えているのかもしれません。
それとはまた別に、音楽ライターのs.h.iさんがシャウトにおける歌詞と音楽の関係性について“歌詞込みでの聴取効果”という言葉で解説してくれております。
リプライで吊り下げられている内容も一緒に読むと大変勉強になります。
耳で聴きとれないからこそ読む作業が生じる。そして歌詞を読むことで音楽(演奏)と歌(シャウト)のつながりへの理解が深まる。
それならば、僕の「歌詞」は聴く「詞」であり、読む「詩」でもあるのでしょう。
そう解釈してタイトルは【 詞 と 詩 】
二つの字を並べました。
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ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
もう9月も半ばで夏の終わりを皆さん感じている頃でしょうか?(それともまだまだ暑さが厳しいでしょうか?)
この夏の終わりに、2nd Album「アイランド」の歌詞も振り返ってみようと考えております。
それでは次の【 詞 と 詩 】でお会いしましょう。
▫ライブ情報
2024.9.29 (日) 東京Veats Shibuya
2024.10.6 (日) 大阪バナナホール
Imperial Circus Dead Decadence×明日の叙景 2MAN SHOW
『神産む嵌合体と詩葬の彼岸』
チケットフロッグ
https://ticket-frog.com/e/icdd_2409-10
イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000116379
ローチケ
https://l-tike.com/search/?lcd=74086
2024.11.27(水)名古屋鶴舞DAYTRIP
Solo Concert “Island in Full” -extra-
LivePocket
https://t.livepocket.jp/e/daytrip_241127
zaiko
https://vinyljunkie.zaiko.io/item/366577
2024.11.28(木)大阪Yogibo META VALLEY
Namba Culture Terminal 2024 -1st Anniversary-
-act- OGAHM / OLPHEUS / SheeSawHarm / VISION OF FATIMA / 雲雀 / 明日の叙景
イープラス
https://eplus.jp/sf/word/0000159672