2月9日 出会いは必然
あくまで私の周囲に限るけれど、2人目が1人目より難産だと聞いたことがない。私にとってそれは9か月間、かなり強力な心の支えだった。
でも、妊娠中は間違いなく、2人目の方が辛かった。
長男を保育所に預けて復職したとたんの妊娠判明だったから、まともに働くことができたのはほんの二か月ほど。6月から9月にかけては特に悪阻と貧血がひどく、出勤するだけで精一杯だった。仕事中に休憩室で寝かせてもらったり、どうしても働き続けられなくて早退したりした日もあった。産休に入ったときは心の底からほっとした。
1人目の経験から、37週に入ってから出産までが一番幸せだと知っていた。だから産休に入ってからは、一日でも長くお腹にいてほしかった…けれど、一方でやはり、早く会いたいという気持ちもあった。予定日は2月9日。
ところが、である。2月6日の夜中、一緒に寝ていた長男が突然起きて、軽く嘔吐した。そして7日の朝も食欲がなく、下痢気味。慌てて小児科に連れていったところ、ノロウィルスとの診断。
幸い症状は軽かったものの、常に長男の世話をしていた私が動揺してしまった。
なんだか自分まで、気持ちが悪く、お腹の調子も悪くなってきた。ノロがうつったに違いない(結果的にはうつってなかった)。そこで8日に、夫と産婦人科に行き、事情を話して点滴をしてもらった。
長男は元気になりつつあり、私の母が面倒を見ていた。「あんたはそのまま出産まで入院すればいいのに」と母は言ったが、医者には家に帰された。
8日は散々だった。帰宅後、どんどんお腹の調子が悪くなり、トイレに行く以外はずっと寝ていた。水分を取るのが精いっぱいで、固形物は、カロリーメイトをかじったくらい。それまでの人生でも最悪レベルの体調だった。今はさすがに産めないな、と思いながら寝ていた。
しかし、2人目のなんと律儀なことよ。
9日の未明。4時ごろ。母と兄の体調?そんなもの知るか!俺は9日に出て行く段取りしてるんだよ!との声が聞こえてきそうだった。長男の時は確信を持てなかったが、二回目なので、「あ、これは…」とはっきりわかるほどの破水があった。
前日、ほとんど食べていなかったが、気持ちは落ち着いていた。今日、生むのね。予定通りに。
まず、なぜか長男のおむつを替えた。そして自分の着替えをして、夫を起こしにいった。夫の運転する車の中で、もうすぐ会う男の子の名前を話し合った。「A」という名前でほぼ決まりだった。長男はすやすや寝ていた。
朝6時ごろに病院について、長男を実家に預かってもらって、私はトイレや点滴を済ませた。このころには、さあ来い!という気持ちに。一人目も破水からだったので、だいたいこの後の予想がついた。それが強かった。少しずつお腹が痛くなってきた、24時間以内に産めばいいんだよね!そして、これから少しずつ耐えられない痛みがやってきて、一時間に1cmくらいずつ子宮口があくんだよね!
だんだんお腹が痛くなってきたけど、私も夫も心の準備ができていた。「痛い、って言ったら、とりあえずさすってほしい」などと打合せする余裕もあった。7時半ごろ、夫はコンビニに朝食を買いにいった。その間に助産師さんがやってきて言うには、「あ、もう8cmね。二人目だし、分娩室いこうか」。え、早くない??長男のときは、ここまで15時間くらいかかってたけど。
分娩室に行ってからも、助産師さんと話す余裕もあり。痛いことに変わりはなかったけど、10時ごろ、あっという間に出てきた。今回はカンガルーケアをする余裕もあったし、出血も少なめで、縫ったりもせず。
コンビニから帰ってきた夫は、病室に私がいないので驚いたらしい。入ってきて、「おつかれさま」と言った後、隣で寝ている小さな新人を見て、「おるし」と言って笑った。この赤ちゃんは、生まれたときから目もぱっちり開いていて、自然に出てきたから頭も伸びてないし、肌もぴかぴかで、とてもきれいな顔をしていた。
前日まで、「長男以上にかわいい赤ちゃんなんて生まれるわけがない」と思っていたのに、顔を見た瞬間から、私は次男の虜になった。
驚くべきことに、次男は生まれてきた当日から母乳を飲むのも上手だった。たっぷり母乳を飲んで、ぐっすり眠るので、私は彼の隣でゆっくりと一人で本を読んでいた。体もあまり痛くないし、入院食を楽しんだり違うママと雑談したりできるほど穏やかな気持ちだった。あの入院期間は、私の人生の中でも一、二を争うほど幸福な期間だった。なぜか不安はまったくなく、2人の子供の母親になったという幸せを存分にかみしめていた。
家に帰ってからは一人目の時以上にバタバタの日々が始まり、さらにこの子は三年近く保育園に行かず、とんでもないママっ子になるのだけど。そして誕生から一年もたたないうちに、世界は感染症によって未曾有の大混乱に襲われてしまうのだけど。
私のもとに来てくれた次男に、今年もありがとう。ちなみに、ほぼ確定だった「A」という名前がなぜか彼には似合わなくて、生まれた数日後に即席で「M」という名前をつけました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?