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”アフロ民藝”とは?「シアスター・ゲイツ展」

先日「シアスター・ゲイツ展」へ行ってきました。


正直全く知らず、「ちょっと時間あるし何かいい展覧会やってないかなー」と探していたところ目につきました。

全然現代アートへの理解ができていない私ですが、先日の美術館で発見した自分の新しい感覚にちょっと響き、(こちらの記事です↓)なんとなく今の気分で行ってきました。


まず、シアスター・ゲイツについて

1973年、米国イリノイ州シカゴ生まれ、同地在住。アイオワ州立大学と南アフリカのケープタウン大学で都市デザイン、陶芸、宗教学、視覚芸術を学ぶ。土という素材、客体性(鑑賞者との関係性)、空間と物質性などの視覚芸術理論を用いて、ブラックネス(黒人であること)の複雑さを巧みに表現している。2004年、愛知県常滑市「とこなめ国際やきものホームステイ」(IWCAT)への参加を機に、現在まで20年にわたり常滑市の陶磁器の文化的価値と伝統に敬意と強い関心を持ち、陶芸家や地域の人々と関係を築いてきた。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/02/index.html

とりあえず、常滑にいた、ということに親近感湧くw

そして彼の提唱している「アフロ民藝」とは?

「アフロ民藝」は、シアスター・ゲイツがハイブリッドな文化の未来構想として描く、黒人の美学と日本の工芸の哲学を融合させた新たな美学のマニフェストです。ゲイツが長年にわたり築いてきた日本、中国、韓国の陶磁器の歴史との関係をたどりながら、日本の民藝運動と米国の「ブラック・イズ・ビューティフル」運動という2つの重要な運動を反映する、芸術的で知的な試みです。両運動は、ともに文化的な独自性が、近代化と欧米化という外的かつ支配的な圧力によって脅かされていた時代に、大衆への訴求、学術的な討論やプロパガンダを手段として活発になりました。

ゲイツは「アフロ民藝」について「フィクションであると同時に真理でもある」と言います。これまでの活動の集大成として、ゲイツのアートに大きな影響を与えた民藝運動を生んだ日本で本展を開催することは、文化がその国で、世界で、そして文化間で醸成されていく過程へのオマージュであり、証でもあります。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/04/index.html

なるほど、わかるようなわからないような。

なので観るほうが早いと思い早速鑑賞。

入り口はいるとすぐにむせかえるようなお香の匂いと床に引き詰められた常滑焼きのタイル。


AFRO発見

このお香の香りは、シアスター・ゲイツが京都の香老舗 松栄堂の調合師と作り上げた、シカゴ、常滑の香りだそうです。
このお香、販売もしてましたよ。

その奥にはオルガンとスピーカー

『ヘブンリーコード』

ゲイツ曰く、「7人の姉、そして黒人音楽が私の現代アートの実践に与えた影響への敬意を表現しました」とのこと。
ここにおいてあるハモンドオルガンは黒人教会でゴスペルを歌う際によく使われるものだそうです。


その先には、取り壊される黒人教会で歌うゲイツの映像作品もあり、その歌声に魅入ってしまいました。


多方面に活動するゲイツの活動の一つ、2009年に設立した財団「リビルド・ファウンデーション」の活動も強い情熱を感じました。

恣意的に隔離され、土地の所有や投資などの平等な権利を与えられなかった黒人が多数を占めるシカゴのサウス・サイド。ゲイツは、この地区の廃墟となった40軒以上の建物を、誰もがアートや文化活動に参加できる空間に作り変えてきました。

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/theastergates/03/index.html


その施設に所蔵されている、黒人社会に関する書籍や資料の一部も実際に見ることができます。



次はゲイツの陶芸作品。

ゲイツの作品たち

なぜ常滑?と思ったのですが、調べてみると衰退していく常滑市の窯業の中で、外国人の陶芸家に来てもらって、日本の陶芸を勉強してもらおうということがきっかけでゲイツは来日したそうです。

日常で使われるものへの美学や尊敬、「民藝」との出会いですね。

一つ前の記事でも書いた、最近私が気になる感覚、「土、素朴?、自然、力強さ、ユーモア、人間味、」もここに通ずるのかも。

架空の日本人陶芸家「山口庄司」にまつわるプロジェクト「ヤマグチ・インスティテュート」も、面白いこと考えるなあ、と。

ゲイツが保管する常滑焼の作家 「小出芳弘コレクション」


<ハウス・バーグ>2018.2024年

最後はダンスフロアのようなスペースで、ネオンサインにミラーボール、常滑焼の徳利がずらりと並んだバーカウンター、そしてファンクミュージックが流れる空間。

ゲイツ曰く、「みんなでお酒飲んで踊ろう!」とのこと。

2時間くらいの鑑賞でしたが、ゲイツの活動の幅広さとパワフルさにまず圧倒されました。

それぞれの作品の根底にある、黒人であることの誇り、そしてどの時代、どの国においても職人に対するリスペクトを感じ、その背景まで考えを巡らせていくと、とても2時間では足りないなと。

1973年生まれのゲイツであっても、まだまだ根強い黒人差別や偏見を感じるからこそ生まれた「アフロ民藝」という言葉であると思います。

たまたま先日、NHKの映像の世紀で、「奇妙な果実 怒りと悲しみのバトン」を見ました。 歴史や映画などで黒人の歴史や差別の空気感はわかっていたつもりでしたが、とてもショックでした。

今も続く悲しみや怒りの歴史の中でも、現代に生きるゲイツだからこそできる多様な表現なのかなと。
アーティストでもあり、活動家?という言葉も当てはまるような。

ほんと、人種も、国籍も、職業も、宗教も、何もかも超えてみんなで「飲んで踊れる」日が来るといいな、と思いました。


「美術館ナビ」のサイトに載ってた、歌舞伎俳優の片岡亀蔵さんと、森美術館のキュレーターの徳山さんとの連載記事が面白く、わかりやすかったのでオススメです。



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