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愛知で『世阿弥のキス』を観てきました(※ネタバレ注意)

柿喰う客の新作『世阿弥のキス』を観られるということで、はるばる愛知県は豊田市までやって来ました。

・公演について

2023年2月12日(日)
開場:13時
開演:14時
@豊田市能楽堂

上演時間:約70分

・あらすじ

県立やる気坂高校に入学した男・村松。
小学校から熱意を注いだバスケットボールを辞める決意を固める。
それを聞き驚く先輩・ハヤト。
果たして村松が求める青春とは?
(※公演パンフより原文ママ)

※以下ネタバレ注意⚠️


・登場人物

村松:村松洸希さん
ハヤト:守谷勇人さん
キョウコ:とよだ恭兵さん

・ざっくりあらすじ説明

小さい頃から続けてきたバスケを辞め、キスをすることを夢見る高校1年生の村松。
村松は偶然隣の席になったキョウコに運命を感じる。キョウコは能楽を愛する女子高生で、「村松が能楽研究会の部員となり、能を上手く舞うことができたらキスをしてあげる」と約束する。
そこに村松がバスケをやっていた時の先輩・ハヤトも能楽研究会の部員に加わる。
村松とハヤトはキョウコとのキスを賭け、どちらが『班女』を上手く舞うことができるかを競う。

・感想

今回、初めての能楽堂での観劇。
能楽は敷居の高いイメージがあり、能楽堂の洗練された華美な雰囲気に気圧されながら入場。
客席に入ると、目の前にどんと立ちはだかる能舞台。
大好きな松本大介さんの照明。怪しげな紫に近いピンクに染められた能舞台に柿っぽさを感じてわくわく。
客入れの音楽がなかったのでしんとした静寂の中、開演を待ちました。

いよいよ開演。
橋懸りから村松さんが摺り足で登場。
上下にブレない摺り足が凄いなと思いながら緊張感と期待感いっぱいに、その足取りをじっと見つめました。
いざ本舞台に着くと村松さんが能楽独特の話し方で語り始め、もしやガッツリ能の作品なのか!?とびっくり。
その後、ハヤト先輩(守谷さん)が普通の話し方で登場してきたのでそのギャップが面白かったです。

全編通して能のお芝居と現代演劇が入り混ざる感じで進んでいきました。
能のゆっくりした話し方には思わず耳をすませて見入っちゃうし、そこから普通の話し方になるとふっと力が抜ける感じになる、その切り替えのタイミングが絶妙で見てて楽しかったです。

スローリーなお芝居だったので、いつもの柿のような早口や韻踏みまくりの台詞はないものの、パワーワードや突飛な設定が柿っぽいなと思いました。たまにギャルっぽいJK言葉が入ってくるのがとてもツボでした。
早口と圧倒的な台詞量を封印しても柿の作品は最高です。
よく通る声と能の動きを長時間できるフィジカルの強さはさすがでした。

そして、恭兵さんがまさかの女子高生役!
短髪にセーラー服を着た美脚JK・キョウコが摺り足で現れてザワつく客席。(笑)
少女漫画のあるあるシーンが能で演じられて笑いが止まりませんでした。
男同士のバトルと友情、ピュアな恋愛が能で演じられることにも次第に慣れていき、甘酸っぱい青春模様にキュンキュンしました。
「野村萬斎のBlu-ray」がお気に入りワードです。(本編見た人は分かる)
 
青春を感じながら楽しんでいると、ハヤト先輩のとある一言でハッとする展開に。(ネタバレになるので詳細は伏せます)

物語の最後に心に痛みと切なさを残していく、この一筋縄ではいかない感じが柿らしくてめちゃくちゃ好きです。
『班女』であることの意味、夢幻能的な要素も感じ、能楽×現代演劇が見事に融合していて美しかったです。

能に詳しくない人でも絶対に楽しめるし、知っていたらもっと深く楽しめるだろうなという作品でした。
能を見たことがない小さなお子さんが見てもきっと楽しいと思います!


能楽堂だからこそできる演劇なので、愛知まで観に来て良かったなと思いました。
1公演しかなかったのがもったいないくらいの素敵な作品でした。
いつかまた観られる日が来ることを祈っています。

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