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8割がビールを飲む習慣がないインドネシアでも、おいしいビールが飲みたい!【Love! Indonesia Craft Beer】vol.1

「え、インドネシアって、ビールを買える場所が決まってるの!?」

これは、インドネシアでの生活を始めた私の、一番びっくりした情報だった。

そう、インドネシアはビールがどこでも買えるわけではないのだ。大きなスーパーでもデパートでも、基本的にビールをはじめ、お酒が買える場所が限られている。専用コーナーに、専任のスタッフがいる。コンビニにおいては、まずお酒を取り扱っていない。

とはいえ、買えないわけではないので、お酒を売っている場所でビールを買えばすむ話。でも、そもそもその場所が少ない。そして、流通しているのは基本的にほとんどが味が薄めのビール。「ちょっと気分を変えて味の違うクラフトビールを飲みたい!」なんてことになると、もはや打つ手はほとんどない。

インドネシアは、世界で最もイスラム教徒が多い国。人口2億7千万人のうち、8割がイスラム教徒である。イスラム教は基本的に飲酒を禁じているため、彼らには飲酒の習慣というものがそもそもない。

日本を離れ海外で生活したり、旅行したりすると、その国の文化や風習に触れる。「郷に入っては郷に従え」と言う通り、違いを楽しむことが異国の満喫方法だ。もちろん、おっしゃる通り。そうだと思う。でもね、住むとなると毎日のこと。ちょっとばかし話が違う。

旅行でインドネシアを訪れた家族は、「手に入るビールで十分だよ」「ビールを飲みにきたわけじゃないし」と笑い飛ばす。
インドネシアに住んでいる友人は、「一時帰国の時においしいビールが飲めればいいよ」「他の国に旅行へ行った時にでも飲むよ」と諦める。

……それで我慢できちゃうの?
インドネシアでだって、おいしいビールを飲みたくないの?

クラフトビールが大好きな私は、渡航早々に頭を抱えることとなったのだ。


私は20歳の頃から、1日の終わりに飲むビールを楽しみに生きてきた。特に社会人になってからは、「その日のビールをおいしく飲むために仕事を頑張った」と言っても過言ではないと思う。そのくらい、私はビールが好きだ。

大学のドイツ留学でドイツビールと出会い、その個性あふれる味から大のビール好きとなった。欧州各国のビールを飲んで周り、在独1年で10kg増えたほどだ(必死で体重は戻した)。

ドイツからの帰国後は、現在醸造家としても活躍する恩師の元でビールを学んだ。「ただのビール好き」に、「知識」や「作り手の存在」を教えてくれた恩師には、今でも感謝しかない。飲んだビールは15か国を超え、100種類以上。旅行が好きなこともあり、各地のビールイベントに15年連続参加していた。そのくらい、ビールが好きだ(2回目)。

そんな私が、この度インドネシアは首都ジャカルタに住むことになった。2019年に夫の海外転勤に伴って、ビールを飲む習慣がない国であるインドネシアに夫婦で引っ越しをした。私にとってその環境で暮らすことは、さながら一大事だった。どうしたらいいのか、どうやって過ごそうか、そんなことばかり考えていた。

そんな中、2020年にコロナ禍で、なかば強制的に日本に一時帰国をした。落ち着いた頃、2022年に今度は2歳の息子も一緒に渡航し、インドネシアでの生活が再開すると、なにやら新しい動きが起こっていた。8割の人がビールを飲まないインドネシアで、なんとにわかに「クラフトビールブーム」がやってきたというではないか!

そのブームの立役者は、バリ島。バリ島は世界でも有数の観光地で、外国人の来訪者も在住者も多い。ヒンズー教が主体の島で、宗教上の飲酒が認められている。そんな背景から、醸造許可が通りやすく、クラフトビールづくりが増え始めたそうだ。

お酒を飲まない習慣が主体の国なのに、クラフトビールブームが起きるなんて!
バリ島、ワンダフル!

そんなバリ島で私はインドネシアのクラフトビールに出会い、恋に落ちた。地元の原材料を使った、ここならではの味。それはもちろんなのだけれど、子連れでお酒が飲める場所が充実していたのだ。ビアレストランにアスレチックがあったり、プレイグラウンドが併設されていたり、日本ではなかなかないお店のコンセプト。

インドネシアは17,500以上の島から成る国ということもあり、島ごとに独自の習慣や宗教、文化が根付いている。だから、多文化共生の精神が強い。宗教や思想、思考においても、個が尊重される。ことバリ島においては、外国人の出入りが多いこともあり、さらにその柔軟性が高い。

首都ジャカルタのあるジャワ島にも、そのブームの波がじわじわ来ているのを、現地に住みながら実感していた。ビール醸造所があるビアレストランがにぎわっていたり、クラフトビールを取り扱うバーができたり、「これはきてるぞ!」と、ビール好きのアンテナがビンビン反応していた。

かくしては私はインドネシアのクラフトビールを好きになった。バリ島に至っては、2歳の息子を連れて半年で3回通い、1ヶ月半はいたことになる。

このマガジンでは、こんな私がインドネシアで送っていたビアライフを、現地の情報や観察を交えてご紹介したい。

2歳の息子を連れていても行ける、おいしいビールを飲める場所もある。子連れのママだって、人目を気にせず飲みたい。でもその時間は、私も息子もお互いが楽しい時間であってほしい。

これは、いわゆる駐在妻のビール好きなママが、インドネシアで子育てしながらインドネシアのクラフトビールを楽しむビアライフのエッセイマガジン。

子育てもビアライフも、私にとってはどちらも大事。そしてインドネシアは子育てするのに最高の場所だと、私は体感した。多様性に寛容なインドネシアスタイルが、大好きだ。

まだこのクラフトビールブームが序盤だと言うこともあり、インドネシアのクラフトビールの情報は、なかなか日本には入ってこない。遠い異国の地、しかもお酒を飲む習慣がないインドネシア。他にも魅力がたくさんある国なので、気に留める人も多くないかもしれない。

でも、インドネシアのクラフトビールブームは、注目する価値がある。だって、「飲酒の習慣がない国」で起こっているのだ。

ビールが好きな人は、インドネシアのクラフトビールに興味を持つようになる。
インドネシアに住んでいる人やこれから行こうとしている人は、ここに行ってみようという情報になる。

インドネシアをまだ行ったことがない人は、まるで現地を旅行している気分になる。
海外子育てや子連れ海外旅行に興味がある人にも、おすすめしたい。

ママだって、インドネシアでおいしいクラフトビールが飲みたいんだもん。

ぷしゅっ!




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