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「脳内」モテ期到来!大型書店は出会いの宝庫

10年くらい前に住んでいた街に、お気に入りの食器屋さんがあった。

コンクリ打ちっぱなしの大きな箱のような外観なのに、店内は木をたくさん使ったやわらかい雰囲気のお店。食器は、素材感や風合いをじっくりと活かしたような素朴な風合い。お店のシンプルな内装や食器の並べ方など、好みど真ん中だった。

隣にカフェが併設されていて、お店の器で提供されるお料理も人気。そのうち、そのお店の器を使って盛り付けまで楽しむという趣旨の料理教室が開かれ、もれなく私は半年ほどその教室に通った。

店内では好きな食器に囲まれて、あれもかわいい、これも素敵、など目移りばかり。じっくり選んでいるように平静を装いながら、脳内ではアドレナリンがどぱどぱと出ていた。安くはないから全部は買えないし、場所もとる。だいたいそれに見合う料理の腕前が準備できていない。でも、家に置きたい。連れて帰りたい。

ただただ、自分のアンテナがビンビンに立っているのを実感できる時間だった。引っ越してしまった後も、今なおにぎわう人気店だという。


そんなことを思い出すくらい、今日の私はアンテナがビンビンしていた。今日は久しぶりの友達に会うべく、街中へ出かける予定だった。けれど、友達の都合が悪くなったので、ランチは見送りに。

気持ちを切り替えて、久しぶりに街中の大型書店へ行こうと思い立った。ライター塾のゼミ生が、こぞって本を読んでいる様子に感化され、にわかに私のなかの読書熱が高まっている。

新刊や話題本との出会いが目的だった。おすすめの本をいつもネットで購入し、まだ読めていない本すらあるのに、でも新しい本に出会いたいという欲求が勝った。

地下1階から7階まで本をずらりと抱える大きな書店には、自分の背丈よりもずっと高い本棚が肩を寄せ合っている。棚には、きちんと整列したピカピカの新しい本たち。美しい、荘厳な雰囲気すら漂うその光景に圧倒され、失礼のないように思わず姿勢が良くなってしまう。

紙特有の匂いも、書店ならではだと思う。せっかく来たのだから、書店散歩をしようと、普段は立ち入らないエリアの書籍のタイトルに身を預けたりなどしてみた。狭い路地をキョロキョロしながら歩く。

「エッセイは文で芸ができるから文芸」とライターのお師匠様であるさとゆみさんが教えてくれた。なるほど、しっかり「文芸」コーナーにあり、あらためて文芸というカテゴリを認識する。

活字の海。まっさらな書籍の肌触り。視界に入る数え切れないほどたくさんの書籍たち。
心臓がドキドキする。鼻の穴が広がる。視界がくるくる変わる。頭の中が大騒ぎだ。

これが噂の話題作か!
それはなんだ?
あれも気になる…
どれがいいかなぁ

私の気が多いのも問題だけれど、本たちもよってたかって、私に言い寄ってくる。アピール力がすごい。あの手この手で、私の足を止めようとする。そのパワーにほだされてしまう。

「僕を見て!」
「私を読んで!」
「オレを手に取れ!」
「わいはここやで(謎の関西弁)!」

人目もあるので平静を装っているけれど、脳内はもう完全にモテ期だ。一夫多妻制よろしく、「えー、仕方ないなぁ。5人(冊)までだよ?」と勝手にニヤニヤしながら厳選しながら本を手に取っていく。

もちろん別れる(買えない)人(本)もいる。別れ話(買うか買わないかの検討)を何度もしながら、「またね」とていねいにお別れを告げた人(本)もある。

結果、レジ前で1人(冊)増えて、6人(冊)と契りを交わした(レジでお金を払った)。

気づけば、11時に入店してから3時間半が経っていた……。本来なら友人と談笑していたであろう時間が、丸ごとすぎていた。空腹感は満足感となり、お腹いっぱいだった。飲まず食わず、座ることもなく、歩きっぱなしで立ちっぱなし。じんじんと足腰が痛い。そういえばトイレにも行ってない。

忘れてた贅沢な時間の過ごし方。食器屋さんの時と同じで、買った書籍たちを迎えられるほど、私の準備ができていないものもある。でもここ最近感じたことがないくらいの心の充実度だった。


現実に戻った私はその反動で、いつもの1.5割増くらいのラーメンをお腹いっぱい食べた。待ち切れないで、帰りの電車で読書開始。

さぁ、今週から読書記録をつけよう。



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