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インドネシアで受け取った先輩からの子育てエール【「『推し』を推す」マラソン】#2

「魔の2歳児」とも別称がある、子どものイヤイヤ期。そのイヤイヤ期真っ盛りの2歳児を連れて、インドネシアで海外子育てという貴重な体験をしました。

絶賛やんちゃ盛りの息子は、どこだろうとお構いなしで姿を消します。神出鬼没に動き回り、手を焼いていました。治安がいいわけではないので、ハラハラした回数は星の数。

当時担当してくれた現地のドライバーさんは、とても穏やかで口数の少ない年配の男性でした。息子に振り回されても、嫌な顔ひとつせずにいつもにこにこ。その度、私は彼にていねいなインドネシア語で謝罪する日々でした。

渡航して2ヶ月した頃、いつものようにイヤイヤ発動する息子。私があたふたしていると、彼は改まった様子で声をかけてくれました。

「いいかい?あれこれやろうとする子は、いろんなことを考えている証拠だよ。興味の方向が幅広くて、たくさんのインスピレーションで頭の中がとっても忙しいんだ。たくさんの発見や発想力は、そういう行動から生まれるんだ。だから、そういう子を見ると、とても嬉しい。

その子どもの忙しさを遮らなくていいんだよ。行動を制限することは、可能性を制限すること。子どもと同じ目線に立って、楽しめたらいいよね。怒ることも、謝ることも必要ないよ。大丈夫。」

瞬間、彼の顔が滲み、自分が泣きそうになっていることに気がつきます。いつもの穏やかな口調で、でもいつもよりていねいに、はっきりと、私に伝わるように単語を選んでいるのがわかりました。指摘でも押しつけでもなく、先輩から若輩者へ向けた子育てエールです。

私は胸がじんとあたたかくなって肩の力が抜け、「ありがとう」と答えるのがやっと。頬をつたう涙が、一筋。不慣れな土地で、なんとか毎日を過ごし、肩肘張っていたのだと気がつきます。

彼の言葉を忘れたくなくて、急いでメモに残しました。産後、50冊以上育児書を読み漁った私ですが、この言葉は何より私の支えです。彼の穏やかで優しい笑顔とともに。


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