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子供が入院した話③

次女、初めての入院

前回の「子供が入院した話」から時は流れ、

2人の娘は小学生になった。

2人とも、風邪をひくたびに中耳炎を

繰り返す子だった。

長女は小学生に入ると丈夫になり、病気・ケガで

病院のお世話になる機会も減ったが、代わりに

次女はアレルギー性鼻炎もあり、頻繁に中耳炎

を繰り返していた。

正直に言って、あまりにしょっちゅう中耳炎に

なるので、

「またか・・・。」

くらいの感覚で、そんな大した病気だとは

思わなくなっていた。

あの時までは・・・。

次女が小学2年生の時、いつものように

耳鼻科を受信し、いつものように

「鼓膜に穴が開いていますね。」

そう言われた。

またふさがるまで、薬を飲むのか。

そう思っていた時、お医者さんが思わぬ事を

口にした。

「・・・これはふさがりませんね。」

通常、中耳炎を起こすと、鼓膜に穴が開く

事がよくあるのだが、少ししたら自然に

再生して、ふさがることが多い。

次女も何度も鼓膜に穴が開いては、再生の

繰り返しだった。

ところがあまりにも何度も穴が開いた鼓膜は

再生することができなくなり、とうとう

ふさがらなくなったのだ。

お医者さんは淡々と説明を続けた。

「これは手術をしなければ、いけませんね。

紹介状を書きますので、こちらの病院に行って

ください。」

そして大きな病院へ通う事になり、

そこで中耳炎が落ち着いたら、

手術をすることになった。

手術は耳の後ろを切って、鼓膜の部分に人工の

鼓膜を張り付けるというもの。

長女の時の入院はいつも突然、決まったが、

今回は手術まで半年くらいの猶予があり、

手術の日も事前に決められていた。

万全の準備をして入院に挑めるのは、

ありがたかったが、手術を受けるのは

はじめての経験だった。

しかも全身麻酔。

突然、入院になる場合とは違う緊張感が

あった。

もちろん次女にも、手術の事、入院の事、

全て話し、学校へ連絡して先生にも入院する

期間の事を伝えた。

「次女が怖がったらどうしよう。」

との不安があったのだが、本人はケロッと

したもので、

「学校休んで、ママと一緒に居られるの!?」

となぜか嬉しそうですらある。

「そうそう、ずっと一緒だからね。」

そして前回の入院の反省点を踏まえて、3DSを

買うと約束した。

病院にはWi-Fiは無かったので、ネット回線を

使わず、テレビカードの節約を考えた結果、

中古の3DSが一番コスパが良い

との結論に至った。

次女は

「ゲームを買ってもらえる。」

「学校休める。」

「ママと一緒に居られる。」

となぜか入院の日を楽しみにする始末。

旅行の時に使うキャリーバックを用意して、

着替えはもちろん、お気に入りのぬいぐるみや

塗り絵など、バカンスにでも出かけるかのように

準備した。

義両親がお見舞いに来てくれることになったが、

手術後は具合が悪かったりするかもしれない

からと手術前に来てくれる事になった。

入院して次の日には手術なので、入院当日に、

「どうせなら、ランチを一緒に食べてから病院へ

向かおう。」

ということになり、家族皆でイオンで食事をして

から、病院へ向かうという余裕っぷり。

次女はまるで、誕生日を祝ってもらうかの

ように終始、機嫌が良かった。

そして、無事に病院に到着。

簡単な検査をして、その日は終わった。

次の日はいよいよ手術の日。

どちらかというと私の方がドキドキしていたと

思う。

麻酔は注射ではなく、吸入麻酔薬と言って、

ガスを吸って麻酔をかけるものだった。

手術室に移動するときに、看護師さんが

車椅子をもってきた。

そしてタブレットを次女に渡すと、

「この中でどれが好き?」

と聞いてきた。

タブレットを覗くと、そこにはアニメの動画が

沢山あり、次女はディズニーの映画を選んだ。

「じゃ、これ見ててね。」

看護師さんは次女を車椅子に乗せ、タブレットを

渡した。

動画に夢中になる次女。

そして、車椅子のまま、手術室へ向かった。

手術室へ向かうにつれ、どうしても私は緊張して

ぎこちなくなってしまう。

もし私と一緒に手を取り、手術室へ

向かっていたら、私の緊張が次女にも伝わって

しまっていただろう。

しかし次女は麻酔ならぬ、魔法にかけられて、

タブレットに見入っている。

真っ白で無機質な手術室に入ると、メスや

注射器などの医療機器が整然と並べられ、

どうしてもそういった物に目がいってしまう

のだが、次女はそんな状況でも動画から目を

離さない。

車椅子からベットへ移されても、脇で

看護師さんがタブレットを持っていてくれる。

そしてガスマスクをつけられて、プリンセスの

世界にどっぷりとつかったまま、次女は眠りに

ついた。

そして私は手術室を後にして、病室で待機する

事になった。

手術は長くても2時間ほどで終わるらしい。

夫が来てくれて、

「仕事が残っていたら、今のうちに工房に

戻ってもいいよ。」

と言ってくれたが、とても仕事の事など、

考えることができなかった。

それでも病室でじっとしている事も

出来なかった。

麻酔から覚めた後はご飯が食べられない

かもしれないから、ゼリーなど食べやすい物

を食べさせても良いとの看護師さんの話を

思い出し、次女の好きそうなヨーグルトや

ゼリーなどを買いに行った。

そして、手術は無事に終わり、次女が病室に

戻ってきた。

すでに麻酔から覚めてはいたが、全身麻酔で

内臓の動きが弱くなり、気分が悪くて吐き気

があるようで、ベッドに戻ってからしばらくの

間、ずっと気持ち悪そうにしては吐くの

繰りかえしていた。

結局、その日は薬以外の物を口にする事は

出来なかった。

次の日には少し気分が良くなったようで、

買ってきた3DSで一緒に遊んだり、

お絵かきをした。

そしてこの日から看護実習生の学生が実習の

一環で次女を担当してくれることになった。

もちろん必要な処置は看護師さんがすべて

やってくれたので、看護実習生のアイミ先生

は1日1回、次女と遊ぶという係を担当して

くれた。

気分が良くなるにつれて、暇しがちな入院生活

で自分と遊ぶ係がいるのは、とても贅沢な待遇

だった。

娘はすぐにアイミ先生が来てくれるのを心待ち

にするようになった。

アイミ先生と作った折り紙はその後、次女の

宝物になった。

そして退院の日。

アイミ先生にお別れを告げて、家に向かう。

経過観察のための病院通いがしばらくは

続きそう。

子育てはいつもスリリングで時に

予期しないハプニングがあり、

悩み、迷い、考えの連続だけど、

これからもママも子供達と

一緒に成長していきたいと思う。








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