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直売所というコミュニティスペース

私達の町には、ぽぽんた市場という農産物直売所がある。

町の花である「たんぽぽ」を逆から読んで、「ぽぽんた」。

 その名の通り、今流行りのマルシェ風のオシャレな直売所ではないけれど、農家の人が作った規格外の野菜が安く売っている、昔ながらの直売所だ。

 農家の人達は朝が早い。

 早起きして、収穫して、10時の開店に間に合うように、野菜を持ってくる。

 お客さんも朝が早い。

 近くにある道の駅は、キャンピングカーの愛好家の間で有名だ。

 温泉があって、駐車場が広くて、夜トイレが使える。

 一晩、キャンピングカーの中で過ごし、次の目的地に行く前に直売所で買い物をしようと、開店待ちをしている人もいる。

 お店のドアが開くと、お客さんがやってきて、次々と新鮮な魚や野菜、加工品などをカゴに入れる。

 レジではパートの女の子が慣れた手つきで、会計をしている。

 そのお店の舞台裏、小さな事務所では10時からの恒例、おばちゃん達のティータイムが始まる。

 コポコポ、コーヒーを沸かし、お菓子なんか出してくる。

 朝5時に起きたら、10時の時点ですでに5時間、労働した事になる。

 カフェインと甘いものでようやく休憩。

 子供や孫の話、自分の体調、誰かさんの話・・・話題は毎日、尽きることはない。

 私がたまに顔を出すと「あれも持ってけ、これも持ってけ。」と沢山の野菜をくれる。

 時には車に戻ると、私の車に勝手に野菜が積んである事すらある。

 おかげ様で自分で作る気がしないので、いつまで経っても野菜作りが得意にならない。

 チーズは軽くて、小さくて、単価が高いのだけど、野菜は重たいわりには、値段が安い。

 作るのも大変だけど、運ぶのも大変。

 それでも毎日、おばちゃん達のティータイムは楽しそうだ。

 直売所があって、良かった。

 小さな田舎町でも、限界集落でも、みんな集まってお茶できるから。


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