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誤解だらけの牛飼いの世界

都市伝説!?それとも一般常識!?

酪農・畜産、もっと言えば、チーズだって、

世間から結構な誤解を受けています。

生産現場では当たり前すぎて、特に主張するほど

の事でもないと思っていたのに、SNSに何気なく

投稿したら、随分と拡散された…。

そんな事がよくあります。

・畜産製品は抗生物質まみれ
・畜産は環境に悪い
・ウシは成長ホルモンで肥育されている
・ウシは穀物を沢山食べている
・妊婦はチーズを食べてはいけない

挙げればキリがないですが、生産現場の

人間として、少し解説していきます。

畜産製品は抗生物質まみれ

「家畜を飼育する際には、沢山の抗生物質を使う。」

「肉や乳製品で抗生物質を摂取する事になる。」

「病気になった時に抗生物質が効かなくなる。」

そんな話を聞いた事はありませんか?

では実際の現場では、どれほど抗生物質が

使われているのでしょう?

私の専門である酪農についてのみ、お話します。

基本的に病気にならない限り、抗生物質は使いません。

もちろん、病気になれば抗生物質を使います。

抗生物質は人間にとっても、ウシにとっても、

適切に使えば救えなかった命を救ってくれる

魔法のような薬です。

少し具合が悪そうだな…と思いながら、様子を

見ていたら翌日には息を引き取っていた。

そんな事もあります。

ウシは人間のように「具合が悪い」と主張しないのです。

あの時、すぐに抗生物質を打っておけば、

命をすくえたのに。

そう後悔する事もあります。

もちろん、治療をしている間は牛乳は出荷できません。

搾るけど、捨てなくてはいけないので、酪農家に

とっては損失です。

ごまかして、出荷するなんて事もできません。

なぜなら、集荷のたびに検査をするからです。

畜産は環境に悪い

「ウシのゲップが温暖化の原因に!」

という話はどうでしょう。

確かに、反芻動物は胃袋の中で草を発酵させて、

メタンガスを出します。

そしてメタンガスは温室効果ガスと呼ばれています。


そもそも反芻動物というのなら、野生のエゾシカ

だって、ゲップをしてメタンガスを出します。

不思議な事に畜産を悪者にする人の中には、

害獣駆除を嫌う人もいます。

反芻動物のゲップがいけないのであれば、

「エゾシカをどんどん駆除してメタンガスを減らそう!」

という議論が出てきてもおかしくないのに、

それは聞いた事がありません。

環境問題ではなく、動物愛護の観点から

「畜産や狩猟反対!」なら分かりますが。

もちろん動物愛護の観点からも畜産は悪ではない

と主張できますが、長くなるので、こちらはまた今度。

そもそもメタンガスはバイオガスプラントが

普及すれば、発電に使えるのです。

火力でもなく、原子力でもない

クリーンエネルギーです。

まだ時代が追いついていないので、メタンガスが

悪者扱いされているだけで、近い将来

「宝」になるポテンシャルを秘めています。

ウシは成長ホルモンで肥育されている

結論として、国産の肉、乳製品であれば、

成長ホルモン剤を使わずに育てられているので、

心配しなくても大丈夫です。

海外では肉牛の肥育の際に肥育ホルモン剤が

使われていますが、日本では肥育農家が

ホルモン剤を買おうとしなかったのです。

そこでメーカーが認可を求めても、

商売にならないと判断して、申請を

取り下げたのです。

なので今も日本ではホルモン剤の使用に関して、

農水省から認可が下りていません。

成長ホルモン剤を使用した畜産製品の安全に

関しては、諸説ありますが、気になるのであれば、

肉や乳製品は国産を選ぶようにしてください。

ウシは穀物を沢山食べている

皆さんは牛のエサは何だと思いますか?

牧草?それともトウモロコシ?

大きな体のウシだから、穀物を主に食べている

と思っている方もいるのではないでしょうか。

ウシは体の構造上、穀物を消化するのに

適していません。

もちろん穀物はカロリーがあるので、

食べさせると肉や牛乳が沢山とれます。

ただ私達がカロリーの高い食べ物ばかりを食べる

と病気になるように、ウシも穀物を沢山食べると

病気になるのです。

さらに穀物と言っても、醤油や大豆油を作る際に

残った粕などもウシたちのエサになります。

これらの産業廃棄物を美味しい肉やミルクに

変えてくれるのです。

北海道の牧場ではデントコーンと呼ばれる

家畜用のトウモロコシも沢山作られています。

これは茎も葉もみんなコンバインで砕き、

サイロに詰めて発酵させます。

人間のように実だけを食べて、残りは全て捨てる

ような贅沢な食べ方はしません。

妊婦はチーズを食べてはいけない

ちょっと番外編。

これもよくある誤解です。

国産のナチュラルチーズは加熱しなくても

妊婦さんに安心して食べていただけます!

「妊娠中はナチュラルチーズNG」

という話はおそらく、リステリアによる食中毒を

心配しての話だと思います。

フランスではチーズを作る際に原料乳を加熱殺菌

せずにチーズを作ります。

そのためリステリアによる食中毒をおこすことが

あるのです。

妊娠中でなければ、リステリアはとても弱い菌

なので心配する事はありませんが、妊婦さんの

場合は流産や早産に繋がる危険があります。

日本ではチーズ製造の際に加熱殺菌が

義務付けられています。

どうしても心配な場合はピザなど加熱料理で

チーズを楽しんでくださいね。


このように生産者としてはわざわざ発信する事

でもないような常識でも、一般の人にはまだまだ

伝わっていない事が沢山あります。

特に個人が海外の英語記事を翻訳してネットに

投稿できる時代。

多くの誤解が広がる事は当然かもしれません。

だからこそ、生産者として現場の「あたりまえ」を

伝え続けていこうと思います。

「チーズや酪農の話、もっと聞きたい」

という方は、下記のリンクからメルマガに

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チーズのお話を配信していきますね。

https://my32p.com/p/r/xZJamSBg





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