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ミロンガへの憧憬〜前編

書き手:Haruna タンゴ入門知識を綴るにあたり避けられないテーマ、「ミロンガ」。タンゴwikiを書くつもりは無いけれど、自分が見て聞いて経験した内容をもとに、タンゴ未経験者にもわかるよう、ミロンガについての入門知識を公開しようと思う。

Milonga = ミロンガ

タンゴを始めると必ず耳にする「ミロンガ」という言葉には2つの意味がある。一つは音楽のジャンルで、もう一つはタンゴを踊るダンスパーティのことだ。

ミロンガという言葉はバントゥーの言葉に由来し、この表現は「歌詞」を意味する。

バントゥー語?はアフリカの言葉らしい。アルゼンチンは移民で形成された新しい国で、タンゴも移民達の文化が混じり合って作られてきた経緯がある。現在は「ミロンガ」と言っても「歌詞」という意味はない。

ミロンガといえば、古書の街神保町にミロンガ・ヌオーバという昭和な喫茶店がある。今時珍しく煙くゆる喫茶店(カフェではないのだ)で、近くには東京大学があり、拗らせ大学生にも人気があったと思う。ちなみに筆者も東大に延べ7年間通っていた。同じエリアのラドリオさぼうるも二十歳そこそこの学生心をくすぐる懐古趣味な喫茶店だ。ミロンガ・ヌオーバでは終日タンゴ音楽をかけていて、店内には明治大学のタンゴ同好会だかの会誌をまとめた冊子が置かれていて、なかなか読み応えがある。タンゴは1950~60年台に日本で爆発的なブームとなったらしい。日の目を見たのも束の間、ビートルズの流行により隅へ追いやられたというのも面白い。実は筆者は東大のビートルズ専門バンドサークルで4年間ほどリンゴ=スター役としてドラムを叩いていた経験があるので、その偶然の巡り合わせ(ってほどでもないけれど)に何ともいえないむず痒い気持ちになる。

ミロンガ・ヌオーバ⇓

https://visit-chiyoda.tokyo/app/spot/detail/305


ミロンガはどこで行われているのか

ミロンガはダンスパーティ。会場はクラブやレストラン、ホテルのパーティ会場など様々だ。東京に限っていえば、タンゴ専門のダンススタジオまたは一般的なダンス用のレンタルスペースなどで毎日のように開催されている。タンゴスタジオの重要な収入源でもあるので、各スタジオが週1から2回それぞれ開催し、月曜は銀座、火曜は表参道、などと毎日どこかで開催されている状態だ。ゲストダンサーやバンドを招待して特別なイベントを開くときは、ホテルやレストランを貸し切ることもある。


誰がミロンガを主催しているのか

これも日本に限っていえば、スタジオを持つタンゴダンサーか、タンゴを主収入源としないタンゴ愛好家のどちらかだ。前者にとっては都心のスタジオ賃料を支払うための重要な収入源。後者の場合はとにかくタンゴが好きなのでミロンガを企画し、場所だけを借りて運営する。

主催者が誰かというのは結構重要で、例えばスタジオ持ちダンサーが主催すると、参加者も生徒が大半を占めたりする。主催者は自分のスタジオにくる生徒以外と関わる機会が比較的少ないので、広い視野を持ち市場調査をすることが難しい。それ故、社交場というよりは習い事の延長的な雰囲気をもつミロンガもある。

ちなみに・・・以前、『「趣味:タンゴ」を解説 その1』にちらと書いたが、タンゴは基本的にソーシャルなダンス、互いに踊って楽しむ社交活動なので、「習い事」とはちょっと違う。バレエよりは盆踊りに近いのだ(注:筆者の主観)。

方や、タンゴを主収入源としないタンゴ愛好家は、ミロンガ主催のために日々情報収集し顧客ニーズを探索する、いわゆる"プロ主催者"といえる。実は現在の日本では前述のスタジオオーナー主催パターンが多いのだが、世界の他の都市で人気のミロンガやタンゴイベントの多くは"プロ主催者"であるタンゴ愛好家により開催されている。


ミロンガはいつ行われているのか

前述の通り、東京ほどの大都市ならば、毎晩どこかでミロンガが行われている。ブエノスアイレス、ヨーロッパ諸都市、ソウル、香港などではミロンガは真夜中から盛り上がり明け方4〜6時に閉会となることも多いのだが、東京はタクシー代が高いせいか、グッと早い時間帯に行われる。大体20時頃に始まり24時前後には終了する。

都内の典型的なサラリーマンならば、仕事が終わってから軽く食事をして21時くらいに入場、踊り終わって終電で帰宅、という流れだ。週末ならばその後仲間内で居酒屋へ行き朝帰り、ということもしばしば。知人のベテランタンゲーラ(タンゴを愛する女性)によると10年ほど前には東京でもオールナイトのミロンガがあったとか。2000年から2010年くらいの期間で東京のタンゴシーンは結構盛り上がっていたらしい。

とにかく、タンゴだからといって何ら特別なことはない、クラブやカラオケに行くようなものだ。


ミロンガへ行く服装

ミロンガとはいわゆる「ちょっとしたパーティ」ってやつだ。実際にはミロンガの主催者や会場によってドレスコードが異なる。ちなみに本場ブエノスアイレスではそれが顕著で、このミロンガではばっちり正装、男性は三揃で女性はイブニングドレス、あっちのミロンガなら男性は襟付きシャツさえ着て入ればネクタイ不要、女性はパンツルックでもOK、といった具合。日本ならば男性はジーンズ以外の長ズボンに襟付きシャツを着ていれば追い出されることはない。女性はスカートにブラウスか、ワンピースを着るのが無難。

タンゴ男子の特徴は、ぶっといズボン。3タック、4タックは当たり前。現代の流行とは違うのかもしれないが、これが界隈の美学なのだ。太いズボンは動きやすいし、重心が低く見えるので踊りが上手く見える。

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タンゴ女子の服装は流行り廃れがあるけれど、一般的にはボディコン・背中出しが好まれる。タンゴは男女が抱き合って踊るので、背面のデザインが重要らしい。

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ちなみにこの写真のモデルは筆者だがご縁がありタカオノデラさんという素晴らしい写真家さんに撮影していただいた。企画は全て友人のHazukiさん、エネルギーに満ちた美しい人。

タカさんのウェブサイト↓↓
https://takaphotostudio.wixsite.com/1111

Hazukiさんのnoteはこちら↓↓
https://note.com/shiny_cat

ミロンガの話をするつもりが、会場に辿り着くまでの前段で結構字数を食ってしまった。もう準備は万端。次回、ミロンガ会場に到着してからの流れを解説するので乞うご期待。

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