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「趣味:タンゴ」を解説 その2

書き手:haruna

隣は何をする人ぞ。タンゴにちょっと興味がある人、友人や家族がタンゴを踊っているという人向けに、「趣味:タンゴ」とは一体どんな状態なのか、私の視点で解説します。「その1」ではミロンガ(タンゴのダンスパーティ)とグループレッスンについて紹介しました。まだまだ深~くハマる沼が広がっている?!

タンゴ愛好家の日常(応用編)

タンゴ愛好家の日常として、前回以下の6つを上げ、①と②について解説しました。今回は③から、続きを解説いたします。

①ミロンガ(ダンスパーティ)

②グループレッスン

③プライベートレッスン

④コンペ(コンペティション、競技会)

⑤発表会

⑥海外イベント(フェスティバル、マラソン)


プライベートレッスン

その名の通り、個人レッスンです。タンゴのグループレッスンは教室にもよりますが、大体5~20名程度で開講されています。プライベートは生徒一人またはペアで受講するレッスンです。先生は一人の場合とペアの場合があります。

グループレッスンで基礎を学んだ後、もっと深く理解したい、上達したいという狙いで受講するケースや、グループレッスンの日程が合わない人が受講する場合もあります。さらに、タンゴは他のペアダンス同様に常に男性不足と言われています。グループレッスンも女性が多くなかなか男性と組む機会が少ない場合があるので、プライベートレッスンを受講してより長い時間男の先生と踊ってもらうという場合もあります。

プライベートレッスン料の相場は東京だと大体10,000-15,000円/50分程度。イベントなどで特別来日する有名ダンサーはもっと高い場合があります。私は以前東京でピアノや声楽のレッスンを取っていましたが、東京藝大出身の先生の自宅での指導で大体1時間あたり6,000-10,000円程度でした。タンゴの場合は広いスタジオが必要且つペアでの指導となり、ピアノや歌に比べるとコストがかかると言えそうです。

以下が、私の思うプライベートレッスン受講のメリットです

・日時を選択できる

・自分の身体や動きの癖を相談し指摘してもらえる

・一人で受講する場合は男性/女性の先生とたくさん踊れる

・ペア受講の場合はコンペ準備として踊りのレビューをしてもらえる。

・好きな曲の振付をもらえる

コンペ?振付?「タンゴを始める多くの人の目標はミロンガで踊ること」(※その1参照)じゃなかった?

その通り、ミロンガはタンゴ愛好家の永遠の夢、光り輝くダンスフロアです。でも実はその他にもタンゴには色んな「お楽しみ」があります。

世界一お気楽な世界大会?

以前、コンペの概説を記事にしましたが、アルゼンチンタンゴの世界大会はペアなら誰でも出場可能です。地区予選であるアジア大会(毎年東京で開催)も、3年以上アジア圏内在住などの制限はあるものの、プロアマの境目もなく「誰でも」出場可能です。というかアルゼンチンタンゴ自体、「プロ」の定義が非常に曖昧です。バレエのようにカンパニーに所属していればプロと呼べるかもしれませんが、カンパニーの数が世界を見ても非常に少なく、それ以上にフリーランスのダンサーが多い印象です。スポーツでもないので、社交ダンス(競技ダンスとも呼ばれ、オリンピック競技化を目指すなどかなりスポーツ寄りのペアダンス)のような階級制度もありません。


何が言いたいかというと、誰でも世界チャンピオンになるチャンスがあるということです。現実的にはもちろんそう簡単には勝てませんが、数日後に世界チャンピオンになる人と同じ舞台で初心者が踊れるだけでも面白いと思います。世界大会に出場すれば、予選で落ちても順位がつくので目標を持ったり話の種にはなると思います。ちなみに私は2019年にはアジア大会で決勝進出し、2017年と2019年には世界大会に出場し400位台と200位台だったと記憶しています。・・・タンゴを知らない人にはこれがどれほどすごいか(すごくないか)、分からないないと思います。だって、何かの世界大会に出場したことありますか?私はタンゴに出会うまで世界大会と名のつくものには縁がありませんでした。

世界大会以外にも小さな大会が各地で多く開かれているので、大人になってからタンゴを趣味で始めた人がトロフィーをもらうチャンスが結構あるのも、タンゴの楽しい一面です。

私もトロフィーをもらった経験がありますが、それよりも嬉しかったのは、世界大会に出演した後に服を着替えて客席に入ったら、全く知らないアルゼンチン人数名から「良かったよ」「あなたの踊り気に入った」などと声をかけてもらったことです。予選通過に擦りもしないレベルでしたが、踊りを見てもらえたこと、知らない人の目に留まったことが嬉しく、次はもっと驚かせたい、楽しませたいと思えました。以前も書きましたが、コンペはタンゴ上達過程の短期的な目標のひとつですね。

発表会という日本の文化

日本のタンゴ界には、「発表会」という独自文化があります。今は日本だけではなく他のアジア圏にも広がっているようですが、おそらく日本が一番盛んと言われています。

発表会ではミロンガで踊るようなサロンタンゴではなく、振付を決めたステージタンゴを披露することが殆どです。多くの場合、ベテランプロの男性が女性の生徒さんを指導して振付をこなすというもの(少数だが男女逆パターン、女の先生と生徒の男性という場合もある)。タンゴスタジオや広めのパーティ会場を貸し切って開催され、生徒さんの友人らが見に行って盛り上がり、発表会後にミロンガが企画されることも多いです。出演者の年齢層は20代から70代と幅広く、相手を務める先生は20代から50代程度だそうです。女性を持ち上げたり飛ばしたり、男性側の技術が求められるので、マッチョなダンサーが多い印象です。女性の生徒さんも、バレエや体操の経験があったり、ヨガやピラティスで身体を鍛えていたり、なかなか「只者ではない」オーラを放っている方が多い印象です。私の母親と同い年の方が宙を舞っています。

発表会もコンペと同じく、タンゴを続ける上での目標やベンチマークの一つなのだと思います。ただしコンペではサロンとステージの両部門があるものの、発表会はステージがメインとなるので、ミロンガ での踊りとは別物です。輝く衣装に身を包みスポットライトを浴びる非日常体験ですね。

タンゴ/生活 比

今回は、「趣味:タンゴ」の第二段階としてプライベートレッスン、コンペ、発表会を説明しました。これらに踏み入れると、タンゴにかける時間もお金もかなり膨らんできます。むしろ、タンゴで予定が埋まってから空いた時間で仕事や家事をこなすような状態かと思います。タンゴを生業としていない場合、どうしても生活のための仕事が必要だったり「タンゴ外」の時間で圧迫されてしまうので、少しでもタンゴに触れる時間を長くするために移動中は常にタンゴ音楽を聴いている、という人も少なくありません。私の知人のタンゴ愛好家にも、ドライブのプレイリストが全てタンゴ音楽だという人、結構沢山います。事故を起こしませんように。

というわけで、「趣味:タンゴ」は余暇の過ごし方ではないのかもしれません。生活の中心にタンゴがあり、残りの部分でいわゆる「日常」をこなす?とある友人は「ミロンガが続くと、つい会社にも同じ雰囲気で行っちゃって化粧が濃いって言われちゃった、気をつけないと。」と話していました。タンゴが主で、会社では別の自分を演じているわけです。

次回はタンゴを求めて国境を越える、世界行脚の話を書きます。


つづく


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