TANABATA2057の先進性

1996年、ある1本のプラネタリウム番組が制作された。

「TANABATA2057」

http://ja.wikipedia.org/wiki/TANABATA2057

当時人気の河相我聞、菅野美穂を主演に起用した話題作。

……実は俺はこの作品を見てはいない。

近年の音響等を駆使した、エンターテイメント性も高いプラネタリウム作品の先駆け……ではあったのだが、当時その方向性は否定され、上映館も少なかったからだ。(※1)

それでも、俺はこの作品こそ、時代を変える作品だと信じていた。

エンターテイメントとエデュケーションの融合、それを支えるデジタル技術。

その時代の革命は、Macintosh陣営をはじめとするパソコン業界から、確かに発信されつつあった。

この流れは、当時使われていた「エデュテイメント」という言葉こそ聞かなくなったものの、PCを使ったUIに優れた学習ソフトの開発やら、ゲーム機における「脳トレ」ブームなど、確かに時代の流れとして定着しつつあり、プラネタリウム……天文教育業界にとっても、その時流に乗った実験的な1本、が制作されたのだった。

この作品の広告を見て、新たな時代を確信した俺は、そのような新たな時流に関わって行きたい、と願った。

その願いは叶わないだろう、と知らされたのはその2年後。

地元に新たに出来た科学館の学芸員と話す機会を得たことだった。

「TANABATA2057」の理念は、当時のプラネタリウム業界で全否定されてしまったことを、作品に関わっていたという学芸員と話して知ってしまったのだ。(※2)

作品の営業担当としての苦戦やら、新たな考えを元に作られた作品が、その考え、まるごと受け入れられなかったことを、話の中で教えられた。

それでも、海外の神話と、お仕着せの「星座の話」だけで構成された、現実離れした星の話だけ、という天文教育をなんとかしていかねばならない、と強く思ったものである。

実際、その後、プラネタリウム業界も、エンタメ系の作品が少しずつ見られるようになってきている。
その第一歩を盛大に踏み外した作品、TANABATA2057を、忘れてはならない。

あれから20年。時代は変わった。
当時、この作品を受け入れられなかった案内人は、その後もプラネタリウム解説者であり続けている人が多いはずだし、彼らがしっかり考えを改めたかどうかが最大の疑問である。


(※1)ちなみに、音響効果などの導入や、デジタル化について、あれから15年たった2011年の段階ですら、この業界の某制作会社は、新人に「導入のための勉強」をさせている段階だったので唖然とした。後輩と口論(mixi上で=ログは削除済み)した中で、その制作会社の新人本人こと、その後輩が言ってたことだから間違いない。

(※2)その後、この人から、天文担当として某所の採用試験を受けに来いとオファーを貰ったりした。ちょうど現在の勤務先との契約を更新したばかりだったため断ったが。感謝している。 

※いつもの投げ銭だよ。
この下に内容はないよう!!

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