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最強のヒットユニット/ポルカ・あやめ・ミオ・るしあ・かなた

 いや、とんでもなく面白い配信を見た。すごかった。2020年12月12日にホロライブ公式から配信された、「最強のヒットユニットを作ろう!」のことです。

 これ、すごいから。見てない人は即刻見たほうが良いです。

最強のヒットユニットを作ろう!【ホロライブ公式】
https://www.youtube.com/watch?v=dpEM6MyUjx8

 参加メンバーは左から順に、尾丸ポルカ、百鬼あやめ、大神ミオ、潤羽るしあ、天音かなた(敬称略・以下同)。配信冒頭で自分たちから「なんだこの不思議なメンバー?」「それみんな思ってるから」なんて自己言及していたんだけど、とんでもなかった。

 見終わってみると、「これでしかありえない」という人選だったことがわかる。この人選をした運営内の人はきっと仕事ができる人だ。

■大神ミオを真ん中に置くという「発見」
 大神ミオは番組の仕切りに定評のある人だ。ホロライブの司会担当といえば、まっさきに名前が思い浮かぶ人だろう。この人を、司会ではなくプレイヤーに起用して、5人チームのまんなかに置いた。

 すると番組全体の雰囲気が、ふわっとやわらかいものになった。ミオしゃ特有のやさしい感じが、全体をつつみこむ感じになった。この企画全体のトーンをきめたのはミオしゃだと思います。
 これは、「プレイヤーになってお題にとまどう」ポジションだから出た効果だと思う。ミオしゃは司会をすると小学校の先生になってしまい、「はいはい次行きますよー」というサクサクしたところが前面にでるので、「ふわっとしたやさしい人」という美点がうまく出ない(のだということが本件でよくわかった)。

 ミオしゃの「ふわっと感」を打ち消すようなインファイター型のプレイヤーが面子にいなかったこともよかった。

 ミオしゃは、笑いのツボを的確に刺しに来るような攻撃的な面白さは持っていないのだが、じつは「ホロライブ全体のなんかいい感じ」の大部分はこの人から発信されていて、なくてはならない人だと思う。

■百鬼あやめと大神ミオという鉄板コンビ
 なぜ大神ミオをプレイヤーとして起用したのか、その理由はハッキリしている。百鬼あやめの魅力をじゅうぶんに引き出すことができる相方役は実質ミオしゃだけだからだ。

 この日の翌日が百鬼あやめの誕生日。誕生日配信というビッグイベントをひかえているお嬢の起用は告知という意味でもマストだったはずだ。

 あやめお嬢は極端なキャラクターを持っていて、面白い人なのに、コラボでは魅力をうまく発信できていない部分があった。というのも彼女は極度の人見知りで、緊張しいだからだ。
 そんなお嬢が百パーセント気を許している相手がミオしゃである。ミオしゃとコンビでゲームをさせればお嬢はリラックスして面白い部分を次々見せてくれる。
 ……と、たぶん人選した人は考えたはずで、そしてこの人選は完全に正解だった。理解力がおいつかなくてイッパイイッパイになってたり、ボーっとしてたりして、基本話をきいていないお嬢を、おいおいと軽くつっこみながら世話するミオしゃという構図が、それ自体かわいらしくて心が浄化される。

 リラックスしているお嬢のすばらしい美点をひとつあげておきたい。この人は「面白いこと」を見つけるのが好きで、「これすごく面白い!」とハッキリ口に出して言うのです(俳句王の審査員のときなんかを思い出してみて下さい)。
 これ実は、あまり人がやらないところだ。「面白いことがあったら笑う」はだれでもするが、「これ、おもしろーい」と口に出す人は案外少ない。
 百鬼あやめは、「私のハートは、いま揺さぶられました」と口に出して言う(言挙げする)人なんです。私は彼女のそういうところがすごく好きだ。

■ダーリン役が隣にいると光るるしあ
「適切なパートナーがいると、がぜん魅力を放つ」という特性をもっているもう一人が潤羽るしあパイセンだ。

 この人は、「隣にエスコートしてくれるダーリンがいる」という状態を用意すると、とたんに面白くなる。もう簡単にいってしまうと、「船長とコンビを組ませたとき能力が百パーになる」くらいの感じ。

 この「ダーリン力」において、船長とほぼ同等か、それ以上の能力を持っているのが天音かなただ(ということに今回私は気づいた)。るしあとかなたんのコンビ、すごく良い。今回、潤羽るしあは面白いことをバンバンいっていたが、それを支えていたのは、背中に当てている天音かなたんの手だと思う。

 というか、船長とのコンビより良いと思った。船長は基本、ゲームに勝とうとしてしまうので、るしあに対して「こうしなさい」と言ってしまう。
 しかしかなたんは基本、るしあに対して「どうしたいの?」ときいたり、察しようとする。そのことで、「あなたの考えでだいじょうぶだよ、それでいいんだよ」という承認を、るしあに対して与える。するとるしあは自信をもってゲームをプレイできるので、彼女自身の魅力を前面に出すことができる。
 つまりは、船長よりかなたんのほうがるしあに対してよりダーリンなのである。なんかすごい。

 今回のるしあパイセンを見て、「この人本当にハートがきれいだな」と思ったシーンがある。あやめお嬢がルールをしくじってしまうのだが(そのしくじり方がいかにもお嬢らしくて魅力があるのだが)、敵方のお嬢のしくじりに対するるしあのフォローのしかたが素晴らしかった。まったく嫌みがなく、それを許す。言葉のつくりかたも相当いい。
 ここまでつくりあげてきた気持ちのいい時間を、ヒヤッとした感じで壊したくないという、はっきりした意思がみえる。
 心地のよい番組、という、壊れやすいシャボン玉を、彼女がゴールまでみごとに運んだ。美しい。

■これが才能か。尾丸ポルカの司会
 ふだんなら司会をやる大神ミオをプレイヤー側に置いたので、べつの司会が必要になった。尾丸ポルカが司会をつとめた。

 もう、見た人全員が驚いたんじゃないかと思うんだけれど、おまるんの司会力、とにかくすごかった。はっきりいって、地上波ゴールデンタイムのバラエティー番組に出ていてもおかしくない司会力。

 ときどきひかえめにはさみこむツッコミのワードセンスが適切すぎて、画面のこっちで「気持ちいい…」といいまくっていた(私が)。
 ひとつひとつの言葉をとりだすと、けっこう先輩たちに対して失礼なことをいっているんだけど、ぜんぜん失礼に聞こえない。きつめなツッコミをしているのに、ヒヤッとした感じが一切ない。番組全体の、ふわっとしたかわいらしいイメージが一切壊れない。

 言葉をはさみこむタイミングもこの上なく適切で、4人のプレイヤーの発言をさばききっていて、クロストークがほぼ、発生していなかった。誰かがしゃべりかけたのと同じタイミングで自分もしゃべりだしてしまい、お見合いが発生するということがおまるんに関してはほぼなかったのです。

 どこでどういう場数を踏んだら、こういう素晴らしいスキルが入手できるのかさっぱりわからない。ただただまぶしい。

■これが才能だ。天音かなたの出題
 かなたんの出題、神がかってたでしょう。神がかっていたよ、天使だけに。

 天音かなたんについては、何百枚でも書けるくらい語りたいことがある。この人はできることとできないことが相当はっきりしている。能力値をダイヤグラムにするとめちゃくちゃ尖っちゃう人だ。

 突発的な事態への対応がめちゃめちゃ苦手なので、大勢の人間がランダムにしゃべるような場があまりにも不得意だ。だから人狼系ゲームとか、多人数オフコラボをするとだまってしまう。

 そのかわり、「あらかじめ準備をしておいて、それを発表する」という企画がすごく得意で、そういうのに出演すると例外なく全部おもしろい。ユニーク俳句王の俳句なんか良かったですよねえ。かなたんの能力は、ライブの芸人というより放送作家タイプなのだと思う。

 天音かなたんは、自分のそういう特性を自分でわかっている。わかっているからパワーポイントを用意するのです。PPT(パワーポイント天使)というあだ名は、だから、彼女の特性を百パー言いあてている。

 今回の企画、「自分でテーマをきめて、ホロライブメンバーの中からアイドルユニットを人選し、それを発表する」という基本ルールがある。その基本ルールをガン無視するところから、かなたんの発想力はスタートする。

 たぶん、「完全にルールにのっとらないほうが、おもしろいものが書けそうだ」という直感があったはずだ。「ルールとちゃうやんけ」というツッコミを誘発するためのボケとしても機能するはずだ、という目算もちゃんとあっただろう。

 かなたんはこのゲームを、「ヒントをもとに、ホロライブメンバーの名前をあてる」というゲームとしてとらえなおした。このようにとらえなおしたルールにもとづけば、「ホロライブメンバーをいじって面白がる遊び」ができるぞ、と思いついたのだと思う。

 天音かなたんは、「ルールをどんなふうに逸脱したら魅力的か」という考え方をする能力があって、これはなかなか、ふつうの人は持ちにくいタイプの能力です。笑いの基本は、「受け手の予断を、どう裏切っていくか」です。彼女はそれをわかっていて、実践している。ルールに即して進行するはずだ、という視聴者の予断を、きれいに裏切る。もしかなたんが漫才師だったら絶対に「ネタを書く方」をやってたはずだ。

 彼女が用意した出題文(ヒントの文章)が、また、凄くうまいんですよねえ。私が見た範囲では、ホロライブメンバーの中で、いちばん文章が書けそうな人です。ちょっとした短文で、あんなにウケをとれるのは才能以外のなにものでもない。うらやましい。

■この5人こそが「最強のヒットユニット」だ
 ネタを振り、盛り上げ、ハプニングがあり、視聴者の予断を裏切り、最後に大笑いがあって、丸くおさまる。理想的なお笑いの展開になっていて、まるでプロがつくった地上波のテレビみたいだ。

 出演者全員の能力がすごいと思ったし(尊敬しなおした)、この番組をつくった人もすごかった。

 この番組は、「各人がホロライブメンバーを使って理想の最強ユニットをつくってみる」という企画だったのだが、だから番組名が「最強のヒットユニットを作ろう!」だったのだが。

 見終わったあとで、こう思ったのです。最強のヒットユニットとはこの5人だ。


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