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桐生ココ「指示待ちマイクラ」という発明


 これは頭のいい人が思いつく企画だなあ、と感じ入ったのが、桐生ココ会長の「指示待ちマイクラ」

■マイクラ大号令(という推定)

 と、その話をするまえに、どうも最近ホロライブって、運営から「みんなでマインクラフトをやりましょう」という大号令がでてるっぽい節がありますね。

 マインクラフトって、ひとつのオープンワールドをメンバーが共有するかたちだから、自動コラボ発生装置として機能しますものね。
 コラボするつもりじゃなかったけど、マイクラ配信をしていたら、たまたま同じ時間に別のホロライブメンバーもマイクラを遊んでいて、はからずもコラボ状態になった……みたいなのはよくみる光景だ。コラボをくりだして箱全体の魅力を増大させるのはvtuberグループの基本ムーブです。

 くわえて、マイクラなら、ホロライブインドネシア勢やホロライブEN勢との交流が自然なかたちで行える。マイクラのコミュニケーションは基本、チャットだから、言葉の壁のせいで無言が発生してしまう……みたいなインシデントがきわめて起きにくい(だまった状態でも不自然になりにくい)。
 海外ホロライブのリスナーが国内ホロライブに、国内ホロライブのリスナーが海外ホロライブに、相互流入するようなかたちが望ましい、とカバー社は考えているはずで、そのためのツールとしてマインクラフトを押していきましょう、みたいな方針になっているような気がする。そうだとしたら正しい方針だと思う。


■マイクラって何のゲームですか?

 さて、ココ会長のところにも、「絶対にイヤとかでなければ、よろしければマイクラをやってくださいね」という要望がカバーから降ってきた(としよう)。

(注:以下の文章は「私の頭の中の」ホロライブメンバーについて話しているもので、フィクションの一種だと思っていただけると助かります。現実の本人のことをこうにちがいないと決めつけるものではありません)

 ココ会長としても、他のホロライブメンバーと交流したい気持ちはある。マイクラをやっていると軽率にコラボが発生してたいへんナイスだというのは確かにそうだ。

 けれどココ会長こう思う。私、マイクラほとんどやったことない。そもそもどういうゲームだかよくわかってないよ。ホロライブメンバーの中には、マイクラの達人みたいな人がうようよいるのに、いっしょにたのしくプレイできるイメージがぜんぜんわかないよ!

 手探りでゲームをいじって、とりあえず家をたてたりしてみたけれど、どうも手応えがない。
 かなたんに一緒にやってもらったりしたけれど、なんかなんか、よくわからないまま終了時間がきてしまった。

     *

 あの、余談だけど、「それについてめちゃめちゃ詳しい」ことと、「それについて人に教えることができる」は、全然別のことなんですよね。べつに非難とかでは全然ないんだけど、天音かなたんや不知火ふーたんは、ずぶの初心者にイチからマイクラを教えるということが、いまいち上手ではないねぇーと筆者は思って配信をみていました。

 たぶん「詳しすぎる」「頭の中で情報の最適化がされすぎている」せいだと思う。
 詳しい人が、詳しさとひきかえに、初心者の頭の中がどうなってるか推測する能力を失うというのはとてもよくあることだ。

 かなたんが典型的なんだけど、

「いまあなたに必要なのはです。Aを手に入れるにはの条件が要ります。Bを入手するには地点に行って条件を達成する必要があり、Cを手入れるには地点をしなければなりません。まずあなたをに連れて行き、そのあとでに連れて行きます」

 みたいな情報の与え方をしてしまう。きいているほうは「お? お? お?」となる。(たぶんこれは、「得意なことと不得意なことがはっきりしている天音かなた」の苦手分野のほう)
 こういう情報の与え方は、「ゲームの全体像を把握している人」にはとても実際的で良いのです。かなたんやふーたんは当然全体像を知り尽くしているから、自然とそういう伝達をしてしまう。

 でも知識がゼロの相手に、この情報の与え方をすると、焦点がAだかBだかEだかFだかわからなくなり、マップで迷う以前に、ToDoリストの中で迷子になる。なぜなら、AとかEとかGとかの位置づけがまだ頭の中にない状態だからです。

 たぶん、桐生ココみたいな思考形態の人には、というかズブの素人には、点から放射状に教えてはダメで、大きな外枠からじゅんばんに概念から教えていった方がいいのです。グランドデザインから伝えはじめて、じゅんぐりに各論に入っていく。

「この世界はこういう概念でなりたっています」
「その中で、いまあなたはこういう状態にあります」
「あなたの現在の問題点はこうです」
「それを解決するのがAの獲得です」
「Aとはこういうものです(Aの概念の説明)」
「Aを獲得すると、こういうことができるようになります。世界が広がります」
「だからAをめざしましょう」

 たぶんココ会長の脳にスッと入っていくのはこういう言い方。ココ会長は「概念」とか「仕組み」を理解したい(そこから理解を深めていく・概念さえ把握すれば枝葉は勝手に類推できる)人だから、枝葉からの情報スタートだと混乱しがちなんですね。
(でも配信なので、尺の関係もあるからむずかしいことだよな)


■マイクラ配信には問題がある

 さて、「うーむ、よくわからん」の状態が継続しているココ会長。
 ホロライブメンバーのマイクラ配信を見たりするんだけど(たぶん)、このゲームの概念がわからない

 というか、配信者が今なにをやっているかが、配信画面を見ててもさっぱりわからないという体験をくりかえした結果、桐生ココ会長はこんな認識を持ったんじゃないかと思う。

「配信見ててもわからないって、それ自体、問題あるのではない?」

 自分が、ホロメンのマイクラ配信を見ていて、何をやってるのかわからないということは、同様に「何がなんだかわからない」と思ってるリスナーが大量にいるはずってことだ。

 ホロライブは、マイクラを通じて一体感を出していこうという方針なのに(推定です)、「そもそもこのマイクラってゲームは何なの?」を視聴者に説明していない。
 このままだと、「マイクラよくわかんないから見られない」という視聴者を、ホロライブは大量に取りこぼす。

 マイクラの配信をするときは、「いま配信者は何をやっているのか」を常に明確にしていないといけないですね、と桐生ココ会長は認識した気がする。
 マリオカートやフォールガイズは、「障害物を避けつつ、なるべく早くゴールしようとしているのだな」ということが絵づらからすでにして明白なので、いちいち説明の必要がない。
 ところがマイクラは、短期的目標が絵づらからはわからないゲームだ。

 だからマイクラ配信は、
「配信者がゲーム内で何らかの作業をしているのを見ながら雑談を聞く」
 という配信になってしまいがちで、そうなるとマイクラのポテンシャルも配信者のゲーム的ポテンシャルもうまく伝達できていないことになる。こいつは非常によろしくない。


■問題のまとめとその解決

 そういうわけで、ココ会長は、自分がマイクラをやるんだッということになったとき、以下のような問題意識を持ったんじゃないかと(私が勝手に)思う。

1:そもそも私が、「このゲームがなんなのか」が全然つかめねェ。
 →チュートリアルとかねぇのら?

2:私がつかめないってことは、同様につかめてないリスナーが大量にいるのでは?
 →リスナーとともにそれを知っていく配信を自分がやるべき。

3:マイクラは「今、何が目指されているか」が画面からわからないゲームだ。
 →当面の目標を常にリスナーに把握してもらう工夫が必要。

 ついでに、

4:マイクラは、リスナーが配信に介入できる範囲が限定的だ。
 →自分は客との一体感で売ってきたタレントだ。一体感をもちながら配信するために、リスナー参加型にできないか。


 そこまでポイントが整理された時点で、ココ会長の鋭敏な頭脳は、ぴーん、と解答をはじきだしたんじゃないかと思う。

「素人の自分が、序盤のチュートリアルをひとつずつ丁寧にこなしていくような配信をやればいい」

「しかし、マイクラにはいまいち具合のいいチュートリアルがないので、リスナーコメントから【今からやること】を公募すればいい」

「リスナーから公募したお題を、常に画面に表示しておけば、何をしてるかすぐわかる」

「私の【マイクラを知りたい】という願望と、リスナーの【指示厨したい】という願望を同時に満たせてWin-Winだ。一体感もでる」


「指示待ちマイクラ」という企画は、こんな経緯で発明されたんじゃないかと思う(ネーミングがまたいいんだよね)。

 開発されつくした既存のホロ鯖を利用せず、イチからニューゲームで始めたのは、「兎田建設のプラントに行って、鉄を大量に調達してもろて」みたいな指示が発生しないよう、できることを意図的に絞っているということだろう。これによって、再序盤に実行可能なことしか指示できない状態にしている。

「どの指示に従うかは、スクショを使ったルーレットで決める」
 という形にして、波乱含みにもしてある。「どうなっちゃうんだろう、どきどき」と思わせるようにして、興味をひっぱる。

 けれど、
「私のリスナーは、初心者のチュートリアルになるような指示をしてくれるはず」
 という信頼をココ会長はたぶんきちんと持っている。

 どうしてもムチャだというときは、スクショを黙って取り直すことも可能だが、べつにそんなことしなくとも会長は「これ、できません」と率直にいえばそれですむ。そういう率直さをよしとする雰囲気を、桐生会は持っている。

 この企画をやれば、「マイクラって、こんなゲームなんだよ」が、ホロライブリスナーにきちんと提示される。


■それでどうなったか

 圧倒的先行プレイヤーの知見や蓄積を排除して、ゼロから自分と自分のリスナーだけでスタートした会長マイクラ。

 会長とわたしたちで、イチから冒険して、発見していく生き生きとしたゲーム空間がそこにはありました。
 いま、マイクラつよつよ勢として君臨しているホロライブメンバーも、もとをただせばこういう環境におかれた時期があるわけだ。そこをジャンプしてしまわないことは、やっぱり重要なことだったのです。

 会長がほんっとにうれしそうに、「ああ! やっとわかりました!」「これ、意味がわかったよ!」「理解理解!」と言うのが、いやもう、ほんっとにうれしそうで、こちらの心も浄化された気分だ。

 この人は、わからなかったことがわかるのが、ほんとに好きなんだなって思います。ドアスイッチと感圧板のしくみを知ったときの反応、めっちゃかわいかったですよねぇ。
(上に掲示した動画、当該部分から再生されます)

 そして、会長を「ああ、わかりました!」へ的確に誘導していくリスナーコメントも立派だったのです。私はみていて、これは配信者とリスナーの関係の、理想的なかたちのひとつだなあと思ったのでした。


 そして、今まだマイクラよわよわ勢のホロライブメンバー何人もいると思うのだけど、このしじまちマイクラをそのままやったらいいんじゃないのかなあと思う。マイクラを楽しく見るための基礎が学べる入り口は、ホロライブにどれだけあってもいい。

(この稿、了)

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